3 / 15
2-2
しおりを挟む
だって鏡を見たら、あのゲームのイラストにあったヒロインの姿によく似ていたから。真っ直ぐな黒髪と黒曜石の瞳に小麦色の健康的なヒロイン。大抵ヒロインは金髪なのに、このゲームは日本人に馴染みやすいように敢えて黒髪にしたと説明書に書いてあったっけ。
王立貴族学園に初めて入学した時は不安だったけれど、お父様はこの国の筆頭公爵家当主だ。王立貴族学園の学園長とも親友の仲なので、試験に出る問題はほぼ手に入れることができた。お陰でいつも学園トップよ。やはり、ヒロインにはこのような裏技が用意されているのだと感心した。
(そろそろ私に婚約者がでてくる頃だわ。それは多分、格下の侯爵家の男性で女の子っぽい顔の人よね)
私はお父様の執務室に呼ばれる。
「ミスティの婚約者にエズルバーグ侯爵家のダミアン様が決まったよ。これが似せ絵だ」
その顔は女性にしたらさぞかし可愛いと思われる男性で、あのゲームのイラストに似ていた。やはり、ここはあのゲームの世界ね。とすれば、エズルバーグ侯爵家には血の繋がらない妹のような存在の女がいるはずよ。
「お父様、この方には妹のような女性がいますよね?」
「ん? あぁ、なぜわかったのだい? シャルレーヌ様は縁戚の子で、赤子の時からエズルバーグ侯爵家で育てられていると聞いたよ。だが、成人するまでの話らしいから安心していい。あの子にはエズルバーグ侯爵家の遺産を相続する権利はなにもないよ」
(やっぱり、あのゲームの筋書きに似ているわよね・・・・・・だから私はヒロインだわ)
初めてエズルバーグ侯爵家を訪問し、エズルバーグ侯爵家の皆様とお話しをしたわ。夫妻は温厚な方でダミアン様も優しい。けれど、肝心のその女がそこにはいなかった。
この手の女は必ず私とダミアン様の邪魔をしてくるはずなのに。なにをサボっているのよ?
「離れに住んでいるご令嬢はなぜこちらにいらっしゃらないのですか?」
「シャルレーヌは午後のお茶の時間までは自室に籠もっていますわ。元々それほど身体が丈夫ではないのです。お茶の時間になればこちらに呼び寄せますので、それまでお待ちくださいな」
エズルバーグ侯爵夫人がにっこりと微笑む。
(は? 病弱でお茶の時間まで寝ているというの? ただの怠け者じゃない!)
私は庭園をダミアン様に案内してもらいながら、さらにその女の話を振った。
「それほどシャルレーヌ様は身体が弱いのですか?」
「そう、シャルレーヌはとても綺麗で無理をさせたら壊れそうなぐらい華奢なんだ。だから、午後3時過ぎでないと自室から出てこないよ。可哀想な子だから、仲良くしてあげてください」
「だから王立貴族学園に通えないのですね? その時間は、もうとっくに授業は終わっていますもの」
「いいえ、お茶の時間まで部屋に籠もるようになったのは昔からではないです。王立貴族学園に通える年齢になるまでは普通だった。最初は学園に通いたがったのですが、それはできないと母上から言われていました。多分身分が王立貴族学園に行くほど高くないのかもしれないです。例えば、父親の爵位が高くても母親が貴族でなければ入学資格はありません」
「え? 平民の子なのですか? 汚らわしい」
「いや、これは憶測です。父上も母上もとてもシャルレーヌを可愛がり大事にするのですが、離れに住まわせ距離を置いているのできっと身分の問題かな、と思いました。なんていうのかな、母上や父上は、たまに異質な存在のようにシャルレーヌを扱うのですよ。壁があるというか・・・・・・」
「壁? 確かに私達貴族は血筋を尊びますからね。母親は踊り子とか娼婦かもしれないですわ」
「あっははは、それはないですよ。シャルレーヌは天使の容貌でとても美人です。家庭教師が10人以上ついていますし、侍女やメイドの数は驚くほど多いです。さすがにそこまで卑しい生まれに、父上もお金はかけないでしょう」
「えぇ? 家庭教師が10人以上? あり得ないですわ。この国の王太子だって家庭教師はその半分だと思います。なんでそんなに・・・・・・わかった、きっとその子は魅了の魔法を使うのね?」
(魅了の魔法でエズルバーグ侯爵家の人々を引きつけて、たくさんのお金を使わせているに違いないわ)
「え? なんの魔法? 魔法はもうこの世界で使える人はいないはずですよ」
「ダミアン様、午後のお茶の時間には私がシャルレーヌ様をお迎えに行きますわ。仲良くなりたいですから」
私は早速、その女に先制攻撃をしようと思う。
王立貴族学園に初めて入学した時は不安だったけれど、お父様はこの国の筆頭公爵家当主だ。王立貴族学園の学園長とも親友の仲なので、試験に出る問題はほぼ手に入れることができた。お陰でいつも学園トップよ。やはり、ヒロインにはこのような裏技が用意されているのだと感心した。
(そろそろ私に婚約者がでてくる頃だわ。それは多分、格下の侯爵家の男性で女の子っぽい顔の人よね)
私はお父様の執務室に呼ばれる。
「ミスティの婚約者にエズルバーグ侯爵家のダミアン様が決まったよ。これが似せ絵だ」
その顔は女性にしたらさぞかし可愛いと思われる男性で、あのゲームのイラストに似ていた。やはり、ここはあのゲームの世界ね。とすれば、エズルバーグ侯爵家には血の繋がらない妹のような存在の女がいるはずよ。
「お父様、この方には妹のような女性がいますよね?」
「ん? あぁ、なぜわかったのだい? シャルレーヌ様は縁戚の子で、赤子の時からエズルバーグ侯爵家で育てられていると聞いたよ。だが、成人するまでの話らしいから安心していい。あの子にはエズルバーグ侯爵家の遺産を相続する権利はなにもないよ」
(やっぱり、あのゲームの筋書きに似ているわよね・・・・・・だから私はヒロインだわ)
初めてエズルバーグ侯爵家を訪問し、エズルバーグ侯爵家の皆様とお話しをしたわ。夫妻は温厚な方でダミアン様も優しい。けれど、肝心のその女がそこにはいなかった。
この手の女は必ず私とダミアン様の邪魔をしてくるはずなのに。なにをサボっているのよ?
「離れに住んでいるご令嬢はなぜこちらにいらっしゃらないのですか?」
「シャルレーヌは午後のお茶の時間までは自室に籠もっていますわ。元々それほど身体が丈夫ではないのです。お茶の時間になればこちらに呼び寄せますので、それまでお待ちくださいな」
エズルバーグ侯爵夫人がにっこりと微笑む。
(は? 病弱でお茶の時間まで寝ているというの? ただの怠け者じゃない!)
私は庭園をダミアン様に案内してもらいながら、さらにその女の話を振った。
「それほどシャルレーヌ様は身体が弱いのですか?」
「そう、シャルレーヌはとても綺麗で無理をさせたら壊れそうなぐらい華奢なんだ。だから、午後3時過ぎでないと自室から出てこないよ。可哀想な子だから、仲良くしてあげてください」
「だから王立貴族学園に通えないのですね? その時間は、もうとっくに授業は終わっていますもの」
「いいえ、お茶の時間まで部屋に籠もるようになったのは昔からではないです。王立貴族学園に通える年齢になるまでは普通だった。最初は学園に通いたがったのですが、それはできないと母上から言われていました。多分身分が王立貴族学園に行くほど高くないのかもしれないです。例えば、父親の爵位が高くても母親が貴族でなければ入学資格はありません」
「え? 平民の子なのですか? 汚らわしい」
「いや、これは憶測です。父上も母上もとてもシャルレーヌを可愛がり大事にするのですが、離れに住まわせ距離を置いているのできっと身分の問題かな、と思いました。なんていうのかな、母上や父上は、たまに異質な存在のようにシャルレーヌを扱うのですよ。壁があるというか・・・・・・」
「壁? 確かに私達貴族は血筋を尊びますからね。母親は踊り子とか娼婦かもしれないですわ」
「あっははは、それはないですよ。シャルレーヌは天使の容貌でとても美人です。家庭教師が10人以上ついていますし、侍女やメイドの数は驚くほど多いです。さすがにそこまで卑しい生まれに、父上もお金はかけないでしょう」
「えぇ? 家庭教師が10人以上? あり得ないですわ。この国の王太子だって家庭教師はその半分だと思います。なんでそんなに・・・・・・わかった、きっとその子は魅了の魔法を使うのね?」
(魅了の魔法でエズルバーグ侯爵家の人々を引きつけて、たくさんのお金を使わせているに違いないわ)
「え? なんの魔法? 魔法はもうこの世界で使える人はいないはずですよ」
「ダミアン様、午後のお茶の時間には私がシャルレーヌ様をお迎えに行きますわ。仲良くなりたいですから」
私は早速、その女に先制攻撃をしようと思う。
33
お気に入りに追加
3,121
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。


彼女(ヒロイン)は、バッドエンドが確定している
基本二度寝
恋愛
おそらく彼女(ヒロイン)は記憶持ちだった。
王族が認め、発表した「稀有な能力を覚醒させた」と、『選ばれた平民』。
彼女は侯爵令嬢の婚約者の第二王子と距離が近くなり、噂を立てられるほどになっていた。
しかし、侯爵令嬢はそれに構う余裕はなかった。
侯爵令嬢は、第二王子から急遽開催される夜会に呼び出しを受けた。
とうとう婚約破棄を言い渡されるのだろう。
平民の彼女は第二王子の婚約者から彼を奪いたいのだ。
それが、運命だと信じている。
…穏便に済めば、大事にならないかもしれない。
会場へ向かう馬車の中で侯爵令嬢は息を吐いた。
侯爵令嬢もまた記憶持ちだった。

【短編】捨てられた公爵令嬢ですが今さら謝られても「もう遅い」
みねバイヤーン
恋愛
「すまなかった、ヤシュナ。この通りだ、どうか王都に戻って助けてくれないか」
ザイード第一王子が、婚約破棄して捨てた公爵家令嬢ヤシュナに深々と頭を垂れた。
「お断りします。あなた方が私に対して行った数々の仕打ち、決して許すことはありません。今さら謝ったところで、もう遅い。ばーーーーーか」
王家と四大公爵の子女は、王国を守る御神体を毎日清める義務がある。ところが聖女ベルが現れたときから、朝の清めはヤシュナと弟のカルルクのみが行なっている。務めを果たさず、自分を使い潰す気の王家にヤシュナは切れた。王家に対するざまぁの準備は着々と進んでいる。
【完結】なんで、あなたが王様になろうとしているのです?そんな方とはこっちから婚約破棄です。
西東友一
恋愛
現国王である私のお父様が病に伏せられました。
「はっはっはっ。いよいよ俺の出番だな。みなさま、心配なさるなっ!! ヴィクトリアと婚約関係にある、俺に任せろっ!!」
わたくしと婚約関係にあった貴族のネロ。
「婚約破棄ですわ」
「なっ!?」
「はぁ・・・っ」
わたくしの言いたいことが全くわからないようですね。
では、順を追ってご説明致しましょうか。
★★★
1万字をわずかに切るぐらいの量です。
R3.10.9に完結予定です。
ヴィクトリア女王やエリザベス女王とか好きです。
そして、主夫が大好きです!!
婚約破棄ざまぁの発展系かもしれませんし、後退系かもしれません。
婚約破棄の王道が好きな方は「箸休め」にお読みください。

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。
夢草 蝶
恋愛
シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。
どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。
すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──
本編とおまけの二話構成の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる