(完結)R18「皇帝に捨てられた皇妃様」の漫画の中に入り込んじゃったあたし

青空一夏

文字の大きさ
上 下
4 / 8

4 宮廷の侍女はローズの味方

しおりを挟む
あたしは宮廷に妹と皇太子妃候補のための講義に通うけれど、とにかく妹には皇太子妃になって欲しくてたまらない。なので、あたしは今日もマリーナの荷物を持ってあげ細々と世話をするのだった。

侍女のようにマリーナの世話をするものだから自然と宮廷の侍女の方達から声をかけられる。
「本当に、ローズ様は妹思いね!」
「妹に皇太子妃になってほしいのでしていることですわ。ところでその髪型は素敵ですね。マリーナに結ってあげたいわ。このお菓子はどうやって焼くのかしら? マリーナに作ってあげようかしら」
マリーナに綺麗になってもらい、機嫌良くニコニコしてもらう。そうすれば王太子妃にマリーナが選ばれてあたしは殺されない。つまりはマリーナの幸せがあたしの安全に繋がるわけだ。
だから、宮廷侍女の方達からの情報交換は嬉しかった。宮廷の侍女は流行に敏感でいつでも最新のおしゃれ知識を持っていた。すっかり仲良くなってあたしは侍女達だけのお茶会にも呼んでもらうようになるのだった。お高くとまった貴族の令嬢達よりよほど気の合う仲間ができたようで嬉しかった。

•*¨*•.¸¸☆


マリーナは勉強も裁縫も刺繍も料理も全てが恐ろしいほどできない。
おまけに出された課題をやらなかったり講義の間に居眠りをしたりするマリーナの癖にはほとほと困っていた。今日も講師の1人に厳しく注意をされていたマリーナにあたしは優しく声をかけた。
 「屋敷に戻ったら一緒に勉強しましょうね。教えてあげるから心配しないで。いつも応援しているのよ。」

「いい加減にしてちょうだい! 心にもないこと言わないでよ。どうしてお姉様はそうやって優しいふりをするの!」
周りの講師の方々はマリーナの言葉に顔をしかめていた。

「ごめんなさい。マリーナの代わりに謝りますね。この子は少しも悪気は無いんですよ。」
そのようなやりとりを何回も周りの方々に見られ、すっかりあたしはマリーナの保護者のようになりマリーナは反抗期の娘のようになっていった。

ーーこまったなぁ。これじゃぁ周りのマリーナの評価が最低になっちゃうわ。

けれどそのようなことがあっても、
「ローズ! お前は妹のマリーナを貶める癖があるようだな。すべてマリーナから聞いているぞ。お前は周りをも味方にしてマリーナを癇癪持ちに見せている! いったい、どういうつもりなんだ?」
そのように皇太子殿下があたしを責めるから安心していた。皇太子殿下がマリーナをすっかり気に入っているなら皇太子妃にはマリーナがなるのだと思い込んでいたからだ。

ーー最初から皇太子に嫌われているのもいいことだわ! 漫画では最初はとても溺愛されていたからマリーナにのめり込んでからのギャップが気持ち悪かったもの。これで絶対選ばれないわ!


ところがどっこい! 選ばれた! 
「皇太子妃にはローズ様が決定しました」
その知らせがエメラルド侯爵家に伝えられるとマリーナはもちろんがっかりしていた様子を見せていたが、その何十倍もがっかりしているあたしがいた。

ーーあのアホ皇太子めっ! もっと我が儘を通して押し切ればいいのにっ! これはやっぱり漫画の世界の強制力なのかしら? どうあがいてもあたしは皇太子妃になりやがて皇妃になり妹にはめられて殺される運命なのかしら?

あたしはそんな不安に怯えながらも皇后殿下からお茶の招待を毎日のように受けていた。
「ローズが皇太子妃になって良かったわ。顔が可愛いだけの娘など皇子をたぶらかすことしかできないのですから」

皇后殿下はひどく怒っていたけれどそれはマリーナのことだったようだ。マリーナはそれから皇太子妃の私の専属侍女として王宮に住むようになった。これも、漫画通りでこの1年後皇帝陛下と皇后陛下が亡くなると皇太子は皇帝になり、マリーナはあたしの専属侍女から側妃になるはずなのだ。

仕組まれた罠はマリーナが王宮に住むようになってから少しづつかけられた。
「きゃぁーー。私のドレスが引き裂かれていますわ。お姉様がやったのね?」
ほらね?  茶番劇の始まりだわ。

ところが始まったこの茶番劇に宮廷の侍女達が答えた。
「マリーナ様が自分で裂いているのを見ましたよ」
「えぇ、私も見ました。自作自演って病気ですね」
実に30人もの侍女達が証言してくれ50人の侍女達は頷き、100人の侍女達が皇帝陛下にそう報告した。

あたしはいつの間にか宮廷の侍女達をすっかり味方につけてしまっていたのだった。


しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

ある国の王の後悔

黒木メイ
恋愛
ある国の王は後悔していた。 私は彼女を最後まで信じきれなかった。私は彼女を守れなかった。 小説家になろうに過去(2018)投稿した短編。 カクヨムにも掲載中。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

【完結】体目的でもいいですか?

ユユ
恋愛
王太子殿下の婚約者候補だったルーナは 冤罪をかけられて断罪された。 顔に火傷を負った狂乱の戦士に 嫁がされることになった。 ルーナは内向的な令嬢だった。 冤罪という声も届かず罪人のように嫁ぎ先へ。 だが、護送中に巨大な熊に襲われ 馬車が暴走。 ルーナは瀕死の重症を負った。 というか一度死んだ。 神の悪戯か、日本で死んだ私がルーナとなって蘇った。 * 作り話です * 完結保証付きです * R18

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

処理中です...