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3-2 ロマン視点
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ところが再会したモニカは全くの別人だった。華奢だった体つきのあらゆる場所がパンパンに膨らんでいる。唯一昔の面影があるのは輝く金髪に碧眼だけ。
「えぇっと、ロマンなの? なんて言うか、ちょっと変わったわね? 顔のシミが凄いわよ」
(わたしの顔のシミよりお前の腹はどうした? なにが入っているんだよ?)
「は? 君はモニカ? 君こそ、そのだらしのない体型はなんだ? 腹も腕も顔もパンパンにむくんでいるよ。わたしのシミはゴルフを頻繁にするせいさ。日焼けの代償だが、健康的でアクティブな男の証明だろう?」
「失礼ね! 少しふくよかになっただけよ。女性はね、ある程度歳をとると痩せすぎは貧相に見えるの。だから敢えてこの体型を維持しているのよ。昔と違ってずいぶんデリカシーがないのね。なにがアクティブよ、そんなシミが健康的なわけないじゃない!」
(ふくよか? 冗談だろう。ふくよかの範囲をぶっちぎり軽く飛び越えているお前は鏡を見たことがあるのか? わたしの純粋な恋心を返せ。男のロマンを返せぇえぇえ)
わたしは帰りの馬車で思わず涙があふれ出た。
屋敷に着くと妻はどこにもいない。
「奥様はもうお休みですよ。起こさないようにと仰せで・・・・・・」
メイドが私を止めるが構うものか。
「わたしが出かける前に言ったことで、愛する夫を奪われると悩み寝込んでしまったのだろう。イザベラはわたしを愛しているからな」
わたしは早速妻の寝室に入っていき、
「聞いてくれよ。あれは詐欺だ! モニカは詐欺だ! あれは別人だ。酷いよ、あんまりだぁーー。」と愚痴りはじめた。
「何事ですか? いったいどうしたというのです?」
やはりイザベラはわたしのことを気になっていたのだ。すぐに起きてくれてわたしを心配そうに見つめた。
「よくぞ聞いてくれた。実はな、モニカはとても太ってしまったんだ。顔も腹もパンパンで、そのくせわたしの顔のシミを凄いなどと言い、身の程知らずもいいところさ。それに比べてイザベラの体型は昔と変わらず、いや昔よりよほど綺麗さを保っている。そろそろ寝室をまた一緒にしないか? これからも一緒に支え合って生きていこうな」
「気持ち悪い。身の程知らずはあなたですわ。口を開けば容姿のことばかり。太ったぐらいで愛がさめるならそれはもとから愛ではなかったのでしょう。容姿は時間の流れで変わっていきます。私だって太りはしていませんが、皺やシミはこれからも年々増えていくのですよ。それにいちいち幻滅されたらたまったものではありませんわ」
思わぬ妻の反撃にたじろいでいると、娘のエメリーヌが顔をしかめながら妻の寝室に入ってきて、わたしの前に仁王立ちした。
「お父様は鏡を見た方が良いです。ご自分の髪がないことやシミが増えたこと、お腹の贅肉だって着実に増えているではありませんか? 現実をよく見てくださいね。私にもよく『お前は冴えないお母様に似て可哀想に』とおっしゃっていましたが、容姿ばかりが人間の価値だと思っているお父様が大嫌いでした」
さらに息子のレオナールまでやって来て、
「わたしも父上が大嫌いですよ」と言い放つ。
(わたしのどこがいけなかったと言うんだ! 父親に向かって酷い奴らだ)
「えぇっと、ロマンなの? なんて言うか、ちょっと変わったわね? 顔のシミが凄いわよ」
(わたしの顔のシミよりお前の腹はどうした? なにが入っているんだよ?)
「は? 君はモニカ? 君こそ、そのだらしのない体型はなんだ? 腹も腕も顔もパンパンにむくんでいるよ。わたしのシミはゴルフを頻繁にするせいさ。日焼けの代償だが、健康的でアクティブな男の証明だろう?」
「失礼ね! 少しふくよかになっただけよ。女性はね、ある程度歳をとると痩せすぎは貧相に見えるの。だから敢えてこの体型を維持しているのよ。昔と違ってずいぶんデリカシーがないのね。なにがアクティブよ、そんなシミが健康的なわけないじゃない!」
(ふくよか? 冗談だろう。ふくよかの範囲をぶっちぎり軽く飛び越えているお前は鏡を見たことがあるのか? わたしの純粋な恋心を返せ。男のロマンを返せぇえぇえ)
わたしは帰りの馬車で思わず涙があふれ出た。
屋敷に着くと妻はどこにもいない。
「奥様はもうお休みですよ。起こさないようにと仰せで・・・・・・」
メイドが私を止めるが構うものか。
「わたしが出かける前に言ったことで、愛する夫を奪われると悩み寝込んでしまったのだろう。イザベラはわたしを愛しているからな」
わたしは早速妻の寝室に入っていき、
「聞いてくれよ。あれは詐欺だ! モニカは詐欺だ! あれは別人だ。酷いよ、あんまりだぁーー。」と愚痴りはじめた。
「何事ですか? いったいどうしたというのです?」
やはりイザベラはわたしのことを気になっていたのだ。すぐに起きてくれてわたしを心配そうに見つめた。
「よくぞ聞いてくれた。実はな、モニカはとても太ってしまったんだ。顔も腹もパンパンで、そのくせわたしの顔のシミを凄いなどと言い、身の程知らずもいいところさ。それに比べてイザベラの体型は昔と変わらず、いや昔よりよほど綺麗さを保っている。そろそろ寝室をまた一緒にしないか? これからも一緒に支え合って生きていこうな」
「気持ち悪い。身の程知らずはあなたですわ。口を開けば容姿のことばかり。太ったぐらいで愛がさめるならそれはもとから愛ではなかったのでしょう。容姿は時間の流れで変わっていきます。私だって太りはしていませんが、皺やシミはこれからも年々増えていくのですよ。それにいちいち幻滅されたらたまったものではありませんわ」
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