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ハチャメチャ裁判その6 真実はこうだった?(マイロ男爵視点)

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「はぁ? なんだと? どっちの子供かわからないだと?」

 なんたることだ! 道理で、ジェネシスが可愛いと思えなかったはずだ。やはり、血が繋がっているかどうかは父親の勘でわかるものなんだな。それにしても腹が立つ。

「おい! そんなことは、寝耳に水だぞ! シャーロット、お前という奴はなんて女だ。よくも、私を今まで騙してくれたな! 売女め!」

 つい、怒りにまかせて、怒鳴ったがイザベラの顔を見て後悔した。この可愛い顔のイザベラを私は溺愛しているのだ。幼いころから『お父様! 大好き」とまとわりついてきた娘だ。愛おしいのは当然だろう?  

 「お父様! やめてよ! お母様にも、きっと事情があったのでしょう」

 あぁ、なんて優しい子だ。天使かもしれない。まぁ、このイザベラを産んでくれたんだ。これ以上、ここで騒いだらイザベラに嫌われてしまう。ここは、ぐっと我慢だな。

「とにかくだ。一番に考えるべきなのはイザベラの幸せだ。ジェネシスは、昔から賢かったが、ただそれだけが取り柄だ。ジェネシスなんてどうでもいい・・・・・・」

私は、イザベラの髪を撫でて、言った。

「イザベラ! 良かったな。マイロ男爵家の金はみんなお前のものだ。ジェネシスには一銭もいかん!」

「あぁ、それは嬉しいことですね! お義父様!」

 アーロンが、すかさず割って入ってきた。まぁ、仕方ない・・・・・・この男と結婚させて病院をますます発展させてやろう・・・・・・さて、帰るかな。

「では、私どもは帰ります。思わぬ収穫があった。ジェネシスが私の子ではないなら私の遺産は全部イザベラのものだ」

「お待ちください。では、貴方はなくなっていませんが、あえてそこを遺産というなら、そこからアーシャさんに慰謝料とメーガン・ワトソン前伯爵夫人にも慰謝料を払ってくださいね。合計すると、かなりの金額になるでしょうね。ちょっと、計算しますね。あ、そちらの年収はいかほど? あぁ、了解しました。そうしたらですねぇ・・・・・・えぇっと、ちょうど5年分ですね! うん、すっきり綺麗にだせて良かったです!」

 裁判官が、今日初めての満足の笑みを浮かべた。おい、待て! なんで、そんなに高いんだよ? そんな金額を払ったら、うちの病院は潰れちまう! 

 私は、ジェネシスを見つめた。おぉ、いいことを考えたぞ!

「おい、ジェネシス! お前を、よその男の子供と知らずに立派に育てた私に恩返しする時が今だ! 今まで、病院で働いてきた貯金があるだろう? お前のような、みみっちい子は絶対、大金を貯め込んでいるはずだ。よこしなさい」

 うん、うん。なんて、いい案だ。とても、にかなっている。

「まぁ、まぁ、なんて素敵な父親でしょう? ばかばかしい! 下らないことを言ってないで、せっせと働いて分割でもいいので払ってくださいね! すこしでも滞ればあの病院を差し押さえます。改装して、もっと立派な病院にしてジェネシスが病院長になればとても素敵です!あの周辺の住民も、その方がきっとし幸せでしょうからね?」

 メーガン・ワトソン前伯爵夫人が、嬉しそうにふざけたことを言う。ちょっと、待て! あれは、私の病院だぞ!

「そんなことをされたら、私の可愛いイザベラはどうなる? 伯爵夫人にもなれず、慰謝料も背負わされ、病院も乗っ取られたらイザベラが可哀想だとは思わないのか!」

 私は、唾をまきちらして叫びまくった。

「この裁判の前にアーシャとジェネシスさんとイザベラさんの唾液を取ったのを覚えていますか? あれで、血のつながりがあるかどうかわかるそうです。今は、なんて便利になったものですね? 貴方が飲んでいた飲み物が入っていた紙カップがないでしょう? 
マイロ男爵の唾液も、調べさせていますよ? そろそろ結果がでるはずです」

 む? 確かにないな・・・・・・私の好きな紅茶が入っていた紙カップは、ここに来る前に買ったものだ。

「お待たせしました。結果は、アーシャさんとジェネシスさんは血が繋がっています。イザベラさんはワトソン伯爵とは関係ないですね。もっと、言えばマイロ男爵とも関係ないようです。親子関係は認められませんでした」

 私は、いきなり入室してきて、結論だけ言って去っていこうとするこの忌々しい医者に文句をつけた。

「この藪医者め! そんな唾液で、なにがわかる! 私はそんな方法は知らんぞ! だいたい、ワトソン伯爵がもうこの世にいないのに、なんで血のつながりが証明できる?」


「やれやれ。子供同士でも、今は血のつながりが証明できるようになったのを知らないのですか? これだから、金儲けばかり考えて新しい医学を学ばない医者は困る! 医学は常に進歩している。学会で勉強会も開かれているでしょう? 貴方は、見たことがないがね。親睦会のパーティしか来ないですよね? では、私は忙しいので失礼しますよ」

 私は、イザベラを見て呟いた。

「あんなに可愛がっていたのに、こいつは私の娘じゃないのか・・・・・・」

 
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