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(ダミアン視点)
ものごころがついた頃にはシャルレーヌが離れに住んでおり、血は繋がっていないが大事にするようにと父上から言われていた。
「シャルレーヌは可哀想な子だからね。優しくして守ってあげなさい」
と父上。
「はい。あの子の両親はどんな人ですか? なぜエズルバーグ侯爵家にいるのです?」
「あの子の両親は・・・・・・お前はまだ小さいし聞かない方がいいと思う。ここで話すような種類の人達ではない。シャルレーヌは大事にしないといけないよ」
本当の妹ではないけれど守ってあげるように、大事にしないといけない、・・・・・・この言葉の意味を幼い頃から考えてきた。
(シャルレーヌは私の将来の伴侶としてこの家に迎えられたのかも)
未来のわたしの花嫁かも、と思い大事に接してきた。シャルレーヌは天使のように綺麗だから、すぐにでも婚約して自分のものにしたいよ。
だが、正式に婚約者になったのは優秀だと評判のミスティ・カドバリー公爵令嬢だった。シャルレーヌが王立貴族学園に通えなかったことから、わたしにもある程度予想はついていた。
(シャルレーヌの身分がきっと低いんだ)
わたしは父上に問いかけた。
「なぜ、ミスティ・カドバリー公爵令嬢がわたしの婚約者なのですか? てっきりシャルレーヌが婚約者になると思っていました。エズルバーグ侯爵夫人に相応しい女性になる為に、シャルレーヌに家庭教師をたくさんつけたと思っていたのです」
「は? シャルレーヌとお前とでは到底釣り合わない。シャルレーヌをエズルバーグ侯爵家が嫁に迎えることは、天地がひっくり返ってもあり得んよ。お前にできることは、シャルレーヌを大事にし守ってあげることだけだ」
父上の言葉にわたしは確信した。
(やはり、シャルレーヌの身分はエズルバーグ侯爵夫人になるには問題があるのだ。わたしと釣り合わないなんて可哀想に)
しかし、父上は大事にし守ってあげるようにと言った。・・・・・・ということは、わかった! あのシャルレーヌはずっとこのエズルバーグ侯爵家にいて、わたしの保護下で暮らすのだろう。つまり・・・・・・ゆくゆくは愛人にしていいということに他ならない。
あぁ、そういうことなら納得できる。それに正妻になる予定のミスティ様も、シャルレーヌを優先するように私に勧めるのだから、なんて皆理解があるんだ!
ミスティ様は初めてのデートで、観劇の途中なのにわたしに屋敷に帰ることを勧めたのだ。
「シャルレーヌ様はダミアン様だけが頼りでしょうね? 今頃、寂しがっていますわよ。だって、シャルレーヌ様は私に『私のダミアンお兄様を盗らないで』と、言いますからね」
「いや、でも途中で帰ったら、さすがにミスティ様に申し訳ないよ」
「いいから、どうぞお帰りくださいませ。私は気にしませんわ」
あんまり途中で帰るように言うので屋敷に戻った。シャルレーヌに会いに行けば困惑したように、なぜ途中で戻って来たのかと尋ねる。
(嬉しいと素直に言えないシャルレーヌが可愛い。わたしの愛は君だけのものだ)
それからのデートでも必ずミスティ様が途中で帰るように言うし、なんならなぜシャルレーヌも一緒に来ないのだと不満げだった。
「おかしいわよ。なんで妨害してこないのよ。これじゃぁ、私が無理矢理帰らせるしかないじゃないの!」
意味不明なことをいつもつぶやくミスティ様はかなり変わっていると思う。
どうやらミスティ様はシャルレーヌと、私を共有したいらしいのだ。
一方に聡明で健康的な妻、もう一方には天使の愛人。夢のような生活が約束されたとほくそえんでいたのに、いきなりの婚約破棄をミスティ様から突きつけられた。
「私、ミスティ・カドバリーはダミアン・エズルバーグ侯爵令息との婚約を破棄しますわ。ダミアン様はいつでもこのシャルレーヌ様を優先して、私を蔑ろにしてきました。このシャルレーヌ様がダミアン様と深い仲なのは明白ですわ」
ミスティ様がわたしに向かって、とても元気に声を張り上げたのだ。
(なんで?)
ものごころがついた頃にはシャルレーヌが離れに住んでおり、血は繋がっていないが大事にするようにと父上から言われていた。
「シャルレーヌは可哀想な子だからね。優しくして守ってあげなさい」
と父上。
「はい。あの子の両親はどんな人ですか? なぜエズルバーグ侯爵家にいるのです?」
「あの子の両親は・・・・・・お前はまだ小さいし聞かない方がいいと思う。ここで話すような種類の人達ではない。シャルレーヌは大事にしないといけないよ」
本当の妹ではないけれど守ってあげるように、大事にしないといけない、・・・・・・この言葉の意味を幼い頃から考えてきた。
(シャルレーヌは私の将来の伴侶としてこの家に迎えられたのかも)
未来のわたしの花嫁かも、と思い大事に接してきた。シャルレーヌは天使のように綺麗だから、すぐにでも婚約して自分のものにしたいよ。
だが、正式に婚約者になったのは優秀だと評判のミスティ・カドバリー公爵令嬢だった。シャルレーヌが王立貴族学園に通えなかったことから、わたしにもある程度予想はついていた。
(シャルレーヌの身分がきっと低いんだ)
わたしは父上に問いかけた。
「なぜ、ミスティ・カドバリー公爵令嬢がわたしの婚約者なのですか? てっきりシャルレーヌが婚約者になると思っていました。エズルバーグ侯爵夫人に相応しい女性になる為に、シャルレーヌに家庭教師をたくさんつけたと思っていたのです」
「は? シャルレーヌとお前とでは到底釣り合わない。シャルレーヌをエズルバーグ侯爵家が嫁に迎えることは、天地がひっくり返ってもあり得んよ。お前にできることは、シャルレーヌを大事にし守ってあげることだけだ」
父上の言葉にわたしは確信した。
(やはり、シャルレーヌの身分はエズルバーグ侯爵夫人になるには問題があるのだ。わたしと釣り合わないなんて可哀想に)
しかし、父上は大事にし守ってあげるようにと言った。・・・・・・ということは、わかった! あのシャルレーヌはずっとこのエズルバーグ侯爵家にいて、わたしの保護下で暮らすのだろう。つまり・・・・・・ゆくゆくは愛人にしていいということに他ならない。
あぁ、そういうことなら納得できる。それに正妻になる予定のミスティ様も、シャルレーヌを優先するように私に勧めるのだから、なんて皆理解があるんだ!
ミスティ様は初めてのデートで、観劇の途中なのにわたしに屋敷に帰ることを勧めたのだ。
「シャルレーヌ様はダミアン様だけが頼りでしょうね? 今頃、寂しがっていますわよ。だって、シャルレーヌ様は私に『私のダミアンお兄様を盗らないで』と、言いますからね」
「いや、でも途中で帰ったら、さすがにミスティ様に申し訳ないよ」
「いいから、どうぞお帰りくださいませ。私は気にしませんわ」
あんまり途中で帰るように言うので屋敷に戻った。シャルレーヌに会いに行けば困惑したように、なぜ途中で戻って来たのかと尋ねる。
(嬉しいと素直に言えないシャルレーヌが可愛い。わたしの愛は君だけのものだ)
それからのデートでも必ずミスティ様が途中で帰るように言うし、なんならなぜシャルレーヌも一緒に来ないのだと不満げだった。
「おかしいわよ。なんで妨害してこないのよ。これじゃぁ、私が無理矢理帰らせるしかないじゃないの!」
意味不明なことをいつもつぶやくミスティ様はかなり変わっていると思う。
どうやらミスティ様はシャルレーヌと、私を共有したいらしいのだ。
一方に聡明で健康的な妻、もう一方には天使の愛人。夢のような生活が約束されたとほくそえんでいたのに、いきなりの婚約破棄をミスティ様から突きつけられた。
「私、ミスティ・カドバリーはダミアン・エズルバーグ侯爵令息との婚約を破棄しますわ。ダミアン様はいつでもこのシャルレーヌ様を優先して、私を蔑ろにしてきました。このシャルレーヌ様がダミアン様と深い仲なのは明白ですわ」
ミスティ様がわたしに向かって、とても元気に声を張り上げたのだ。
(なんで?)
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