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10 最終話ー魔女様のお仕置きとご褒美 (イレーヌ視点と姉(キャンディス)視点)
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ꕤ୭* イレーヌ視点
「キャンディス様! 私が悪かったです。申し訳ありませんでした。た、助けてください!」
私は魔女が怖くてキャンディス様に助けをもとめた。
「愚か者め! 主を裏切ったくせに都合が悪くなると主に助けを求めるのか? 恐ろしいほどのご都合主義だねぇ?
お前はヤキモチ焼きの妬みやさんだね? 人の幸せや繁栄を見るのが、たまらなく嫌だろう?」
魔女様が私に詰め寄ってきた。
妖艶な美女で輝くようなドレスをまとった魔女様は、恐ろしく迫力がある。
「そ、そんなことはありません。人の幸せを妬んだことなどありません! お願いです。私を罰しないでください! 魔法をかけられるのは嫌です」
私は魔女様のドレスの裾をもって懇願してみた。とにかく変な魔法をかけられて、動物にされないようにしたかった。魔女の呪いはかけた魔女にしか解けないし、蛇やカラスにされた人間もいると聞いたことがあるからだ。
こんなことになったのも、ウィルとキャンディス様のせいなのに。忌々しい! そう思ってウィルを睨み付けると、ウィルは悲しそうな顔をしている。
「イレーヌ、なぜもう少し待てなかったんだい? 私のキャンディス様に対する気持ちは恋じゃないよ。尊敬の気持ちと感謝しかなかったのに・・・・・・。プロポーズは君の誕生日にしようと思っていたんだ。指輪だって買ってあったのに・・・・・・」
ウィルはポケットから小さな指輪ケースを取り出した。そこには、キラキラと輝く大きなダイヤがはめこまれた指輪が・・・・・・
「昔、イレーヌが言ったんだよね? 大きなダイヤをはめ込んだ指輪をしたら、きっと夢みたいな気分になるかも、って。でも、とても高価だから買うのに時間がかかってしまったんだ」
え?・・・・・・そ、そんなぁーー。じゃぁ、私は・・・・・・ありもしない妄想に心を支配されてキャンディス様を裏切った愚か者ってこと? そんな・・・・・・そんな・・・・・・私がばかだった・・・・・・
「一番愚かだったのは自分だって気がついたかい? けれど、主からの信頼も恋人からの真心も、もう戻ってきはしない。さぁ、どうする?」
「命で・・・・・・私の命をもってお詫びします」
私は咄嗟に、壁にかかっていた剣をとると自分の胸に突き刺した。
「きゃぁーー! なんてこと! イレーヌ・・・・・・イレーヌ!」
「うわぁーー。イレーヌ! なんで・・・・・・こんなことを・・・・・・」
ふふっ。泣かないでよ、キャンディス様もウィルも。こうするしかないじゃない? どんなにお詫びしても、前には戻れないことをしでかしてしまった私。でも、こうして死んでしまえばもう憎まれることはない。ウィルとキャンディス様から泣いてもらえただけで本望だった。
私の胸から流れ出す血が床にひろがり大きなシミになっていく。私は力尽きて目を閉じた。これでいい・・・・・・ウィルには私の最期の残像が永遠に残る。彼のなかで私はいつまでも生き続けるのだから。
ꕤ୭*キャンディス視点
こんな終わり方ってある? 魔女様は、イレーヌの死を涼しい顔で黙って見ているだけだった。
「魔女様! こんなことって・・・・・・こんな悲しい終わり方って・・・・・・酷いです」
3人の子供達が私に駆け寄ってきて、私の手や頬を触った。
「キャンディス、泣かないでよ。大好き」
「魔女様、キャンディスは僕達に優しくしてくれたのぉ」
「そうよ。優しく身体を磨いてくれて、話しかけてもくれたわ」
「なんとかしてよぉーー。魔女様ぁーーキャンディスを泣かせないで!」
「やれやれ、うるさいねぇ」
魔女様が手を一振りするとその子供達は消えて、お皿とティーカップとティースプーンに戻った。カチャカチャいいながら食器棚に戻っていき、そのまま動かなくなった。
「あの食器達は、また夜になるとカタカタとおしゃべりをするんですか?」
「いいえ。あの子達はもう話すことはないよ」
私はがっかりした。イレーヌも可愛い子供達もいなくなった・・・・・・
「残念かい?」
「ええ。かわいい子達でした。子供の姿の時も食器の時も・・・・・・」
「ふふっ。すぐにあの3人には会えるだろう。その侍女にはもう一回やり直しの機会を与えた。上手に育てるんだよ? 私からのプレゼントだ。あぁ、ケーシーの呪いは解いてやった」
笑い声を響かせながら魔女様が帰っていったと同時に、私は吐き気に襲われたのだった。
冷たい雨が降りしきる日に、イレーヌの葬儀はひっそりと行われた。私はイレーヌの顔をじっと見つめて目に焼き付ける。幼い頃から一緒にいた侍女だ。簡単にすぐには憎めなかった。目の下と顎にあるホクロ。右手にはハート型の痣があった。
「さようなら・・・・・・イレーヌ」
ーーそれから数年後ーー
私とケーシー様には4人の子供が産まれた。女の子と男の子が二人づつでその一人の女の子には、目の下と顎にホクロがあり右手にはハート型の痣があったのだった。
私はこの子にイレーヌと名づけて、ウィルはこの子を一番可愛がっている。魔女様の寛大な処置に感謝しかない。
もちろん、この3人の子達は銀食器が子供になった時の姿にそっくりだった。
「銀食器がこのお子様達に化けているのですか? お子様達が銀食器達に化けていたのですか? いったいどっち?」
侍女のエイミーが首を傾げて私に尋ねた。
「どっちでもいいさ。うちの可愛い子たちには変わりはないさ!」
ケーシー様がにっこりと笑ったのだった。
完
「キャンディス様! 私が悪かったです。申し訳ありませんでした。た、助けてください!」
私は魔女が怖くてキャンディス様に助けをもとめた。
「愚か者め! 主を裏切ったくせに都合が悪くなると主に助けを求めるのか? 恐ろしいほどのご都合主義だねぇ?
お前はヤキモチ焼きの妬みやさんだね? 人の幸せや繁栄を見るのが、たまらなく嫌だろう?」
魔女様が私に詰め寄ってきた。
妖艶な美女で輝くようなドレスをまとった魔女様は、恐ろしく迫力がある。
「そ、そんなことはありません。人の幸せを妬んだことなどありません! お願いです。私を罰しないでください! 魔法をかけられるのは嫌です」
私は魔女様のドレスの裾をもって懇願してみた。とにかく変な魔法をかけられて、動物にされないようにしたかった。魔女の呪いはかけた魔女にしか解けないし、蛇やカラスにされた人間もいると聞いたことがあるからだ。
こんなことになったのも、ウィルとキャンディス様のせいなのに。忌々しい! そう思ってウィルを睨み付けると、ウィルは悲しそうな顔をしている。
「イレーヌ、なぜもう少し待てなかったんだい? 私のキャンディス様に対する気持ちは恋じゃないよ。尊敬の気持ちと感謝しかなかったのに・・・・・・。プロポーズは君の誕生日にしようと思っていたんだ。指輪だって買ってあったのに・・・・・・」
ウィルはポケットから小さな指輪ケースを取り出した。そこには、キラキラと輝く大きなダイヤがはめこまれた指輪が・・・・・・
「昔、イレーヌが言ったんだよね? 大きなダイヤをはめ込んだ指輪をしたら、きっと夢みたいな気分になるかも、って。でも、とても高価だから買うのに時間がかかってしまったんだ」
え?・・・・・・そ、そんなぁーー。じゃぁ、私は・・・・・・ありもしない妄想に心を支配されてキャンディス様を裏切った愚か者ってこと? そんな・・・・・・そんな・・・・・・私がばかだった・・・・・・
「一番愚かだったのは自分だって気がついたかい? けれど、主からの信頼も恋人からの真心も、もう戻ってきはしない。さぁ、どうする?」
「命で・・・・・・私の命をもってお詫びします」
私は咄嗟に、壁にかかっていた剣をとると自分の胸に突き刺した。
「きゃぁーー! なんてこと! イレーヌ・・・・・・イレーヌ!」
「うわぁーー。イレーヌ! なんで・・・・・・こんなことを・・・・・・」
ふふっ。泣かないでよ、キャンディス様もウィルも。こうするしかないじゃない? どんなにお詫びしても、前には戻れないことをしでかしてしまった私。でも、こうして死んでしまえばもう憎まれることはない。ウィルとキャンディス様から泣いてもらえただけで本望だった。
私の胸から流れ出す血が床にひろがり大きなシミになっていく。私は力尽きて目を閉じた。これでいい・・・・・・ウィルには私の最期の残像が永遠に残る。彼のなかで私はいつまでも生き続けるのだから。
ꕤ୭*キャンディス視点
こんな終わり方ってある? 魔女様は、イレーヌの死を涼しい顔で黙って見ているだけだった。
「魔女様! こんなことって・・・・・・こんな悲しい終わり方って・・・・・・酷いです」
3人の子供達が私に駆け寄ってきて、私の手や頬を触った。
「キャンディス、泣かないでよ。大好き」
「魔女様、キャンディスは僕達に優しくしてくれたのぉ」
「そうよ。優しく身体を磨いてくれて、話しかけてもくれたわ」
「なんとかしてよぉーー。魔女様ぁーーキャンディスを泣かせないで!」
「やれやれ、うるさいねぇ」
魔女様が手を一振りするとその子供達は消えて、お皿とティーカップとティースプーンに戻った。カチャカチャいいながら食器棚に戻っていき、そのまま動かなくなった。
「あの食器達は、また夜になるとカタカタとおしゃべりをするんですか?」
「いいえ。あの子達はもう話すことはないよ」
私はがっかりした。イレーヌも可愛い子供達もいなくなった・・・・・・
「残念かい?」
「ええ。かわいい子達でした。子供の姿の時も食器の時も・・・・・・」
「ふふっ。すぐにあの3人には会えるだろう。その侍女にはもう一回やり直しの機会を与えた。上手に育てるんだよ? 私からのプレゼントだ。あぁ、ケーシーの呪いは解いてやった」
笑い声を響かせながら魔女様が帰っていったと同時に、私は吐き気に襲われたのだった。
冷たい雨が降りしきる日に、イレーヌの葬儀はひっそりと行われた。私はイレーヌの顔をじっと見つめて目に焼き付ける。幼い頃から一緒にいた侍女だ。簡単にすぐには憎めなかった。目の下と顎にあるホクロ。右手にはハート型の痣があった。
「さようなら・・・・・・イレーヌ」
ーーそれから数年後ーー
私とケーシー様には4人の子供が産まれた。女の子と男の子が二人づつでその一人の女の子には、目の下と顎にホクロがあり右手にはハート型の痣があったのだった。
私はこの子にイレーヌと名づけて、ウィルはこの子を一番可愛がっている。魔女様の寛大な処置に感謝しかない。
もちろん、この3人の子達は銀食器が子供になった時の姿にそっくりだった。
「銀食器がこのお子様達に化けているのですか? お子様達が銀食器達に化けていたのですか? いったいどっち?」
侍女のエイミーが首を傾げて私に尋ねた。
「どっちでもいいさ。うちの可愛い子たちには変わりはないさ!」
ケーシー様がにっこりと笑ったのだった。
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