(完結)「泥棒猫の寄生虫!」と罵倒されましたが、それはあなたの思い違いです。

青空一夏

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(ミスティ・カドバリー公爵令嬢視点)

  庭園には夜風が心地良く吹いていた。アルコールで火照った身体にはとても心地良い。
リシャール王子殿下の手が私の身体に触れる度に、甘い感覚が全身を駆け巡る。

「もっと庭園の奥に行こう。誰もこないような場所に・・・・・・」
 男性の声がこれほどセクシーに聞こえたことはない。ぞくぞくと身体が震え、リシャール王子殿下に身を任せて庭園の奥で・・・・・・

 甘い口づけを交わし、後は押し倒されて夢中で身体を絡み合わせた。淫らな声をあげたくないのに、抑えることができない。

「きゃぁーー!! なんてふしだらなぁーー!!」
 その声にびっくりして私は起き上がろうとするけれど、リシャール王子殿下は離れようとしない。薄暗いなかで、誰かがランプを持ってきて私達を照らし出し、またさらに叫び声を上げる貴族達。

「リシャール王子殿下よ! 女性はミスティ・カドバリー公爵令嬢だわ。なんてこと!」
「こんな破廉恥な方々は初めて見たわね」

リシャール王子殿下は離れないし、私は逃れられずそのまま公衆の面前で嬌声を上げていた。

(こんなことはいけないとわかっているけれど・・・・・・貴族達の蔑んだ眼差しにも刺激を感じる。もっと、見てぇーー)





 私はダミアンから婚約破棄され、カドバリー公爵家から除籍された。平民に落とされて憤りしかない。

「お父様、これはなにかの間違いです。誰かが媚薬をいれて私を嵌めたのです」

「媚薬を入れたのはお前自身だろう? クリストファー第3王子殿下は、お前が液体をワインに入れたところを見たとおっしゃっている。その怪しい液体はお前の部屋から発見され、検査の結果強い効き目の媚薬だとわかった」

「そ、それは・・・・・・実はシャルレーヌ様だけに飲ませるつもりだったのです。あの女はダミアン様を誘惑する娼婦のような女なので」

「カドバリー公爵家からの除籍は王家の決定だ。わたしに逆らうことはできん。国王陛下は、ミスティがリシャール王子殿下に媚薬を飲ませたことをお怒りなのだ」

(私はリシャール王子殿下に飲ませたかったわけではない。あれは事故よ)

「だったら、私が国王陛下にお会いして直接申し開きいたします。後生です。国王陛下にお会いする機会をください」
 私は必死にお父様に頼んだ。

(私はヒロインなんだから、ここで軌道修正機能がでてくるはずだわ)





「さて、ミスティ。余に会って申し開きをしたいとは、どのような内容だ?」

「はい。私は決してリシャール第2王子殿下に媚薬を飲ませたかったのではないのです。本当に飲ませたい方は他にいました」

「ほぉ、誰に飲ませようとしたのだ?」

「シャルレーヌ様ですわ。私の婚約者を誘惑する不届きな娼婦のような女です。だから、その本性を皆様に知っていただこうと思いました。あのような女を野放しにしては王子殿下達だっていずれ誘惑されます! げんにオーギュスト王太子殿下はあの女に見惚れていたようでした」

「言いたいことはそれだけか? シャルレーヌ様になら、どの息子でもぜひ誘惑していただきたいものだ。最も、あの方がそのような女性ではないことはわかっておる。我が息子よりあの方を罠に嵌めようとしたことの罪は重い。お前は娼館送りにする。一生、そこで暮らすがいい」

「なっ、なっ、なぜですか? シャルレーヌなんかエズルバーグ侯爵家の居候ですよね?」

「あの方はマッカルモント帝国の皇女殿下だ。シャルレーヌ様の父上は病で亡くなった前皇配だ。前皇配が亡くなる前から次期皇配の座をめぐり有力貴族達が争いを起こし、生まれたばかりのシャルレーヌ様の暗殺をも企てようとする者が出てきたのだ。故に、シャルレーヌ様はリーナビア王国でお預かりすることになった」

「嘘よ! そんな登場人物がいるはずないわよ。私がヒロインなのだからぁーー。おかしいわよ。この世界は間違っている。ねぇ、国王陛下ならわかるでしょう? ここは変だわ」

「この世界が変というよりそなたが変だな。そなたにうってつけの場所が思い浮かんだから余に感謝せよ」






 そうして私は今、娼館で働いている。いつ出られるのか聞いても誰も答えてくれない。

「出してよ! ここは私のいる場所じゃないわ」
 
 私はヒロインなのよ。きっとリセットボタンがどこかにあるはず。今日も私は娼館の壁をペタペタと触りながらボタンを探す。

(誰か、助けて!! リセットボタンはどこなの? どこなのよぉおおーー)

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