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2 モニカ視点
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(モニカ視点)
私はモニカ・レセップス。レセップス伯爵の夫が亡くなり息子マテオが跡を継ぎ、なんとマテオから祖国への移住を提案された。
「母上は以前から祖国のロマン様のことばかりおっしゃっていましたよね? 父上も亡くなった今こそ、その初恋の男性と楽しく余生を過ごされたらいかがですか? あちらの国に屋敷を用意してあげましょう。月々の生活費も妥当と思われる金額はこちらから送りますよ。第2の人生をお楽しみください」
「あら、それは良い考えね? 祖国には私の崇拝者がたくさんいるのよ。なんと言っても私は王立貴族学園のマドンナだったのだから。きっとかつて私に恋をしていた男性達が、争って私を手に入れようとするわ。素敵!」
「あぁ、本当にそうだと思いますよ。善は急げです。きっと初恋の君が待っていますよ。早くこの国を出発なさってください」
「わかったわ。ロマンに早速お手紙を書きましょう」
私は息子に勧められてかつての麗しい男性に手紙をしたためた。ロマンは銀髪にアメジストの瞳のクールな男性だった。それに私にメロメロだったわ。
やがてロマンから手紙の返事がくる。
「あぁ、ずっとモニカだけを思っていたよ。政略結婚の妻との生活は砂を噛むように味気なく辛いものだった。今こそ、わたしたちの真実の愛を実らせよう! 永遠の愛を女神のように美しいモニカに誓おう」
望んでいた言葉以上の手紙に心が躍った。
(あぁ、これからが本当の人生よね?)
今まで忘れていたときめきも、昔のほろ苦くも甘い淡い恋の高鳴りも蘇ってきたわ。私は一気に学生時代に戻り足取りも軽く祖国に向かった。
そうして迎えた再会当日。同窓会のようなメンバーでパーティを開いた。屋敷のパーティホールにはたくさんの招待客で溢れかえるはずなのに、予定したお客様の半分も来ない。しかも、来てくれたのはすっかり変わり果てた男達ばかり。
「え? あなたがローランなの?」
かつての颯爽としていた男性がガリガリに痩せ細り枯れ木のようになっていた。
「うん。病気を患ってからすっかり痩せてしまったんだ。妻にも離縁され今は独りぼっちだ」
(つまらない愚痴はやめてよ。病人なんかに用はないわ)
「えぇーー? あなたがジャンなの? 樽のようなお腹はどうしたの?」
「あぁ、中年太りかな。お陰で歩くのがきついよ。膝も最近痛くてさ、妻からもダイエットするように言われて辛いよ」
「そうね。奥様のおっしゃることに従うべきよ。だって、太りすぎでしょう?」
私はイライラとジャンに言葉を返した。ジャンはほっそりした美少年だったのに・・・・・・面影はまるでない。
想像と全く違う男達が数人しか来ないことにうろたえたが、背後から声をかけてきた男性に気分はぐっと上向きになった。
「やぁ、お久しぶり! わたしを覚えているかな?」
男性の声は深みのある低く甘い声。背も高く引き締まった体躯に、野性味のある顔立ちは目尻の皺までセクシーに見えた。いい歳の取り方をしている見本のような男性に心はときめく。
(これよ、これ。こんなかんじの男達に囲まれて暮らすのが私の理想の第2の人生だわ)
「ごめんなさいね、どなただったかしら? これほど素敵な方を覚えていないはずはないのだけれど」
「あなたに散々気持ち悪いとバカにされていたディトリッシュですよ。当時のわたしは少し太り気味でした」
「え? あのデブのディトリッシュ? 嘘でしょう? でもこれほど素敵になったのなら仲良くしましょう。あちらで一緒にお酒でも・・・・・・」
「いいえ、今日は妻を一緒に伴っていますので長居はできません。観劇の前にちょっと寄らせていただいただけです」
その言葉と同時にディトリッシュの隣に姿を現し、腕に手をかける見知った顔。
わたしがバカにしていたマリアンヌだった。彼女も冴えない陰気な女で、わたしはよくこの二人をセットでからかっていたのだ。
今のマリアンヌはすっかり垢抜けて昔よりずっと綺麗だった。
「モニカ様にひとめ会いたくて参りましたわ。相変わらずお綺麗な髪と瞳ですわね」
そう言って彼らは帰って行く。ディトリッシュは確かルノアール侯爵家の長男だった。
(あんなにかっこよくなるんだったら、私のものにしておけば良かったかも。侯爵家だもの、お父様だって反対しなかったはずだわ。勿体ないことをした)
それからまもなく大本命のかつての初恋の男が登場・・・・・・でも、これって本当にロマンなの?
(綺麗だった銀髪は? おでこの面積がやたら広い。逞しくも引き締まった身体は? 下腹部が妙に可愛い。ポヨンとしたそのお肉はなぁに? 顔がシミだらけなのはなんで?)
「えぇっと、ロマンなの? なんて言うか、ちょっと変わったわね? 顔のシミが凄いわよ」
「は? 君はモニカ? 君こそ、そのだらしのない体型はなんだ? 腹も腕も顔もパンパンにむくんでいるよ。わたしのシミはゴルフを頻繁にするせいさ。日焼けの代償だが、健康的でアクティブな男の証明だろう?」
「失礼ね! 少しふくよかになっただけよ。女性はね、ある程度歳をとると痩せすぎは貧相に見えるの。だから敢えてこの体型を維持しているのよ。昔と違ってずいぶんデリカシーがないのね。なにがアクティブよ、そんなシミが健康的なわけないじゃない!」
(腹が立つわ。本当にむかつく! 自分だってハゲデブなくせに・・・・・・私の長年の恋心を返せ! 乙女の夢を汚すな!)
「やっぱり、私をこの屋敷に住まわせてちょうだい。ロマンは詐欺だったわ。頭はハゲ上がっていたしお腹は贅肉だらけよ。あれは私の好きだった彼じゃないのよぉおお」
私はマテオの住まう屋敷に数日かけて戻り愚痴をこぼしたのだった。
「やれやれ。わたしは母上が大嫌いだから、一緒に住みたくないのですよ。父上をいつもバカにして何かと言えば初恋の男の話をしていましたね? 父上は領地経営の才覚も優れ、新しい事業も考え出す尊敬できる男だった。確かに容姿は麗しくはなかったかもしれないが、わたしには理想の父だったんだ。母上だって贅沢できたのは父上の頑張りがあったからですよ」
「夫が妻に贅沢をさせるのは当たり前じゃないのよ。私はこんなに美しいのよ」
「いい加減に目を覚ませ!」
私はマテオから大声で怒鳴りつけられたのだった。
(酷い! 私のどこが悪かったと言うの?)
私はモニカ・レセップス。レセップス伯爵の夫が亡くなり息子マテオが跡を継ぎ、なんとマテオから祖国への移住を提案された。
「母上は以前から祖国のロマン様のことばかりおっしゃっていましたよね? 父上も亡くなった今こそ、その初恋の男性と楽しく余生を過ごされたらいかがですか? あちらの国に屋敷を用意してあげましょう。月々の生活費も妥当と思われる金額はこちらから送りますよ。第2の人生をお楽しみください」
「あら、それは良い考えね? 祖国には私の崇拝者がたくさんいるのよ。なんと言っても私は王立貴族学園のマドンナだったのだから。きっとかつて私に恋をしていた男性達が、争って私を手に入れようとするわ。素敵!」
「あぁ、本当にそうだと思いますよ。善は急げです。きっと初恋の君が待っていますよ。早くこの国を出発なさってください」
「わかったわ。ロマンに早速お手紙を書きましょう」
私は息子に勧められてかつての麗しい男性に手紙をしたためた。ロマンは銀髪にアメジストの瞳のクールな男性だった。それに私にメロメロだったわ。
やがてロマンから手紙の返事がくる。
「あぁ、ずっとモニカだけを思っていたよ。政略結婚の妻との生活は砂を噛むように味気なく辛いものだった。今こそ、わたしたちの真実の愛を実らせよう! 永遠の愛を女神のように美しいモニカに誓おう」
望んでいた言葉以上の手紙に心が躍った。
(あぁ、これからが本当の人生よね?)
今まで忘れていたときめきも、昔のほろ苦くも甘い淡い恋の高鳴りも蘇ってきたわ。私は一気に学生時代に戻り足取りも軽く祖国に向かった。
そうして迎えた再会当日。同窓会のようなメンバーでパーティを開いた。屋敷のパーティホールにはたくさんの招待客で溢れかえるはずなのに、予定したお客様の半分も来ない。しかも、来てくれたのはすっかり変わり果てた男達ばかり。
「え? あなたがローランなの?」
かつての颯爽としていた男性がガリガリに痩せ細り枯れ木のようになっていた。
「うん。病気を患ってからすっかり痩せてしまったんだ。妻にも離縁され今は独りぼっちだ」
(つまらない愚痴はやめてよ。病人なんかに用はないわ)
「えぇーー? あなたがジャンなの? 樽のようなお腹はどうしたの?」
「あぁ、中年太りかな。お陰で歩くのがきついよ。膝も最近痛くてさ、妻からもダイエットするように言われて辛いよ」
「そうね。奥様のおっしゃることに従うべきよ。だって、太りすぎでしょう?」
私はイライラとジャンに言葉を返した。ジャンはほっそりした美少年だったのに・・・・・・面影はまるでない。
想像と全く違う男達が数人しか来ないことにうろたえたが、背後から声をかけてきた男性に気分はぐっと上向きになった。
「やぁ、お久しぶり! わたしを覚えているかな?」
男性の声は深みのある低く甘い声。背も高く引き締まった体躯に、野性味のある顔立ちは目尻の皺までセクシーに見えた。いい歳の取り方をしている見本のような男性に心はときめく。
(これよ、これ。こんなかんじの男達に囲まれて暮らすのが私の理想の第2の人生だわ)
「ごめんなさいね、どなただったかしら? これほど素敵な方を覚えていないはずはないのだけれど」
「あなたに散々気持ち悪いとバカにされていたディトリッシュですよ。当時のわたしは少し太り気味でした」
「え? あのデブのディトリッシュ? 嘘でしょう? でもこれほど素敵になったのなら仲良くしましょう。あちらで一緒にお酒でも・・・・・・」
「いいえ、今日は妻を一緒に伴っていますので長居はできません。観劇の前にちょっと寄らせていただいただけです」
その言葉と同時にディトリッシュの隣に姿を現し、腕に手をかける見知った顔。
わたしがバカにしていたマリアンヌだった。彼女も冴えない陰気な女で、わたしはよくこの二人をセットでからかっていたのだ。
今のマリアンヌはすっかり垢抜けて昔よりずっと綺麗だった。
「モニカ様にひとめ会いたくて参りましたわ。相変わらずお綺麗な髪と瞳ですわね」
そう言って彼らは帰って行く。ディトリッシュは確かルノアール侯爵家の長男だった。
(あんなにかっこよくなるんだったら、私のものにしておけば良かったかも。侯爵家だもの、お父様だって反対しなかったはずだわ。勿体ないことをした)
それからまもなく大本命のかつての初恋の男が登場・・・・・・でも、これって本当にロマンなの?
(綺麗だった銀髪は? おでこの面積がやたら広い。逞しくも引き締まった身体は? 下腹部が妙に可愛い。ポヨンとしたそのお肉はなぁに? 顔がシミだらけなのはなんで?)
「えぇっと、ロマンなの? なんて言うか、ちょっと変わったわね? 顔のシミが凄いわよ」
「は? 君はモニカ? 君こそ、そのだらしのない体型はなんだ? 腹も腕も顔もパンパンにむくんでいるよ。わたしのシミはゴルフを頻繁にするせいさ。日焼けの代償だが、健康的でアクティブな男の証明だろう?」
「失礼ね! 少しふくよかになっただけよ。女性はね、ある程度歳をとると痩せすぎは貧相に見えるの。だから敢えてこの体型を維持しているのよ。昔と違ってずいぶんデリカシーがないのね。なにがアクティブよ、そんなシミが健康的なわけないじゃない!」
(腹が立つわ。本当にむかつく! 自分だってハゲデブなくせに・・・・・・私の長年の恋心を返せ! 乙女の夢を汚すな!)
「やっぱり、私をこの屋敷に住まわせてちょうだい。ロマンは詐欺だったわ。頭はハゲ上がっていたしお腹は贅肉だらけよ。あれは私の好きだった彼じゃないのよぉおお」
私はマテオの住まう屋敷に数日かけて戻り愚痴をこぼしたのだった。
「やれやれ。わたしは母上が大嫌いだから、一緒に住みたくないのですよ。父上をいつもバカにして何かと言えば初恋の男の話をしていましたね? 父上は領地経営の才覚も優れ、新しい事業も考え出す尊敬できる男だった。確かに容姿は麗しくはなかったかもしれないが、わたしには理想の父だったんだ。母上だって贅沢できたのは父上の頑張りがあったからですよ」
「夫が妻に贅沢をさせるのは当たり前じゃないのよ。私はこんなに美しいのよ」
「いい加減に目を覚ませ!」
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