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4 宮廷の侍女はローズの味方
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あたしは宮廷に妹と皇太子妃候補のための講義に通うけれど、とにかく妹には皇太子妃になって欲しくてたまらない。なので、あたしは今日もマリーナの荷物を持ってあげ細々と世話をするのだった。
侍女のようにマリーナの世話をするものだから自然と宮廷の侍女の方達から声をかけられる。
「本当に、ローズ様は妹思いね!」
「妹に皇太子妃になってほしいのでしていることですわ。ところでその髪型は素敵ですね。マリーナに結ってあげたいわ。このお菓子はどうやって焼くのかしら? マリーナに作ってあげようかしら」
マリーナに綺麗になってもらい、機嫌良くニコニコしてもらう。そうすれば王太子妃にマリーナが選ばれてあたしは殺されない。つまりはマリーナの幸せがあたしの安全に繋がるわけだ。
だから、宮廷侍女の方達からの情報交換は嬉しかった。宮廷の侍女は流行に敏感でいつでも最新のおしゃれ知識を持っていた。すっかり仲良くなってあたしは侍女達だけのお茶会にも呼んでもらうようになるのだった。お高くとまった貴族の令嬢達よりよほど気の合う仲間ができたようで嬉しかった。
•*¨*•.¸¸☆
マリーナは勉強も裁縫も刺繍も料理も全てが恐ろしいほどできない。
おまけに出された課題をやらなかったり講義の間に居眠りをしたりするマリーナの癖にはほとほと困っていた。今日も講師の1人に厳しく注意をされていたマリーナにあたしは優しく声をかけた。
「屋敷に戻ったら一緒に勉強しましょうね。教えてあげるから心配しないで。いつも応援しているのよ。」
「いい加減にしてちょうだい! 心にもないこと言わないでよ。どうしてお姉様はそうやって優しいふりをするの!」
周りの講師の方々はマリーナの言葉に顔をしかめていた。
「ごめんなさい。マリーナの代わりに謝りますね。この子は少しも悪気は無いんですよ。」
そのようなやりとりを何回も周りの方々に見られ、すっかりあたしはマリーナの保護者のようになりマリーナは反抗期の娘のようになっていった。
ーーこまったなぁ。これじゃぁ周りのマリーナの評価が最低になっちゃうわ。
けれどそのようなことがあっても、
「ローズ! お前は妹のマリーナを貶める癖があるようだな。すべてマリーナから聞いているぞ。お前は周りをも味方にしてマリーナを癇癪持ちに見せている! いったい、どういうつもりなんだ?」
そのように皇太子殿下があたしを責めるから安心していた。皇太子殿下がマリーナをすっかり気に入っているなら皇太子妃にはマリーナがなるのだと思い込んでいたからだ。
ーー最初から皇太子に嫌われているのもいいことだわ! 漫画では最初はとても溺愛されていたからマリーナにのめり込んでからのギャップが気持ち悪かったもの。これで絶対選ばれないわ!
ところがどっこい! 選ばれた!
「皇太子妃にはローズ様が決定しました」
その知らせがエメラルド侯爵家に伝えられるとマリーナはもちろんがっかりしていた様子を見せていたが、その何十倍もがっかりしているあたしがいた。
ーーあのアホ皇太子めっ! もっと我が儘を通して押し切ればいいのにっ! これはやっぱり漫画の世界の強制力なのかしら? どうあがいてもあたしは皇太子妃になりやがて皇妃になり妹にはめられて殺される運命なのかしら?
あたしはそんな不安に怯えながらも皇后殿下からお茶の招待を毎日のように受けていた。
「ローズが皇太子妃になって良かったわ。顔が可愛いだけの娘など皇子をたぶらかすことしかできないのですから」
皇后殿下はひどく怒っていたけれどそれはマリーナのことだったようだ。マリーナはそれから皇太子妃の私の専属侍女として王宮に住むようになった。これも、漫画通りでこの1年後皇帝陛下と皇后陛下が亡くなると皇太子は皇帝になり、マリーナはあたしの専属侍女から側妃になるはずなのだ。
仕組まれた罠はマリーナが王宮に住むようになってから少しづつかけられた。
「きゃぁーー。私のドレスが引き裂かれていますわ。お姉様がやったのね?」
ほらね? 茶番劇の始まりだわ。
ところが始まったこの茶番劇に宮廷の侍女達が答えた。
「マリーナ様が自分で裂いているのを見ましたよ」
「えぇ、私も見ました。自作自演って病気ですね」
実に30人もの侍女達が証言してくれ50人の侍女達は頷き、100人の侍女達が皇帝陛下にそう報告した。
あたしはいつの間にか宮廷の侍女達をすっかり味方につけてしまっていたのだった。
侍女のようにマリーナの世話をするものだから自然と宮廷の侍女の方達から声をかけられる。
「本当に、ローズ様は妹思いね!」
「妹に皇太子妃になってほしいのでしていることですわ。ところでその髪型は素敵ですね。マリーナに結ってあげたいわ。このお菓子はどうやって焼くのかしら? マリーナに作ってあげようかしら」
マリーナに綺麗になってもらい、機嫌良くニコニコしてもらう。そうすれば王太子妃にマリーナが選ばれてあたしは殺されない。つまりはマリーナの幸せがあたしの安全に繋がるわけだ。
だから、宮廷侍女の方達からの情報交換は嬉しかった。宮廷の侍女は流行に敏感でいつでも最新のおしゃれ知識を持っていた。すっかり仲良くなってあたしは侍女達だけのお茶会にも呼んでもらうようになるのだった。お高くとまった貴族の令嬢達よりよほど気の合う仲間ができたようで嬉しかった。
•*¨*•.¸¸☆
マリーナは勉強も裁縫も刺繍も料理も全てが恐ろしいほどできない。
おまけに出された課題をやらなかったり講義の間に居眠りをしたりするマリーナの癖にはほとほと困っていた。今日も講師の1人に厳しく注意をされていたマリーナにあたしは優しく声をかけた。
「屋敷に戻ったら一緒に勉強しましょうね。教えてあげるから心配しないで。いつも応援しているのよ。」
「いい加減にしてちょうだい! 心にもないこと言わないでよ。どうしてお姉様はそうやって優しいふりをするの!」
周りの講師の方々はマリーナの言葉に顔をしかめていた。
「ごめんなさい。マリーナの代わりに謝りますね。この子は少しも悪気は無いんですよ。」
そのようなやりとりを何回も周りの方々に見られ、すっかりあたしはマリーナの保護者のようになりマリーナは反抗期の娘のようになっていった。
ーーこまったなぁ。これじゃぁ周りのマリーナの評価が最低になっちゃうわ。
けれどそのようなことがあっても、
「ローズ! お前は妹のマリーナを貶める癖があるようだな。すべてマリーナから聞いているぞ。お前は周りをも味方にしてマリーナを癇癪持ちに見せている! いったい、どういうつもりなんだ?」
そのように皇太子殿下があたしを責めるから安心していた。皇太子殿下がマリーナをすっかり気に入っているなら皇太子妃にはマリーナがなるのだと思い込んでいたからだ。
ーー最初から皇太子に嫌われているのもいいことだわ! 漫画では最初はとても溺愛されていたからマリーナにのめり込んでからのギャップが気持ち悪かったもの。これで絶対選ばれないわ!
ところがどっこい! 選ばれた!
「皇太子妃にはローズ様が決定しました」
その知らせがエメラルド侯爵家に伝えられるとマリーナはもちろんがっかりしていた様子を見せていたが、その何十倍もがっかりしているあたしがいた。
ーーあのアホ皇太子めっ! もっと我が儘を通して押し切ればいいのにっ! これはやっぱり漫画の世界の強制力なのかしら? どうあがいてもあたしは皇太子妃になりやがて皇妃になり妹にはめられて殺される運命なのかしら?
あたしはそんな不安に怯えながらも皇后殿下からお茶の招待を毎日のように受けていた。
「ローズが皇太子妃になって良かったわ。顔が可愛いだけの娘など皇子をたぶらかすことしかできないのですから」
皇后殿下はひどく怒っていたけれどそれはマリーナのことだったようだ。マリーナはそれから皇太子妃の私の専属侍女として王宮に住むようになった。これも、漫画通りでこの1年後皇帝陛下と皇后陛下が亡くなると皇太子は皇帝になり、マリーナはあたしの専属侍女から側妃になるはずなのだ。
仕組まれた罠はマリーナが王宮に住むようになってから少しづつかけられた。
「きゃぁーー。私のドレスが引き裂かれていますわ。お姉様がやったのね?」
ほらね? 茶番劇の始まりだわ。
ところが始まったこの茶番劇に宮廷の侍女達が答えた。
「マリーナ様が自分で裂いているのを見ましたよ」
「えぇ、私も見ました。自作自演って病気ですね」
実に30人もの侍女達が証言してくれ50人の侍女達は頷き、100人の侍女達が皇帝陛下にそう報告した。
あたしはいつの間にか宮廷の侍女達をすっかり味方につけてしまっていたのだった。
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