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3-1 ロマン視点
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(ロマン視点)
モニカは理想の女性だった。金髪に碧眼で目の覚めるような美女だ。鼻筋は高く真っ直ぐで、長い睫に縁取られた大きな瞳はどんな宝石よりも輝いていた。
大きな胸に細くくびれた腰は男達の憧れだったし女神そのものだった。このわたしも学園では1,2位を争う美男子、私達は最高のカップルだったのに。
「ロマンよ、バナール伯爵家のイザベラ様と結婚が決まったのでそのつもりでいなさい」
ある日、父上の執務室に呼ばれて一方的に告げられた理不尽な宣告。
「なぜですか? わたしはモニカを愛しているのです。あちらもわたしに好意を持っています。わたし達ほどお似合いのカップルはいない」
「モニカの実家マリヴォー子爵家は大借金を抱えた貴族だぞ。モニカとの結婚の条件はマリヴォー子爵家への莫大な援助金になるはずだ。わしはモニカがその莫大な援助金に見合う女性とは思わんよ。それに我が家にはそんな金はない。ティエリー伯爵領ではろくな作物もできず、新たな事業に着手する必要があるし、それにはバナール伯爵家の技術指導や経営ノウハウが必要なのだ。くれぐれもイザベラ様を大切にするように。あちらは裕福だから持参金もたくさん持って来てくださる。とてもありがたい縁談だろう? これは決定事項だ」
(無念・・・・・・愛を・・・・・・この世における真実の愛を金で壊された! 莫大な持参金付きでやって来る? わたしの美貌にきっとイザベラが恋をしたに違いない。だからわたしは金で買われたようなものだ)
娶ったイザベラは3歳年下のなんの魅力もない女だった。ありふれたブラウンの髪と瞳、顔立ちも平凡でなにも目立った美しさはない。こんな女とパーティに出たって少しも自慢できないではないか!
しかも小賢しく領地経営や事業にまで積極的に口を出してくる。新たな事業はイザベラの兄アレクシと共同経営のような形で進められた。わたしはアレクシが苦手だ。上から目線でなにかとわたしに偉そうに指図する。次第にその会議から足が遠のき、イザベラが代わりに出席するようになった。
(やりたい奴がやればいいだろう。わたしは領地経営を頑張ろう)
ところがティエリー伯爵領の土地は作物を育てるには全く適しない。税収を上げようにも領地改革をしようにも手詰まりで、結局部下に任せきりになった。その部下達の横領をイザベラがたまたま見つけ、それからはイザベラが管理するようになった。男の仕事を次々と奪い取る出過ぎた女だと思う。
「モニカはそんなにがさつじゃなかった」
「モニカはもっと優しく思いやりがあったのに」
「本当に好きな相手とは一緒にはなれないのだな。人生とは悲しいものだ」
私を愛しているイザベラに、わたしはわざとこのような言葉を投げつけた。イザベラは傷ついた瞳にほんの少し涙を滲ませる。わたしを金で買ったつもりでも心は手に入らないことを思い知るが良い。
(お前のせいでわたしはモニカと結婚できなかったのだから、せいぜい反省することだ)
跡継ぎはできないと困るからそこはなんとか切り抜けた。相手をモニカと想像しながら目をつぶってどうにか夫としての務めを果たす。長男と長女を授かってから、妻から寝室を別にしたいと言われた。一緒に寝ることがなくなりどんなにありがたかったか。
(わたしの気持ちを理解してくれたのか。心から愛する女性ではないイザベラの隣で寝ることは苦痛だったからな)
わたし達夫婦はそうして私が我慢することで成り立っていた。イザベラは大好きなわたしといれて毎日を楽しそうに生活している。いい気なものさ。
ある日突然モニカから手紙がきた。夫が亡くなりこちらに移住してくるという。なんという朗報だ! これからが青春だ!
わたしは愛のこもった手紙を出した。
(わたし達はようやくひとつになれるんだぁーー♬ 神よ、感謝します。やはり真実の愛は最後には勝つのだな)
モニカに再会する当日、
「あぁ、麗しのモニカに会えるなんて夢のようだよ。もしかしたら今夜は戻らないかもしれない。わたしたちの子供ももう大きい。お互いが好きなように生きて余生を満喫しないか?」
と、提案した。
物わかりの良い妻は何も言わずわたしを送り出してくれた。あいつのいいところは従順なところだな。まぁ、イザベラはわたしを大好きだから言いなりだよ。
モニカは理想の女性だった。金髪に碧眼で目の覚めるような美女だ。鼻筋は高く真っ直ぐで、長い睫に縁取られた大きな瞳はどんな宝石よりも輝いていた。
大きな胸に細くくびれた腰は男達の憧れだったし女神そのものだった。このわたしも学園では1,2位を争う美男子、私達は最高のカップルだったのに。
「ロマンよ、バナール伯爵家のイザベラ様と結婚が決まったのでそのつもりでいなさい」
ある日、父上の執務室に呼ばれて一方的に告げられた理不尽な宣告。
「なぜですか? わたしはモニカを愛しているのです。あちらもわたしに好意を持っています。わたし達ほどお似合いのカップルはいない」
「モニカの実家マリヴォー子爵家は大借金を抱えた貴族だぞ。モニカとの結婚の条件はマリヴォー子爵家への莫大な援助金になるはずだ。わしはモニカがその莫大な援助金に見合う女性とは思わんよ。それに我が家にはそんな金はない。ティエリー伯爵領ではろくな作物もできず、新たな事業に着手する必要があるし、それにはバナール伯爵家の技術指導や経営ノウハウが必要なのだ。くれぐれもイザベラ様を大切にするように。あちらは裕福だから持参金もたくさん持って来てくださる。とてもありがたい縁談だろう? これは決定事項だ」
(無念・・・・・・愛を・・・・・・この世における真実の愛を金で壊された! 莫大な持参金付きでやって来る? わたしの美貌にきっとイザベラが恋をしたに違いない。だからわたしは金で買われたようなものだ)
娶ったイザベラは3歳年下のなんの魅力もない女だった。ありふれたブラウンの髪と瞳、顔立ちも平凡でなにも目立った美しさはない。こんな女とパーティに出たって少しも自慢できないではないか!
しかも小賢しく領地経営や事業にまで積極的に口を出してくる。新たな事業はイザベラの兄アレクシと共同経営のような形で進められた。わたしはアレクシが苦手だ。上から目線でなにかとわたしに偉そうに指図する。次第にその会議から足が遠のき、イザベラが代わりに出席するようになった。
(やりたい奴がやればいいだろう。わたしは領地経営を頑張ろう)
ところがティエリー伯爵領の土地は作物を育てるには全く適しない。税収を上げようにも領地改革をしようにも手詰まりで、結局部下に任せきりになった。その部下達の横領をイザベラがたまたま見つけ、それからはイザベラが管理するようになった。男の仕事を次々と奪い取る出過ぎた女だと思う。
「モニカはそんなにがさつじゃなかった」
「モニカはもっと優しく思いやりがあったのに」
「本当に好きな相手とは一緒にはなれないのだな。人生とは悲しいものだ」
私を愛しているイザベラに、わたしはわざとこのような言葉を投げつけた。イザベラは傷ついた瞳にほんの少し涙を滲ませる。わたしを金で買ったつもりでも心は手に入らないことを思い知るが良い。
(お前のせいでわたしはモニカと結婚できなかったのだから、せいぜい反省することだ)
跡継ぎはできないと困るからそこはなんとか切り抜けた。相手をモニカと想像しながら目をつぶってどうにか夫としての務めを果たす。長男と長女を授かってから、妻から寝室を別にしたいと言われた。一緒に寝ることがなくなりどんなにありがたかったか。
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と、提案した。
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