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5 ギャラット殿下、暴走する(ギャラット殿下視点)

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ーステビア王国ではー


ギャラット視点


 俺はギャラット・ステビア王太子だ。緑の髪と瞳はこの世界では希少で、それだけでも俺が高貴な血筋の選民だとわかるだろう?
 俺の美貌は全ての女を虜にし、この地位は全ての男達が羨むものだ。世界は俺を中心にまわっているのだから、王太子妃になる女も騎士達も全てが俺を輝かせる為に努力するべきなのだ。

 特に王太子妃になる女は全力で俺を支えろ! 美しいのは当然。従順で俺のぶんまで努力するのは常識さ。そういう意味ではマリアンは最高で王太子妃にしてやる予定だったのだが、流行病なんてものにかかってしまい使い物にならなくなってしまった。

――マリアンに関わった時間がすっかり無駄になってしまった。これからもう一人選ぶのは大変だぞ。容姿も能力もマリアンと同等レベルの女なんてそうはいない。――


 マリアンは王太子妃に、あとの二人は測妃にするつもりだった。俺を支える女の数が多ければ多いほど、俺に回ってくる仕事量が減るからな。


――俺は王太子で偉いんだから一番楽していいんだよ。これこそが王族で王太子に生まれた特権じゃないか!――





 マリアンを国外追放して三日目のことだ。イレーヌが高熱を出し寝込み、まるでマリアンと同じような症状になったのだ。

「お前も追放だ! 病原菌をこの国にばらまくな!」
 俺はもちろんイレーヌを追放。だが、矢継ぎ早にジェシカまでが同じく感染した。迷うこと無くジェシカも追放しようとしたら宰相に止められる。

「さすがに、王太子妃候補だった3人全員を国外追放するのはやりすぎです。貴族達の反感を買うことは間違いありません。特にエビリン侯爵は娘を溺愛しており、貴族達の信望も厚いです!」

「黙れ! そんなことは知るか! 俺以外は取り替えのきく雑魚だ。エビリン侯爵が文句を言うようなら、当主などいくらでもすげ替えればいいだろう? あいつには弟が二人もいたな? 代わりに据えてやればいいのだ」

「いくらなんでも無茶です。誰も許さないでしょう」

「許さないって誰が? 法律を作れば良い。流行病にかかった者は国外追放だし、それに異を唱える者も国外追放だ。そのような内容の法律を作ればいい!」


『死に関わる重大な感染病にかかった者は誰であろうと国外追放する!』
この法律を作ったことは俺の素晴らしい功績になるだろう。


 ところが、そのわずか10日後、俺の身体に異変が生じた。寒くて堪らないし食欲は失せ、どんどん体重が落ちていった。
「ギャラット殿下は流行病です!」
宮廷医は大きな声で断言したのだった。

 
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