菫青石が輝くとき

ゆい

文字の大きさ
上 下
11 / 12

11

しおりを挟む
ーーーアレクセイsideーーー

「どっちが子供産むの?」

結婚式から1ヶ月が経ち、仕事に復帰してから2週間が過ぎた頃、昼休憩の時にグウェンに聞かれた。

「多分、俺?」

「ぷはっ、多分て何?しかも疑問系だし!」

グウェンは笑いだした。
嫁だから俺が産むことになるんだろうけど、初夜以降俺はアシェルを抱き続けている。
俺を抱きたいとは言われていない。
あれ?俺は言わせないようにしていたのかも、と考えてしまう。

「今度の昇進試験受けるんだろ?昇進したら、2年くらいは長期休みは難しいって聞いたから、聞いてみたんだけど。」

「まだ、結婚したばかりだから、そこまで考えてなかった。ありがとう、グウェン。アーシェと相談してみる。」

「…まだ受かってもいないぞ。」

「そうだけど、受かる前提の話をしないと先に進まないだろ?」

「まぁ、そうだな。」

「けど、アーシェは20歳にもなっていないから、まだ先かな。」

「でも貴族は子供を産むのは早いだろ?」

「最近はそうでもないよ。前は流行病で子供が亡くなる率が高かったけど、今は衛生環境が良くなったから、流行病も年1回にあるかないかって母さんが言っていたし。だから、多産でなくてもよくなってきたって。」

「へぇ。たしかに最近は流行病の話は聞かなくなったな。うちらの親世代は兄弟5、6人は当たり前だったしな。」

「俺もアーシェも一人っ子の方が珍しいからな。」

「おやつの取り合いは経験なしか?」

「…父さんとなら。」

「ぷはっ。副団長が?」

「母さんの作ったの美味しいから、大体取り合いになった。」

「へぇ。アレクセイの家は相変わらず貴族らしくないな。…まぁ、貴族らしいがよくわからないけど。」

「俺も貴族らしいはよくわからないけど、結婚前にマナーの講習は受けたよ。アーシェも義父上も高位貴族として身を守る方法だからって。」

「……大事にされているな。」

「ん、そうだな。」

本当に2人に大事にされていると思うと、結婚前から実感していた。
グウェンから言われて、更に実感できた。






仕事から家に戻れば、アシェルは玄関で出迎えてくれる。

「セイ君おかえり。」

「ただいまアーシェ。」

と、お互いの頬にキスをする。

「アーシェ、後でちょっと話したい事があるんだ。」

「?いいよ。夕食後でもいい?」

「もちろん。」

と、義父上と3人で夕食をとった後に部屋に戻り、今回の昇進試験の話をした。

「もし、セイ君が昇進試験受かれば、最低2年は子供産めないってこと?」

「うん。そうなってしまうかな?下手したら、王都ではなく、他領に行く場合もあるし。」

「副団長は何か言っていた?」

「父さんには昇進試験受けることは話したけど、そのあとは何も言っていないよ。」

「…僕は、セイ君の子供は欲しいけど、産むのは僕でもセイ君でもどちらでもいいと思うよ?」

「…いいの…か?」

「んー、でも僕が産んだ方が多分いいと思うんだよね。」

「??」

「最近の魔術学会で、子供を何人も産むのは魔力の莫大な消費により、寿命を縮めることがわかってきているっていうのが話題になっているんだよ。父親側と母親側の平均寿命の違いの統計が出されて調査してみると、妊娠中は子供を育てる部屋を維持するために半年間は魔力を放出しっぱなしなんだそうだよ。初期は微量でも子供が大きくなるにつれて、魔力の消費量も多くなってくるって。妊娠後期にベッドから起きあがれない人達もいるって聞いたことはあったけど、あれは魔力が足りなかったことが理由らしいんだよね。だからセイ君に比べたら、僕の方が魔力量が多いから、安全安心を考えたら必然的に僕が産んだ方がいいのかな?って、考えていたんだよね。」

「アーシェ。」

「もちろん、2人目か3人目はセイ君に産んでもらいたい。その時のセイ君の仕事の状況によるけど。当主交代はあと10年先くらいだけど、子供は早い方がいいかなって。実際に交代してから子育てって結構大変みたいだし。」

「アーシェありがと。うん、昇進試験終わったら、子作りしようか?そうだな、跡取りは早めの方がいいよな。もし他領に行くことになっても、来年の春からだし。出産までは王都にいられると思う。それにいざとなったら、母さんに転移魔法を頼むよ。やっぱり、出産の時は俺もアーシェと一緒にいたいし。」

「最後はやっぱりアルサスさん頼みになるね。…僕たち一人っ子だったから、やっぱり兄弟欲しいね。」

「うちは両親ともにあまり兄弟仲良くなかったから、仲が良い兄弟になるといいな。」

「父上と叔父上は仲いいけど、母上の方の兄弟は会ったことないなぁ。」

「そっか、そのうち義父上が教えてくれるといいな。」

「…話していないことすら、忘れていると思うんだけど。あの父上のことだから。」

「……そうかも。」

義父上は、義母上に関して全くアーシェに話していなかったらしい。
アーシェもアーシェで聞くことはしなかったと言う。
義母上は、天国で多分怒っているか呆れているかしていると思うぞ。


俺の直近の目標は、昇進試験合格。
きちんと合格できたら、アーシェと子作りに励もう。
アーシェは、俺の為に色々な情報を集めて、未来を見据えてくれている。
だからアーシェの提案は、元々考えていたことだったと思う。
本当によくできた旦那様だ。
















ーーーーーーーーーー

更新が遅くなり申し訳ございません。
体調不良・仕事の繁忙・家庭の事情といろいろ重なり、執筆が遅々として進みませんでした。
ゆっくりと更新となりますので、お待ちいただけたらありがたいです。
温かいお言葉、いいねに励まされております。
お読みいただいた方に感謝を申し上げます。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕が再婚するまでの話

ゆい
BL
旦那様が僕を選んだ理由は、僕が彼の方の血縁であり、多少顔が似ているから。 それだけで選ばれたらしい。 彼の方とは旦那様の想い人。 今は隣国に嫁がれている。 婚姻したのは、僕が18歳、旦那様が29歳の時だった。 世界観は、【夜空と暁と】【陸離たる新緑のなかで】です。 アルサスとシオンが出てきます。 本編の内容は暗めです。 表紙画像のバラがフェネルのように凛として観えたので、載せます。     2024.10.20

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

30歳まで独身だったので男と結婚することになった

あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。 キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定

溺愛お義兄様を卒業しようと思ったら、、、

ShoTaro
BL
僕・テオドールは、6歳の時にロックス公爵家に引き取られた。 そこから始まった兄・レオナルドの溺愛。 元々貴族ではなく、ただの庶子であるテオドールは、15歳となり、成人まで残すところ一年。独り立ちする計画を立てていた。 兄からの卒業。 レオナルドはそんなことを許すはずもなく、、 全4話で1日1話更新します。 R-18も多少入りますが、最後の1話のみです。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

隣国王子に快楽堕ちさせれた悪役令息はこの俺です

栄円ろく
BL
日本人として生を受けたが、とある事故で某乙女ゲームの悪役令息に転生した俺は、全く身に覚えのない罪で、この国の王子であるルイズ様に学園追放を言い渡された。 原作通りなら俺はこの後辺境の地で幽閉されるのだが、なぜかそこに親交留学していた隣国の王子、リアが現れて!? イケメン王子から与えられる溺愛と快楽に今日も俺は抗えない。 ※後編がエロです

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

αなのに、αの親友とできてしまった話。

おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。 嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。 魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。 だけれど、春はαだった。 オメガバースです。苦手な人は注意。 α×α 誤字脱字多いかと思われますが、すみません。

処理中です...