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2 死ねと罵倒される私
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「確かにマリアンの様子はただの体調不良というよりは悪い病気のようにも見える。宮廷医に診させよう」
ギャラット王太子殿下は私に気遣わしげな眼差しを向け心配してくださいました。なんてお優しいのでしょう。
やがて宮廷医が呼ばれ私の診察をし始めて・・・・・・宮廷医はいきなり私からあからさまに距離をとるなり叫び出しました。
「これは隣国での流行病と酷似した症状です! なんてことだ! 触ってしまった」
目の前でスプレータイプの消毒薬を手に吹きかけ、私に向かってもそれを吹き付けようとする宮廷医。
霧状になった消毒液にむせる私に、
「やはり病原菌に冒(おか)された身体ではその消毒薬は辛いでしょう? それこそがマリアン様があの流行病である証拠です!」
「お言葉ですが消毒液を吹き付けられれば誰だってむせるのでは?」
「いや、疑わしきは排除するに限ります。見立て通りの流行病であったら大変なことです!」
と、宮廷医。
「そうだ、宮廷医の言う通りだ。お前は追放だ! 追放! さっさと俺の国から出て行け! おぞましい病原菌を抱えた汚物め! お前など王太子妃になるどころかステビア王国にいることも汚らわしい!」
途端に豹変してしまったギャレット様に私はすっかりショックを受けています。
この国の医療水準はけっして高くないので未だに呪術的治療などもあり、流行病=死という概念があるとは言ってもギャレット様のその言葉は極端すぎました。
あんまりだと思います。病気になったことは私の責任でしょうか? 国を追われるほどの罪なのでしょうか?
「ハワード公爵家で2週間ほど前に開かれた夜会がありましたわね。あの場でとても親しくお話をしていた男性は隣国の出身でしたわね? マリアン様はあの方とよほど濃厚に接触なさったのでは?」
もう一人の王太子妃候補ジェシカ・エビリン侯爵令嬢は、私がまるで男性とおかしなことをしていたかのように表現なさいました。
あっという間に私は”王太子妃候補にも拘わらず、隣国の男性と情を交わし流行病に感染したふしだらな女”に仕立てあげられていきます。
「ギャラット王太子殿下! これは濡れ衣です。私は神に誓ってやましいことなどしておりません! 証拠もないのに国外追放など許されるのですか!」
私が必死にギャラット殿下にすがりつこうとすると、殿下は私を冷たくにらみつけました。
「確かなことは病原菌保持者と思われる人間がこの国にいてはいけないだけさ。証拠なんていらない。マリアンが流行病にかかっていることだけが問題なのだ!」
(あぁ、そういうこと? 病にかかった私が邪魔になり国外追放したいだけなんだ。でも……でも……)
「ギャラット殿下は私を一番愛しているとおっしゃいました。未来永劫続く愛だと」
「ほほほ。そのような言葉は私もいつでも頂いておりますわ」
「えぇ、私もです」
二人の王太子妃候補は勝ち誇った笑顔で私に真実を教えてくださったのです。
真実とは・・・・・・ギャラット王太子殿下は八方美人の浮気者だということ。平気で女性の心を弄べる男性だったのです。
「国外追放なんて・・・・・・私は今身体が弱っております。もう少し治ってから……そうでないときっと死んでしまいます」
「だったら死ねばいい。この王都ではなく隣国マスカレード国で死ね!」
「ギャラット王太子殿下。私が死んでもなんとも思わないのですか? 私はあなたを本当に愛しておりましたのに」
「しつこいな! めんどくさい女は嫌いだ。お前が死ねば皆が喜びさ。流行病が広がらなくて済むのだから」
病にかかった私には生きる権利もないのでした。
ギャラット王太子殿下は私に気遣わしげな眼差しを向け心配してくださいました。なんてお優しいのでしょう。
やがて宮廷医が呼ばれ私の診察をし始めて・・・・・・宮廷医はいきなり私からあからさまに距離をとるなり叫び出しました。
「これは隣国での流行病と酷似した症状です! なんてことだ! 触ってしまった」
目の前でスプレータイプの消毒薬を手に吹きかけ、私に向かってもそれを吹き付けようとする宮廷医。
霧状になった消毒液にむせる私に、
「やはり病原菌に冒(おか)された身体ではその消毒薬は辛いでしょう? それこそがマリアン様があの流行病である証拠です!」
「お言葉ですが消毒液を吹き付けられれば誰だってむせるのでは?」
「いや、疑わしきは排除するに限ります。見立て通りの流行病であったら大変なことです!」
と、宮廷医。
「そうだ、宮廷医の言う通りだ。お前は追放だ! 追放! さっさと俺の国から出て行け! おぞましい病原菌を抱えた汚物め! お前など王太子妃になるどころかステビア王国にいることも汚らわしい!」
途端に豹変してしまったギャレット様に私はすっかりショックを受けています。
この国の医療水準はけっして高くないので未だに呪術的治療などもあり、流行病=死という概念があるとは言ってもギャレット様のその言葉は極端すぎました。
あんまりだと思います。病気になったことは私の責任でしょうか? 国を追われるほどの罪なのでしょうか?
「ハワード公爵家で2週間ほど前に開かれた夜会がありましたわね。あの場でとても親しくお話をしていた男性は隣国の出身でしたわね? マリアン様はあの方とよほど濃厚に接触なさったのでは?」
もう一人の王太子妃候補ジェシカ・エビリン侯爵令嬢は、私がまるで男性とおかしなことをしていたかのように表現なさいました。
あっという間に私は”王太子妃候補にも拘わらず、隣国の男性と情を交わし流行病に感染したふしだらな女”に仕立てあげられていきます。
「ギャラット王太子殿下! これは濡れ衣です。私は神に誓ってやましいことなどしておりません! 証拠もないのに国外追放など許されるのですか!」
私が必死にギャラット殿下にすがりつこうとすると、殿下は私を冷たくにらみつけました。
「確かなことは病原菌保持者と思われる人間がこの国にいてはいけないだけさ。証拠なんていらない。マリアンが流行病にかかっていることだけが問題なのだ!」
(あぁ、そういうこと? 病にかかった私が邪魔になり国外追放したいだけなんだ。でも……でも……)
「ギャラット殿下は私を一番愛しているとおっしゃいました。未来永劫続く愛だと」
「ほほほ。そのような言葉は私もいつでも頂いておりますわ」
「えぇ、私もです」
二人の王太子妃候補は勝ち誇った笑顔で私に真実を教えてくださったのです。
真実とは・・・・・・ギャラット王太子殿下は八方美人の浮気者だということ。平気で女性の心を弄べる男性だったのです。
「国外追放なんて・・・・・・私は今身体が弱っております。もう少し治ってから……そうでないときっと死んでしまいます」
「だったら死ねばいい。この王都ではなく隣国マスカレード国で死ね!」
「ギャラット王太子殿下。私が死んでもなんとも思わないのですか? 私はあなたを本当に愛しておりましたのに」
「しつこいな! めんどくさい女は嫌いだ。お前が死ねば皆が喜びさ。流行病が広がらなくて済むのだから」
病にかかった私には生きる権利もないのでした。
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