（完）お姉様、婚約者を取り替えて？ーあんなガリガリの幽霊みたいな男は嫌です（全10話）

5 結婚したら不幸……こんなはずじゃなかったもん（妹視点）

　私は学園を卒業すると同時にコーリー様と結婚したわ。なかなかの美男子だったから一緒にお出かけすると美男美女と騒がれた。ふっ。当然よね……

　コーリー様が執務室で仕事ばかりするから、健康の為に外にたびたび連れ出してあげた。美味しいスイーツやご馳走をたらふく食べて……お買い物もする。

　私は自分でいい妻だと思う。だって、夫に美味しい物をたくさん食べさせて散歩のために劇場に誘う。ちなみに私はどんなに食べても太らない体質だ。それなのに夫ときたら、どんどん太っていった。

　綺麗な顔は贅肉に埋もれて、まるで別人。そして、どんどん貧乏になって……おかしいなぁ。




　お姉様夫妻とは夜会のたびに会うけれど、ケーシー様は見るたびに変貌していく。ガリガリだった身体には少しづつ筋肉がつき、痩せこけた頬には赤みが差し……あろうことか……どんどん美しくなっていく。

　今のケーシー様はゾンビではなく、おとぎの国の王子様だ。本物の王子様より美しく大金持ちって……私はとんでもないお宝をお姉様に譲ったんだわ！　しまった……もったいないことしちゃった……

「お姉様、今度の週末に遊びに行ってもいい？」

　私は可愛く聞いて週末ごとにお姉様のお屋敷に泊まりがけで遊びに行くようになった。馬車で片道2時間ちょっとだけど……そこに行くと贅沢三昧できるんだもん。

　お姉様の普段着ているドレスにさえ宝石が散りばめられて、大勢の侍女にかしずかれ毎日が誕生日みたいなご馳走が並ぶ。

　あぁ、この生活は私が本当はするはずだったのにぃ。お姉様はずるいわよ。

「ケーシー様、こんにちは！　今回も遊びに来ちゃいました」

「あぁ、ごゆっくり。大事なキャンディスの妹なら私の妹も同じだよ。寛いでくれたまえ」

　銀髪にアメジストの瞳は宝石のよう。甘いなかにも精悍さを秘め、この世の男性の美点を凝縮したような美丈夫だ。誰もが見惚れるぐらいなのに……お姉様を溺愛しすぎている。

「あのぅーー。本当は私と婚約者だったのにごめんなさい。怒っていないのですかぁ？」

　私は上目遣いに聞いてみた。

「ん？　怒るどころか、感謝しているよ。キャンディスは私の女神だからね」

　はぁ？　女神？　どこに目をつけているのよ？　女神はこの私よ！

　そうだ……今度来る時には……媚薬と眠り薬を持ってきちゃえ……それで……うっふふ