可愛くない私に価値はないのでしょう?

青空一夏

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5 ベリンダ視点

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※ここで場面変わりまして、ベリンダ視点からのお話が入ります。


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(ベリンダ視点)

 私はベリンダ・フラメル。平民には珍しい薄桃色の髪を持ち、青い瞳は澄み渡った空の色だった。家族は両親とお姉様が一人。でも、両親は私をお姫様のように扱いお姉様には冷たかった。

(そうか。お姉様は平民にはよくある茶色の髪と瞳で私のように可愛くない。可愛い私は特別なのね)

 両親は私に甘い。それは容姿が可愛いからで、より可愛く見えるように仕草や表情を鏡の前で研究し、自分なりに頑張ってみた。

 お姉様は平凡な髪色と瞳だけれど顔立ちそのものは悪くない。目は涼しげな切れ長で、形の良い唇だけれど少し薄めだ。けっして不細工ではないが、守ってあげたいと思わせるような可愛さには圧倒的に欠けた。






 私が学園に通える年齢になると、両親は私をとてもお金のかかるフィントン学園に通わせてくれると言った。

「可愛いベリンダや、よくお聞き。あなたに相応しい出会いが訪れるように、お金持ちの子女が通うフィントン学園に通わせてあげましょうね」

 お母様が甘い声で私にそう言った。

「わぁーー! 嬉しいわ。フィントン学園はフィントン男爵家が経営し、そのご子息達も通う学園でしょう? 大商人の子達も皆そこに通うのよね?」

「そうですよ。学費はとても高いけれど、ベリンダにはそこに通ってほしいわ」

「そうだとも。授業料はかなりの負担ではあるが、ベリンダはフィントン学園に通い、必ずや将来有望な男性を射止めてほしいのだよ」

(将来有望な男性を射止める? よくわからないけれど・・・・・・もちろんこの私にならできるはずよ)

 ところが滅多に物を欲しがらないお姉様がここで初めて両親におねだりをした。 

「お父様、お母様。私も普通の学園で良いので通わせてください」

(なんて我が儘なの? お姉様も学園に通ったら私が使うお金が減っちゃうじゃない!)

「ベリンダはフラメル家の希望なのよ。グレイスはお姉ちゃんなのだから我慢してちょうだい。学校なんて行かなくても女の子は大丈夫よ」
 
(そうよ。お母様の言うとおりよ)

「そうとも。グレイスはどうせそのへんのつまらない男としか結婚できないだろうから、お金のかかる教育はいらない。読み書きぐらいは家でも学べるしそれで充分だろう」
 
(ふふっ。可愛げのないお姉様はどうせ貧乏人としか結婚できないものね)

「そうよね。お姉様にお金をかけるなんてドブにお金を捨てるようなものよ。だから私がお姉様のぶんもそのお金を使って素敵な女性になりますね」

 私はお姉様にそう言って微笑んだ。これこそお金の有効な使い途だと思った。だってお姉様より私がずっと優れているのだから!





 私が学園に通いだすと、その学費の捻出の為に家からメイドとコックがいなくなった。

「お母様、使用人がいなくなったら誰が掃除をしたり料理を作るの?」

「そうねぇ・・・・・・グレイスにさせればいいわ。どうせ学園に行かないのだから暇な時間はいくらでもあるでしょう」

 とても良い思いつきだと思った。私はフィントン学園に通い、お姉様はメイドとコックの仕事をする。

「お母様、私のせいでお姉様が少し可哀想ね」

 心にもないことをわざと口にして、悲しくもないのに瞳に涙を溜めてみる。

「まぁ、ベリンダは優しいのね。でもこれは当然なのよ。人間には持って生まれた役割があるわ。ベリンダは光の道を歩き、グレイスはベリンダを影で支える。これはフラメル家の繁栄を取り戻す為に必要なことだわ」

「そうだとも、ベリンダは気にすることはない。グレイスは可愛いベリンダの役に立てることを感謝するべきなのだから」

 お父様は私の頭を撫でながらにっこりと笑う。

 お姉様は私の影、私は光。私こそは昼間の空に君臨する太陽だし、夜空に輝く星と同じ尊い存在なのね。だったらお姉様にはなにを命令しても良い。なんて楽しいの? うふふふ。
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