10 / 15
8
しおりを挟む
(ミスティ・カドバリー公爵令嬢視点)
庭園には夜風が心地良く吹いていた。アルコールで火照った身体にはとても心地良い。
リシャール王子殿下の手が私の身体に触れる度に、甘い感覚が全身を駆け巡る。
「もっと庭園の奥に行こう。誰もこないような場所に・・・・・・」
男性の声がこれほどセクシーに聞こえたことはない。ぞくぞくと身体が震え、リシャール王子殿下に身を任せて庭園の奥で・・・・・・
甘い口づけを交わし、後は押し倒されて夢中で身体を絡み合わせた。淫らな声をあげたくないのに、抑えることができない。
「きゃぁーー!! なんてふしだらなぁーー!!」
その声にびっくりして私は起き上がろうとするけれど、リシャール王子殿下は離れようとしない。薄暗いなかで、誰かがランプを持ってきて私達を照らし出し、またさらに叫び声を上げる貴族達。
「リシャール王子殿下よ! 女性はミスティ・カドバリー公爵令嬢だわ。なんてこと!」
「こんな破廉恥な方々は初めて見たわね」
リシャール王子殿下は離れないし、私は逃れられずそのまま公衆の面前で嬌声を上げていた。
(こんなことはいけないとわかっているけれど・・・・・・貴族達の蔑んだ眼差しにも刺激を感じる。もっと、見てぇーー)
私はダミアンから婚約破棄され、カドバリー公爵家から除籍された。平民に落とされて憤りしかない。
「お父様、これはなにかの間違いです。誰かが媚薬をいれて私を嵌めたのです」
「媚薬を入れたのはお前自身だろう? クリストファー第3王子殿下は、お前が液体をワインに入れたところを見たとおっしゃっている。その怪しい液体はお前の部屋から発見され、検査の結果強い効き目の媚薬だとわかった」
「そ、それは・・・・・・実はシャルレーヌ様だけに飲ませるつもりだったのです。あの女はダミアン様を誘惑する娼婦のような女なので」
「カドバリー公爵家からの除籍は王家の決定だ。わたしに逆らうことはできん。国王陛下は、ミスティがリシャール王子殿下に媚薬を飲ませたことをお怒りなのだ」
(私はリシャール王子殿下に飲ませたかったわけではない。あれは事故よ)
「だったら、私が国王陛下にお会いして直接申し開きいたします。後生です。国王陛下にお会いする機会をください」
私は必死にお父様に頼んだ。
(私はヒロインなんだから、ここで軌道修正機能がでてくるはずだわ)
「さて、ミスティ。余に会って申し開きをしたいとは、どのような内容だ?」
「はい。私は決してリシャール第2王子殿下に媚薬を飲ませたかったのではないのです。本当に飲ませたい方は他にいました」
「ほぉ、誰に飲ませようとしたのだ?」
「シャルレーヌ様ですわ。私の婚約者を誘惑する不届きな娼婦のような女です。だから、その本性を皆様に知っていただこうと思いました。あのような女を野放しにしては王子殿下達だっていずれ誘惑されます! げんにオーギュスト王太子殿下はあの女に見惚れていたようでした」
「言いたいことはそれだけか? シャルレーヌ様になら、どの息子でもぜひ誘惑していただきたいものだ。最も、あの方がそのような女性ではないことはわかっておる。我が息子よりあの方を罠に嵌めようとしたことの罪は重い。お前は娼館送りにする。一生、そこで暮らすがいい」
「なっ、なっ、なぜですか? シャルレーヌなんかエズルバーグ侯爵家の居候ですよね?」
「あの方はマッカルモント帝国の皇女殿下だ。シャルレーヌ様の父上は病で亡くなった前皇配だ。前皇配が亡くなる前から次期皇配の座をめぐり有力貴族達が争いを起こし、生まれたばかりのシャルレーヌ様の暗殺をも企てようとする者が出てきたのだ。故に、シャルレーヌ様はリーナビア王国でお預かりすることになった」
「嘘よ! そんな登場人物がいるはずないわよ。私がヒロインなのだからぁーー。おかしいわよ。この世界は間違っている。ねぇ、国王陛下ならわかるでしょう? ここは変だわ」
「この世界が変というよりそなたが変だな。そなたにうってつけの場所が思い浮かんだから余に感謝せよ」
そうして私は今、娼館で働いている。いつ出られるのか聞いても誰も答えてくれない。
「出してよ! ここは私のいる場所じゃないわ」
私はヒロインなのよ。きっとリセットボタンがどこかにあるはず。今日も私は娼館の壁をペタペタと触りながらボタンを探す。
(誰か、助けて!! リセットボタンはどこなの? どこなのよぉおおーー)
庭園には夜風が心地良く吹いていた。アルコールで火照った身体にはとても心地良い。
リシャール王子殿下の手が私の身体に触れる度に、甘い感覚が全身を駆け巡る。
「もっと庭園の奥に行こう。誰もこないような場所に・・・・・・」
男性の声がこれほどセクシーに聞こえたことはない。ぞくぞくと身体が震え、リシャール王子殿下に身を任せて庭園の奥で・・・・・・
甘い口づけを交わし、後は押し倒されて夢中で身体を絡み合わせた。淫らな声をあげたくないのに、抑えることができない。
「きゃぁーー!! なんてふしだらなぁーー!!」
その声にびっくりして私は起き上がろうとするけれど、リシャール王子殿下は離れようとしない。薄暗いなかで、誰かがランプを持ってきて私達を照らし出し、またさらに叫び声を上げる貴族達。
「リシャール王子殿下よ! 女性はミスティ・カドバリー公爵令嬢だわ。なんてこと!」
「こんな破廉恥な方々は初めて見たわね」
リシャール王子殿下は離れないし、私は逃れられずそのまま公衆の面前で嬌声を上げていた。
(こんなことはいけないとわかっているけれど・・・・・・貴族達の蔑んだ眼差しにも刺激を感じる。もっと、見てぇーー)
私はダミアンから婚約破棄され、カドバリー公爵家から除籍された。平民に落とされて憤りしかない。
「お父様、これはなにかの間違いです。誰かが媚薬をいれて私を嵌めたのです」
「媚薬を入れたのはお前自身だろう? クリストファー第3王子殿下は、お前が液体をワインに入れたところを見たとおっしゃっている。その怪しい液体はお前の部屋から発見され、検査の結果強い効き目の媚薬だとわかった」
「そ、それは・・・・・・実はシャルレーヌ様だけに飲ませるつもりだったのです。あの女はダミアン様を誘惑する娼婦のような女なので」
「カドバリー公爵家からの除籍は王家の決定だ。わたしに逆らうことはできん。国王陛下は、ミスティがリシャール王子殿下に媚薬を飲ませたことをお怒りなのだ」
(私はリシャール王子殿下に飲ませたかったわけではない。あれは事故よ)
「だったら、私が国王陛下にお会いして直接申し開きいたします。後生です。国王陛下にお会いする機会をください」
私は必死にお父様に頼んだ。
(私はヒロインなんだから、ここで軌道修正機能がでてくるはずだわ)
「さて、ミスティ。余に会って申し開きをしたいとは、どのような内容だ?」
「はい。私は決してリシャール第2王子殿下に媚薬を飲ませたかったのではないのです。本当に飲ませたい方は他にいました」
「ほぉ、誰に飲ませようとしたのだ?」
「シャルレーヌ様ですわ。私の婚約者を誘惑する不届きな娼婦のような女です。だから、その本性を皆様に知っていただこうと思いました。あのような女を野放しにしては王子殿下達だっていずれ誘惑されます! げんにオーギュスト王太子殿下はあの女に見惚れていたようでした」
「言いたいことはそれだけか? シャルレーヌ様になら、どの息子でもぜひ誘惑していただきたいものだ。最も、あの方がそのような女性ではないことはわかっておる。我が息子よりあの方を罠に嵌めようとしたことの罪は重い。お前は娼館送りにする。一生、そこで暮らすがいい」
「なっ、なっ、なぜですか? シャルレーヌなんかエズルバーグ侯爵家の居候ですよね?」
「あの方はマッカルモント帝国の皇女殿下だ。シャルレーヌ様の父上は病で亡くなった前皇配だ。前皇配が亡くなる前から次期皇配の座をめぐり有力貴族達が争いを起こし、生まれたばかりのシャルレーヌ様の暗殺をも企てようとする者が出てきたのだ。故に、シャルレーヌ様はリーナビア王国でお預かりすることになった」
「嘘よ! そんな登場人物がいるはずないわよ。私がヒロインなのだからぁーー。おかしいわよ。この世界は間違っている。ねぇ、国王陛下ならわかるでしょう? ここは変だわ」
「この世界が変というよりそなたが変だな。そなたにうってつけの場所が思い浮かんだから余に感謝せよ」
そうして私は今、娼館で働いている。いつ出られるのか聞いても誰も答えてくれない。
「出してよ! ここは私のいる場所じゃないわ」
私はヒロインなのよ。きっとリセットボタンがどこかにあるはず。今日も私は娼館の壁をペタペタと触りながらボタンを探す。
(誰か、助けて!! リセットボタンはどこなの? どこなのよぉおおーー)
27
お気に入りに追加
3,121
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

かわいがっているネズミが王子様だと知ったとたんに可愛くなくなりました
ねむ太朗
恋愛
伯爵令嬢のアネモネは金色のネズミを見つけ、飼う事にした。
しかし、金色のネズミは第三王子のロイアン殿下だった。
「頼む! 俺にキスをしてくれ」
「えっ、無理です」
真実の愛のキスで人間に戻れるらしい……
そんなおとぎ話みたいな事ある訳ないわよね……?
作者おばかの為、設定ゆるめです。

王子の恋愛を応援したい気持ちはありましてよ?
もふっとしたクリームパン
恋愛
ふわっとしたなんちゃって中世っぽい世界観です。*この話に出てくる国名等は適当に雰囲気で付けてます。
『私の名はジオルド。国王の息子ではあるが次男である為、第二王子だ。どんなに努力しても所詮は兄の控えでしかなく、婚約者だって公爵令嬢だからか、可愛げのないことばかり言う。うんざりしていた所に、王立学校で偶然出会った亜麻色の美しい髪を持つ男爵令嬢。彼女の無邪気な笑顔と優しいその心に惹かれてしまうのは至極当然のことだろう。私は彼女と結婚したいと思うようになった。第二王位継承権を持つ王弟の妻となるのだから、妻の後ろ盾など関係ないだろう。…そんな考えがどこかで漏れてしまったのか、どうやら婚約者が彼女を見下し酷い扱いをしているようだ。もう我慢ならない、一刻も早く父上に婚約破棄を申し出ねば…。』(注意、小説の視点は、公爵令嬢です。別の視点の話もあります)
*本編8話+オマケ二話と登場人物紹介で完結、小ネタ話を追加しました。*アルファポリス様のみ公開。
*よくある婚約破棄に関する話で、ざまぁが中心です。*随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

彼女(ヒロイン)は、バッドエンドが確定している
基本二度寝
恋愛
おそらく彼女(ヒロイン)は記憶持ちだった。
王族が認め、発表した「稀有な能力を覚醒させた」と、『選ばれた平民』。
彼女は侯爵令嬢の婚約者の第二王子と距離が近くなり、噂を立てられるほどになっていた。
しかし、侯爵令嬢はそれに構う余裕はなかった。
侯爵令嬢は、第二王子から急遽開催される夜会に呼び出しを受けた。
とうとう婚約破棄を言い渡されるのだろう。
平民の彼女は第二王子の婚約者から彼を奪いたいのだ。
それが、運命だと信じている。
…穏便に済めば、大事にならないかもしれない。
会場へ向かう馬車の中で侯爵令嬢は息を吐いた。
侯爵令嬢もまた記憶持ちだった。

婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~
みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。
全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。
それをあざ笑う人々。
そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる