ただ、好きなことをしたいだけ

ゆい

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おばちゃん異世界に来ました!

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謁見から10日経った。

王様御家族との晩餐にも慣れきた頃だった。この日は、晩餐が終わり、席を立ち、部屋に戻ろうとした時にロイさんに腕を捕まれ、執務室に連れ込まれた。

ロイさんの表情、雰囲気が、腕を掴む力が怖かった。無視続けたから、怒っているようだった。

執務室に入ると、腕を離し、向き合う。

「アオイ、悪かった。」

と謝罪される。

「明日朝には、俺は領地に戻る。その前に話をしたかった。」

ソファに座らせられて、隣にロイさんも座る。

「アオイの進捗状況を聞いたが、まだ10日足らずだが、家庭教師はみんな褒めていたよ。前の世界で習っていないダンスとかは、練習するしかないから、今後に期待だな。」

「……はい。」

「あと、謁見の時は本当に悪かった。理想を押し付けた訳でもない。ただ、城に到着してからのアオイは、子供のような振る舞いで、40過ぎの女性の振る舞いでなかったから、…その、なんて言っていいか、わからないが、」
「いえ、私も前の世界では見たことがないものばかりで、童心に帰ってしまっていました。ご迷惑かけてすみません。」

私も初めのうちは怒っていたが、私の子供っぽい言動を窘めたかったのだと気付いた。その後は、私も意地になっていたのもあり、キッカケがなく謝れないでいた。

「俺も言い過ぎて悪かったのは事実だから。」

お互い反省して、謝罪はしたので、これで仲直りだ。

「じゃあ、これで仲直りしたということでいいですか?」

「そうだな。」

私は右手を差し出す。ロイさんは不思議な顔をする。

「仲直りの握手です。」

ロイさんも右手を差し出し、握手を交わす。

「俺は領地に戻るが、城でしっかりこの国の事を学んで欲しい。入学式には会いに来るから。」

「はい、少しは成長したところを見せられるようにしたいです。」

握手していた手をぐいっと引っ張って、ロイさんの胸元に抱き寄せられた。

「寂しかったり、辛いことがあったら、知らせてくれ。アオイは、誰にも言えない性質タチなのだろう。1人泣きそうな時は、俺を頼ってくれ。」

「…はい。」

「俺が身元引受人となったが、家族にもなったって思って欲しい。」

「…ロイさんが、お父さんですか?」

「そこは、お義兄様の方が嬉しいかな。」

「ふふっ。わかりました。ロイ義兄様。」

「~~~っ、1番下だったから、なんかその呼び方は照れ臭いな。」

「恥ずかしいなら、私をお姉ちゃんって呼びますか?」

「それは無理だろ。」

「では、頑張って慣れてください。」

「わかった。」

ロイさんが『家族』と言ってくれた。ちょっとこそばゆい気持ちになったが嬉しかった。私の居場所を作ってくれて、家族になってくれてありがとうの気持ちを込めて、私も抱きついた。







翌朝、早くにロイ義兄様とダンさんが領地に戻って行った。きちんと見送りをした。『ロイ義兄様』と呼び方が変わったのに、ダンさんとマリアさんはちょっと驚いていた。

次に会えるのは、入学式だ。しっかり勉強しますか!!






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