(完結)初恋なのでしょ? どうぞあちらに乗り換えあそばせ!

青空一夏

文字の大きさ
上 下
4 / 6

3-2 ロマン視点

しおりを挟む
 ところが再会したモニカは全くの別人だった。華奢だった体つきのあらゆる場所がパンパンに膨らんでいる。唯一昔の面影があるのは輝く金髪に碧眼だけ。

「えぇっと、ロマンなの? なんて言うか、ちょっと変わったわね? 顔のシミが凄いわよ」

(わたしの顔のシミよりお前の腹はどうした? なにが入っているんだよ?)

「は? 君はモニカ? 君こそ、そのだらしのない体型はなんだ? 腹も腕も顔もパンパンにむくんでいるよ。わたしのシミはゴルフを頻繁にするせいさ。日焼けの代償だが、健康的でアクティブな男の証明だろう?」

「失礼ね! 少しふくよかになっただけよ。女性はね、ある程度歳をとると痩せすぎは貧相に見えるの。だから敢えてこの体型を維持しているのよ。昔と違ってずいぶんデリカシーがないのね。なにがアクティブよ、そんなシミが健康的なわけないじゃない!」

(ふくよか? 冗談だろう。ふくよかの範囲をぶっちぎり軽く飛び越えているお前は鏡を見たことがあるのか? わたしの純粋な恋心を返せ。男のロマンを返せぇえぇえ)

 わたしは帰りの馬車で思わず涙があふれ出た。





 屋敷に着くと妻はどこにもいない。
「奥様はもうお休みですよ。起こさないようにと仰せで・・・・・・」
 メイドが私を止めるが構うものか。

「わたしが出かける前に言ったことで、愛する夫を奪われると悩み寝込んでしまったのだろう。イザベラはわたしを愛しているからな」

 わたしは早速妻の寝室に入っていき、
「聞いてくれよ。あれは詐欺だ! モニカは詐欺だ! あれは別人だ。酷いよ、あんまりだぁーー。」と愚痴りはじめた。

「何事ですか? いったいどうしたというのです?」
 やはりイザベラはわたしのことを気になっていたのだ。すぐに起きてくれてわたしを心配そうに見つめた。

「よくぞ聞いてくれた。実はな、モニカはとても太ってしまったんだ。顔も腹もパンパンで、そのくせわたしの顔のシミを凄いなどと言い、身の程知らずもいいところさ。それに比べてイザベラの体型は昔と変わらず、いや昔よりよほど綺麗さを保っている。そろそろ寝室をまた一緒にしないか? これからも一緒に支え合って生きていこうな」

「気持ち悪い。身の程知らずはあなたですわ。口を開けば容姿のことばかり。太ったぐらいで愛がさめるならそれはもとから愛ではなかったのでしょう。容姿は時間の流れで変わっていきます。私だって太りはしていませんが、皺やシミはこれからも年々増えていくのですよ。それにいちいち幻滅されたらたまったものではありませんわ」

 思わぬ妻の反撃にたじろいでいると、娘のエメリーヌが顔をしかめながら妻の寝室に入ってきて、わたしの前に仁王立ちした。
「お父様は鏡を見た方が良いです。ご自分の髪がないことやシミが増えたこと、お腹の贅肉だって着実に増えているではありませんか? 現実をよく見てくださいね。私にもよく『お前は冴えないお母様に似て可哀想に』とおっしゃっていましたが、容姿ばかりが人間の価値だと思っているお父様が大嫌いでした」

 さらに息子のレオナールまでやって来て、
「わたしも父上が大嫌いですよ」と言い放つ。

(わたしのどこがいけなかったと言うんだ! 父親に向かって酷い奴らだ)

しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

あのひとのいちばん大切なひと

キムラましゅろう
恋愛
あのひとはわたしの大切なひと。 でも、あのひとにはわたしではない大切なひとがいる。 それでもいい。 あのひとの側にいられるなら。 あのひとの役にたてるなら。 でもそれも、もうすぐおしまい。 恋人を失ったアベルのために奮闘したリタ。 その恋人がアベルの元へ戻ると知り、リタは離れる決意をする。 一話完結の読み切りです。 読み切りゆえにいつも以上にご都合主義です。 誤字脱字ごめんなさい!最初に謝っておきます。 小説家になろうさんにも時差投稿します。

結婚式間近に発覚した隠し子の存在。裏切っただけでも問題なのに、何が悪いのか理解できないような人とは結婚できません!

田太 優
恋愛
結婚して幸せになれるはずだったのに婚約者には隠し子がいた。 しかもそのことを何ら悪いとは思っていない様子。 そんな人とは結婚できるはずもなく、婚約破棄するのも当然のこと。

いつまでも甘くないから

朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。 結婚を前提として紹介であることは明白だった。 しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。 この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。 目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・ 二人は正反対の反応をした。

元婚約者が愛おしい

碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。 留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。 フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。 リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。 フラン王子目線の物語です。

処理中です...