(完結)「泥棒猫の寄生虫!」と罵倒されましたが、それはあなたの思い違いです。

青空一夏

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 だって鏡を見たら、あのゲームのイラストにあったヒロインの姿によく似ていたから。真っ直ぐな黒髪と黒曜石の瞳に小麦色の健康的なヒロイン。大抵ヒロインは金髪なのに、このゲームは日本人に馴染みやすいように敢えて黒髪にしたと説明書に書いてあったっけ。

 王立貴族学園に初めて入学した時は不安だったけれど、お父様はこの国の筆頭公爵家当主だ。王立貴族学園の学園長とも親友の仲なので、試験に出る問題はほぼ手に入れることができた。お陰でいつも学園トップよ。やはり、ヒロインにはこのような裏技が用意されているのだと感心した。

(そろそろ私に婚約者がでてくる頃だわ。それは多分、格下の侯爵家の男性で女の子っぽい顔の人よね)


 私はお父様の執務室に呼ばれる。
「ミスティの婚約者にエズルバーグ侯爵家のダミアン様が決まったよ。これが似せ絵だ」

 その顔は女性にしたらさぞかし可愛いと思われる男性で、あのゲームのイラストに似ていた。やはり、ここはあのゲームの世界ね。とすれば、エズルバーグ侯爵家には血の繋がらない妹のような存在の女がいるはずよ。

「お父様、この方には妹のような女性がいますよね?」

「ん? あぁ、なぜわかったのだい? シャルレーヌ様は縁戚の子で、赤子の時からエズルバーグ侯爵家で育てられていると聞いたよ。だが、成人するまでの話らしいから安心していい。あの子にはエズルバーグ侯爵家の遺産を相続する権利はなにもないよ」

(やっぱり、あのゲームの筋書きに似ているわよね・・・・・・だから私はヒロインだわ)



 
 初めてエズルバーグ侯爵家を訪問し、エズルバーグ侯爵家の皆様とお話しをしたわ。夫妻は温厚な方でダミアン様も優しい。けれど、肝心のその女がそこにはいなかった。
 この手の女は必ず私とダミアン様の邪魔をしてくるはずなのに。なにをサボっているのよ?

「離れに住んでいるご令嬢はなぜこちらにいらっしゃらないのですか?」

「シャルレーヌは午後のお茶の時間までは自室に籠もっていますわ。元々それほど身体が丈夫ではないのです。お茶の時間になればこちらに呼び寄せますので、それまでお待ちくださいな」
 エズルバーグ侯爵夫人がにっこりと微笑む。

(は? 病弱でお茶の時間まで寝ているというの? ただの怠け者じゃない!)



 私は庭園をダミアン様に案内してもらいながら、さらにその女の話を振った。
「それほどシャルレーヌ様は身体が弱いのですか?」

「そう、シャルレーヌはとても綺麗で無理をさせたら壊れそうなぐらい華奢なんだ。だから、午後3時過ぎでないと自室から出てこないよ。可哀想な子だから、仲良くしてあげてください」

「だから王立貴族学園に通えないのですね? その時間は、もうとっくに授業は終わっていますもの」

「いいえ、お茶の時間まで部屋に籠もるようになったのは昔からではないです。王立貴族学園に通える年齢になるまでは普通だった。最初は学園に通いたがったのですが、それはできないと母上から言われていました。多分身分が王立貴族学園に行くほど高くないのかもしれないです。例えば、父親の爵位が高くても母親が貴族でなければ入学資格はありません」

「え? 平民の子なのですか? 汚らわしい」

「いや、これは憶測です。父上も母上もとてもシャルレーヌを可愛がり大事にするのですが、離れに住まわせ距離を置いているのできっと身分の問題かな、と思いました。なんていうのかな、母上や父上は、たまに異質な存在のようにシャルレーヌを扱うのですよ。壁があるというか・・・・・・」

「壁? 確かに私達貴族は血筋を尊びますからね。母親は踊り子とか娼婦かもしれないですわ」

「あっははは、それはないですよ。シャルレーヌは天使の容貌でとても美人です。家庭教師が10人以上ついていますし、侍女やメイドの数は驚くほど多いです。さすがにそこまで卑しい生まれに、父上もお金はかけないでしょう」

「えぇ? 家庭教師が10人以上? あり得ないですわ。この国の王太子だって家庭教師はその半分だと思います。なんでそんなに・・・・・・わかった、きっとその子は魅了の魔法を使うのね?」

(魅了の魔法でエズルバーグ侯爵家の人々を引きつけて、たくさんのお金を使わせているに違いないわ)

「え? なんの魔法? 魔法はもうこの世界で使える人はいないはずですよ」

「ダミアン様、午後のお茶の時間には私がシャルレーヌ様をお迎えに行きますわ。仲良くなりたいですから」
 私は早速、その女に先制攻撃をしようと思う。
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