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2 抱いてもらえない私

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その翌日、私は、タキスと王宮を抜け出した。お母様達(王妃と王)は、ちょうど一ヶ月の諸外国への訪問があり王宮を留守にすると言っていた直後のことだった。

月夜の綺麗な晩に、私と彼は手を取り合って駆け落ちをしたのだった。


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚



タキスが住んでいるアパートはリビングルームの他に2部屋あって、それぞれにベッドがあった。

「君は、あっちの部屋を自由に使って」

そう言われて、日当たりのいい部屋に入る。衣装が入るチェストとライティングデスクもあるから、ひとまず荷物をほどいて、ベッドに転がった。

真新しい寝具の匂いが、鼻をくすぐる。どうやら、夜は別々に眠る気まんまんなのだわ・・・


タキスは、料理も上手で、優しかった。私もタキスのために料理をしたい。だから、彼に料理を習って、キッチンで並んで料理を作った。

「いいかい? まずは、タマネギをみじん切りにしてくれ」

「うん、わかった」

私は、包丁でこまかく刻むが、これってすごく目にしみる。私はタマネギを自分で刻んだことは一度もなかった。

「絶対、これは毒だと思うわ。違う?」

私は、この恐ろしく涙がでる野菜をタキスの目の前に持ってきた。

彼は、大笑いして、水中眼鏡を持ってきた。私は、それをして、刻むのを再開した。

「んもう、これがこの野菜を切るときに必要なものだったのね? 最初から、持ってきてくれれば良かったじゃない?」

タキスは、また大笑いしていた。笑いごとじゃないわよ? この催涙ガスをだす野菜は危険だわ。

にんにくはタキスが細かく刻んで、オリーブオイルで炒めた。

「トマト缶を開けて、この鍋に入れてくれ」

「はぁーーい」

私は缶詰を開けて、タキスはローリエの葉を投げ込む。

「後は煮込んで、塩を振ってできあがりだよ」

タキスが、塩をとても高い位置から、鍋に入れる様子をうっとりと見ていた。

「とても、美味しそうね」

私は、タキスを見ながら言うと、また笑われた。



*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚



彼と向かい合って食べる食事はとても、美味しかった。

初めての夜に緊張していたけれど、私は持ってきた一番セクシーなネグリジェを着た。

タキスは、私を見ないようにして、隣の部屋で寝てしまった・・・・・・

彼と一緒にいて、私は彼の身体にふれとうとするけれど、自分からは腕ぐらいしかさわれない・・・私は、男性とは・・・つまり・・・したことはなかった。

一緒に住むようになって五日目に、私は彼の部屋に夜中に忍び込んだ。

寝ている彼の姿を見て、ベッドに跪くと彼の低い声が唐突に聞こえてくる。

「おい! 夜這いは男がするものだぞ」

「そうね・・・だけど、女性がしてもいいんじゃないかしら?」

タキスは私を見つめて、首を振った。

「君は、もっと自分を大事にするべきだ・・・俺は、一緒に住んですぐにそんな関係になる気はないよ」

私は、そんなに魅力がないのかしら。拒絶されたかたちの私は、唇をかんだ。


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚


タキスは10日目になると、態度が段々よそよそしくなり、外泊する日が多くなった。

なぜ、帰ってこないの? 私ではダメなの?

「私は、貴方が好きだわ。私たちは、本音を言いあっても良いと思わない? 夜は一緒に過ごしたいし、ここに帰ってきてほしいのよ!」

「本音かい?」 

「そうよ。どうして、帰って来ないの?」

「他に、好きな女ができたんだよ。すまないな。俺は、実は浮気者のろくでなしなんだよ」

私は、同じような会話を5回も繰り返した後に、王宮に戻る決心をした。

お父様とお母様は、まだお戻りにはなっていないはずだ。

私は荷物をまとめて、そのアパートを出たのだった。
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