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こんなはずじゃぁなかった(イザベラの母親視点)その2

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 私は、すぐに思い立ちワトソン伯爵家に向かった。
大きな門からは、お屋敷の頭さえ見えない。広大な敷地の中に森や湖までもあり、圧倒される財力を誇る高位貴族の屋敷に思わず身震いした。 

 あぁ、私は、これが欲しかった。平民では到底住むことができない屋敷に住める方法は、ただひとつ。娘に賭けることだった。だから、女好きなワトソン伯爵の愛人になり、自分の娘を婚約者にしてくれるように頼んだ。
流石に、嫡男は無理だと言われたが次男ならと言われて有頂天になった。

 この世界では、嫡男が病で亡くなり次男が跡を継ぐことも、けっして珍しいことではなかった。
運が良ければ、私の娘は伯爵夫人になったはずだった。
イザベラが、もっと我慢強い子なら、今頃はここの女主人だったはずなんだ!

 私は門番に要件を告げた。

「はぁ? マイロ男爵? 訪問のお約束がなければ、お取り次ぎできないですよ」

 門番ふぜいが、偉そうに私を鼻であしらった。

「なんでだい? ここの令嬢は私の子だよ? 会う権利があるはずだ」

 「あははは。あんたも、ちょっと頭がいかれているいつもの連中の一人かい?全く、奥様があの優秀なジェネシスお嬢様を養女にしてからというもの、これで35人目さ。『ジェネシスさんの、本当の母親はあたしだ!』って、言いながら金を無心に来る女ばかりだ。」

「違う! 違うよ。本当に、私が産んだ子なんだよ?」

「だったら、今更、なんの用だい? 本当の母親なら、なおさら、娘に迷惑かけちゃなんねぇはずだろ? さっさと、帰りなよ」

 なんでなのさ? 恩知らずのジェネシスめ! 産んでもらって育てられた恩はどうしたんだい!

 私は、その門から少し離れた所で、ジェネシスが乗った馬車が通らないかと待ち伏せをしていた。
手足は冷たくなり、太陽が沈みかけた頃、1台の馬車がワトソン伯爵家に入ろうとした。
すかさず、私は、その馬車の前に飛び出した。
 中から、メーガン・ワトソン前伯爵夫人とジェネシスが顔を覗かせた。

「あぁ、ジェネシス! お願いだから、助けておくれよ! お前が連れて来たアーロンのせいでマイロ家はむちゃくちゃだよ。助けておくれよ! お前が、あんな男を連れてきたせいだろう」

 私は、必死になって叫んだのだった。

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