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5 なぜうまくいかないの(妹視点)
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ーーなぜ、何もかもがうまくいかないのかしら? みんながお姉さまの味方をして私の味方をしてくれるのは皇太子だけだ。これじゃダメなのに。
「こっそり人を殺せる薬は無いのかしら? 毒薬で殺したとわからないような方法で普通の病気で弱っていくような薬を探しているんだけれど……」
「ふふん! あるにはあるが代償が必要だな。それは人間の極限までの苦痛の叫び。それをくれる約束をして欲しい」
今、私はお忍びの服装で市井の占い師に愚痴り思いがけない返事がもらえた。この美しい占い師は初めて見る顔でついその手に触りたくて手占いをしてもらったのだ。気分良くくつろいでいたおかげでつい本音の愚痴が漏れた私だった。
「人間の苦痛の叫びが欲しいの? それなら多分あげれると思うわ。1番憎たらしい人の苦痛の叫びをあげられると思うの。ふふふ」
「それならばこの薬をあげよう。毎日少しずつ飲ませるんだ。私は誰の苦痛でもいいからね。目の前にいるお前の苦痛の叫びでも、例えばお前がとても嫌っている姉さんの苦痛でもどちらでも良い。楽しみに待っているよ」
お姉様の話などしていないのにその占い師はそのようなことを言ったかと思うと次の瞬間には跡形もなく消えていた。手にはその男からもらった薬の包みが2袋あって、私は喜びにほくそ笑んだ。
まずは、お姉様を大事にしている皇后殿下をなんとかしないとね。皇后殿下の食事にその薬を入れられることができたのならばきっと病気になって死んでくれる。それから次に皇帝陛下に毒を盛る。この2人が消えてしまえば皇太子の思うがままの世界ができあがる。
ーーお姉様の味方ばかりする侍女達もまとめて首を切り、私だけを崇める侍女達を集めてやるんだから!
そう思いながら街中を歩き1人の貧しい少女に目をつけた。乞食のような格好で地べたに座り込んで残飯を漁っていた。
「ねぇ、あなた。おいしいものがおなかいっぱい食べたくない? 私と一緒に来れば好きなだけ食べ物が食べられるのよ」
そんな甘い言葉をその少女に言うと、私は少女の手を引いて宮廷に戻った。
その少女をうまいこと手なづけて私の思い通りに動かせる。つまりは厨房に忍び込み皇后殿下の食事に薬を入れさせたのだ。
ーーさて、これから面白いことになるはずだわ。ワクワクしてきちゃう。早くこの傲慢な皇后殿下が弱ってこないかしら?
ところが、全く弱ってこない。それどころかますます元気でお姉さまと毎早朝不思議な体操をしていた。
「これはとても健康に良い体操なんですよ。毎朝するととても気持ちがいいのです」
馬鹿みたいに手足をグルングルンして飛び跳ねたりもするその体操をなんと皇帝陛下までやりだした。
ーーお姉さまがつぶやいていた言葉が不思議だったわ。ラジオ体操ってなんだろう?
☾︎*࿐ ⋆
「いいこと? 皇后陛下のスープにはこの薬をいつもの倍の量入れてちょうだい。そして今日からは皇帝陛下のスープにも入れなさい。厨房を手伝うふりをしてうまいことやるのよ」
そそのかして少女に毒を盛らせるけれど一向に効果がない。
そしてそれからしばらくして、皇帝陛下がおっしゃった。
「ここには、恐ろしい暗殺者がいる。そいつは可愛い顔をしていて、だが心の中は卑怯で残酷だ。そしてその狡猾な女の色気に惑わされ真実が見えない愚か者もいる。わしはもうそろそろそういった者たちに裁きを与える時期だと思う」
ーーこれは誰のことかしら? まさか私のことでは無いはずだわ。厨房のコックたちはいつも忙しくしていてあの少女をとても重宝に使っていた。警戒心など微塵も感じなかったもの……
いぶかしむ私を嫌悪の眼差しで見ていたのは侍女達だった。
「私たち侍女は、いかなる時も皇帝陛下や皇后殿下のために注意をしております。厨房には必ずコックの格好した私たちが3人は紛れていることを知らなかったのですか? 皇帝陛下及び皇后殿下の食事を作る様子や盛り付ける様子はずっと私たちが交代で監視しているのですよ」
冷たい声が私を厳しく断罪しようとする。
次の瞬間あの少女が侍女達に連れてこられて床にねじ伏せられたのだった……
「こっそり人を殺せる薬は無いのかしら? 毒薬で殺したとわからないような方法で普通の病気で弱っていくような薬を探しているんだけれど……」
「ふふん! あるにはあるが代償が必要だな。それは人間の極限までの苦痛の叫び。それをくれる約束をして欲しい」
今、私はお忍びの服装で市井の占い師に愚痴り思いがけない返事がもらえた。この美しい占い師は初めて見る顔でついその手に触りたくて手占いをしてもらったのだ。気分良くくつろいでいたおかげでつい本音の愚痴が漏れた私だった。
「人間の苦痛の叫びが欲しいの? それなら多分あげれると思うわ。1番憎たらしい人の苦痛の叫びをあげられると思うの。ふふふ」
「それならばこの薬をあげよう。毎日少しずつ飲ませるんだ。私は誰の苦痛でもいいからね。目の前にいるお前の苦痛の叫びでも、例えばお前がとても嫌っている姉さんの苦痛でもどちらでも良い。楽しみに待っているよ」
お姉様の話などしていないのにその占い師はそのようなことを言ったかと思うと次の瞬間には跡形もなく消えていた。手にはその男からもらった薬の包みが2袋あって、私は喜びにほくそ笑んだ。
まずは、お姉様を大事にしている皇后殿下をなんとかしないとね。皇后殿下の食事にその薬を入れられることができたのならばきっと病気になって死んでくれる。それから次に皇帝陛下に毒を盛る。この2人が消えてしまえば皇太子の思うがままの世界ができあがる。
ーーお姉様の味方ばかりする侍女達もまとめて首を切り、私だけを崇める侍女達を集めてやるんだから!
そう思いながら街中を歩き1人の貧しい少女に目をつけた。乞食のような格好で地べたに座り込んで残飯を漁っていた。
「ねぇ、あなた。おいしいものがおなかいっぱい食べたくない? 私と一緒に来れば好きなだけ食べ物が食べられるのよ」
そんな甘い言葉をその少女に言うと、私は少女の手を引いて宮廷に戻った。
その少女をうまいこと手なづけて私の思い通りに動かせる。つまりは厨房に忍び込み皇后殿下の食事に薬を入れさせたのだ。
ーーさて、これから面白いことになるはずだわ。ワクワクしてきちゃう。早くこの傲慢な皇后殿下が弱ってこないかしら?
ところが、全く弱ってこない。それどころかますます元気でお姉さまと毎早朝不思議な体操をしていた。
「これはとても健康に良い体操なんですよ。毎朝するととても気持ちがいいのです」
馬鹿みたいに手足をグルングルンして飛び跳ねたりもするその体操をなんと皇帝陛下までやりだした。
ーーお姉さまがつぶやいていた言葉が不思議だったわ。ラジオ体操ってなんだろう?
☾︎*࿐ ⋆
「いいこと? 皇后陛下のスープにはこの薬をいつもの倍の量入れてちょうだい。そして今日からは皇帝陛下のスープにも入れなさい。厨房を手伝うふりをしてうまいことやるのよ」
そそのかして少女に毒を盛らせるけれど一向に効果がない。
そしてそれからしばらくして、皇帝陛下がおっしゃった。
「ここには、恐ろしい暗殺者がいる。そいつは可愛い顔をしていて、だが心の中は卑怯で残酷だ。そしてその狡猾な女の色気に惑わされ真実が見えない愚か者もいる。わしはもうそろそろそういった者たちに裁きを与える時期だと思う」
ーーこれは誰のことかしら? まさか私のことでは無いはずだわ。厨房のコックたちはいつも忙しくしていてあの少女をとても重宝に使っていた。警戒心など微塵も感じなかったもの……
いぶかしむ私を嫌悪の眼差しで見ていたのは侍女達だった。
「私たち侍女は、いかなる時も皇帝陛下や皇后殿下のために注意をしております。厨房には必ずコックの格好した私たちが3人は紛れていることを知らなかったのですか? 皇帝陛下及び皇后殿下の食事を作る様子や盛り付ける様子はずっと私たちが交代で監視しているのですよ」
冷たい声が私を厳しく断罪しようとする。
次の瞬間あの少女が侍女達に連れてこられて床にねじ伏せられたのだった……
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