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新しい姉妹のかたち
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「どうしたの? テトラさん。私は、お財布が、どこにあったのかすら知りませんよ」
私が、丁寧に優しく言ってもテトラさんは、このテーブルの上に置いたんだ、と言い張るばかりで、少しも会話は成立しなかった。
ジェネシスがやって来て診察すると、悲しい診断がなされた。
「テトラさんはね、脳の萎縮が始まってしまったようだわ。これは、遺伝も大きく影響するのよ。進行を遅らせることはできるけれど、治療法はないわ」
「じゃぁ、このテトラさんは、どんどん、・・・・・・」
私は、後の言葉が言えなかった。どんどん、呆けていくの? その言葉が、悲しすぎて言えない。
「少しづつ、言葉も話せず、字も書けなくなるし、歩くこともできなくなる・・・・・・」
なんて、酷い話だろう。こんなに、いいお婆さんが・・・・・・
私は、こんな仕事は、もう嫌になってきた。介護される人の半分は、感情的で、怒りっぽい。また、その半分は、愚痴や不満を終始言って、ため息をつきっぱなしの暗い人だった。優しくて、感謝しながら生きている2割か3割の方に、尽くして喜んでもらいたいのに、病気が進行してこんなことになる。
悲しいし、なんの希望も感じられない無意味な仕事の気がした。私は、ジェネシスに受け付けに変わりたいとお願いした。
「いいわよ? お姉様は、最近、とても頑張っているし、受付の仕事も大事な仕事だわ」
そう言って、変えてくれた。私が、そこに職場が変わる、と言うと、テトラさんは悲しそうな顔をした。
度々、受付に来ては、私の顔を見て手を振る。私は、それに答えるけれど、受付の仕事で忙しい時には、手を振り返してあげることもできない。そのうち、テトラさんは姿を見せなくなった。
忙しさにかまけて、テトラさんのことを忘れていると、ジェネシスがやって来て私に手紙をくれた。
「これ、テトラさんからの手紙だって」
「えぇ? 自分で渡しに来ればいいのに。あとで、様子を見にいくね。そう言えば、もう、4ヶ月以上もテトラさんの病室に行ってなかった」
私は、笑いながらジェネシスに言うと、ジェネシスは泣きそうな顔になった。
「テトラさんは、もういないわよ。今日の朝方、亡くなったの。急だったわ。これは、病室のサイドテーブルの引き出しにしまってあったのよ? あとで、読んであげて」
そんな・・・・・・あり得ない・・・・・・
私が手紙を開けると中にはこう書かれていた。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
大好きなイザベラさん
私は、貴女がとても好きでした。
いつも、こんなお婆さんの話を聞いてくれて、優しくしてくれたね。
お世話をしてくれたのが、イザベラさんで、良かった。
いつも、来てくれる時間を心待ちにして、おしゃべりが少しでもできると、その日は一日、幸せな気分だったよ。
私は、呆けていく病気らしいから、そうなる前にこれを書きました。
ありがとう。イザベラさんが、来てくれると元気が出ると言っている人達がたくさんいることを忘れないでください
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私は、号泣した。なんで、もっと、病室に行ってあげなかったんだろう? 休憩時間だって、あったはずなのに・・・・・・
次の日、私はこの手紙を見せながらジェネシスに言った。
「私をまた前の職場に戻してもらえないかしら?」
「もちろんですとも! お姉様には主任になってもらうわ。一緒に、頑張っていこうね!」
ジェネシスは、初めて私にハグしてきたのだった。
完
私が、丁寧に優しく言ってもテトラさんは、このテーブルの上に置いたんだ、と言い張るばかりで、少しも会話は成立しなかった。
ジェネシスがやって来て診察すると、悲しい診断がなされた。
「テトラさんはね、脳の萎縮が始まってしまったようだわ。これは、遺伝も大きく影響するのよ。進行を遅らせることはできるけれど、治療法はないわ」
「じゃぁ、このテトラさんは、どんどん、・・・・・・」
私は、後の言葉が言えなかった。どんどん、呆けていくの? その言葉が、悲しすぎて言えない。
「少しづつ、言葉も話せず、字も書けなくなるし、歩くこともできなくなる・・・・・・」
なんて、酷い話だろう。こんなに、いいお婆さんが・・・・・・
私は、こんな仕事は、もう嫌になってきた。介護される人の半分は、感情的で、怒りっぽい。また、その半分は、愚痴や不満を終始言って、ため息をつきっぱなしの暗い人だった。優しくて、感謝しながら生きている2割か3割の方に、尽くして喜んでもらいたいのに、病気が進行してこんなことになる。
悲しいし、なんの希望も感じられない無意味な仕事の気がした。私は、ジェネシスに受け付けに変わりたいとお願いした。
「いいわよ? お姉様は、最近、とても頑張っているし、受付の仕事も大事な仕事だわ」
そう言って、変えてくれた。私が、そこに職場が変わる、と言うと、テトラさんは悲しそうな顔をした。
度々、受付に来ては、私の顔を見て手を振る。私は、それに答えるけれど、受付の仕事で忙しい時には、手を振り返してあげることもできない。そのうち、テトラさんは姿を見せなくなった。
忙しさにかまけて、テトラさんのことを忘れていると、ジェネシスがやって来て私に手紙をくれた。
「これ、テトラさんからの手紙だって」
「えぇ? 自分で渡しに来ればいいのに。あとで、様子を見にいくね。そう言えば、もう、4ヶ月以上もテトラさんの病室に行ってなかった」
私は、笑いながらジェネシスに言うと、ジェネシスは泣きそうな顔になった。
「テトラさんは、もういないわよ。今日の朝方、亡くなったの。急だったわ。これは、病室のサイドテーブルの引き出しにしまってあったのよ? あとで、読んであげて」
そんな・・・・・・あり得ない・・・・・・
私が手紙を開けると中にはこう書かれていた。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
大好きなイザベラさん
私は、貴女がとても好きでした。
いつも、こんなお婆さんの話を聞いてくれて、優しくしてくれたね。
お世話をしてくれたのが、イザベラさんで、良かった。
いつも、来てくれる時間を心待ちにして、おしゃべりが少しでもできると、その日は一日、幸せな気分だったよ。
私は、呆けていく病気らしいから、そうなる前にこれを書きました。
ありがとう。イザベラさんが、来てくれると元気が出ると言っている人達がたくさんいることを忘れないでください
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私は、号泣した。なんで、もっと、病室に行ってあげなかったんだろう? 休憩時間だって、あったはずなのに・・・・・・
次の日、私はこの手紙を見せながらジェネシスに言った。
「私をまた前の職場に戻してもらえないかしら?」
「もちろんですとも! お姉様には主任になってもらうわ。一緒に、頑張っていこうね!」
ジェネシスは、初めて私にハグしてきたのだった。
完
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コメントアリガトウゴザイマス~♥️オチャア((🍵´ω`*)🍡ダンゴ
٩(ˊロˋ*)وオハヨー✮ゴザマス♡
介護職の方には、本当に頭が下がります。
とても、大事なお仕事だし尊敬してます🌷
いつも、ありがと(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑ゴザイマス
今日も良い一日を💐
本日は、こちらにもお邪魔をさせていただいております。
本日も2週目を楽しんでいるのですが、1週目では見えなかった部分などに頷きつつ、今日も素敵な時間を過ごさせていただきました。
2週目でも初回同様面白いですし、様々な発見があるのですよね……っ。
またあしたも、こちらにも、お邪魔させていただきます……!
コメントアリガトウゴザイマス〜(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)っ☕ケーキィ(「🍰・ω・)「🍰
す、すいません。
お返事が遅くなってしまいました💦
いつも応援していただいて、(*ᴗˬᴗ)⁾⁾感謝♡
連載完結、お疲れさまでした。
主人公が苦しむ期間が恋愛ジャンルで、その後はヒューマンドラマって感じで恋愛要素は微量って感じで、新鮮な展開だなぁ、と思いました(^^)
お読みいただきありがとうございます(○^∇^)_🍵
(*¨)(*・・)(¨*)(・・*)ウンウン
元々、ヒューマンドラマ書きたい人なのかも
恋愛よりドロドロ系が得意みたい💦
恋愛の甘ったるいのは
あんまり思い浮かばないんですよねーー😆
作者、すでに恋に幻想をいだけない年ですしね😰
コメントをお寄せくださって感謝💐😆です。