1 / 8
1 漫画の世界に来ちゃったよ
しおりを挟む
痛くて苦しい。お願い、この火を消して。いいえ、違うわ。もっとごうごうと燃えさかる火にしてちょうだい。
私は意識も失えないぐらいの小さな炎で少しづつ焼かれていく。一気に殺してほしいのにわざと苦痛を長引かす。
「その痛みが苦しさが貴様の罪だ! 私の正妃と言えども、私の子を宿した側妃を殺そうとした罪は重い! しかもそれはお前の妹だぞ! 妹殺し未遂の罪と皇帝の子殺し未遂の罪、加えて側妃殺し未遂の罪は万死に値する!」
かつては私を溺愛し私だけを愛すると誓った皇帝が私を睨み付けて宣言した。
「こいつは大悪党だ! よってこれは天罰である!」
私は愛する夫を見つめ涙を流すが、彼はただ冷たい眼差しで吐き捨てるように言った。
「魔女めっ! 俺を見るな! 汚らわしい!」
――そうか……私をそれほど魔女にしたいのか……無実の私をその邪悪な妹の言葉だけを信じて火あぶりの刑にしたあなたを決して私は許さない! ならば私は本物の魔女になって復讐を誓おう……ぎゃぁあぁあぁぁあああ~~!!
あたしは残酷な処刑シーンのところで漫画本を慌てて閉じた。これは友達に貸してもらった本なのだけど、「けっこう残酷だけど面白いよ。悪人がバッサバッサ復讐されていくんだよ?」とスプラッターもの大好き親友のお墨付きだった。
最初は妹とも仲が良く正妃に選ばれ夫にも愛され、それがどんどん妹の罠にはまり最期がこれ。そこから悪魔の力を借りて復活して復讐するらしいんだけれど、なんだかめちゃくちゃな設定だし復活する前の死に方が惨すぎる。
「こんなの読んじゃだめだ。心が荒むわ。もう読まないで早いとこ返そう」
その本が光っているのも知らずにあたしはそのまま朝まで眠った。
目覚めたらやたら豪華な部屋の天蓋付きのベッドに寝ているあたし。いや、これは夢でしょう? あんな微妙な本を読んだからこんな夢を見るのよねぇ。
「お姉様、お目覚めですか? 今日は皇太子妃候補を選ぶ日ですよね? 一緒に行きましょう」
部屋に入って来て抱きつく女の子の顔を見て私は固まった。
――この子、あの性悪な妹じゃない! ってことはあたし、……殺されるヒロイン?
夢よ、夢! 覚めろよ、悪夢! 立ち去れ、この性悪女!
心の中で唱えつつ思いっきり自分の頬をつねった。
「痛い! 痛いわ! しかも目の前に広がる光景は変わらない! なによぉーー!これ」
「大好きなお姉様、急いで支度したほうがいいですわ! さぁ、起きて一緒に朝食を食べましょう」
――うわっ! なに、こいつ! ニコニコして腹の中は悪魔のくせに女狐め!
あたしはこの女を絶対信用しないわよ。とにかく夢なら早く覚めてちょうだい!
私は意識も失えないぐらいの小さな炎で少しづつ焼かれていく。一気に殺してほしいのにわざと苦痛を長引かす。
「その痛みが苦しさが貴様の罪だ! 私の正妃と言えども、私の子を宿した側妃を殺そうとした罪は重い! しかもそれはお前の妹だぞ! 妹殺し未遂の罪と皇帝の子殺し未遂の罪、加えて側妃殺し未遂の罪は万死に値する!」
かつては私を溺愛し私だけを愛すると誓った皇帝が私を睨み付けて宣言した。
「こいつは大悪党だ! よってこれは天罰である!」
私は愛する夫を見つめ涙を流すが、彼はただ冷たい眼差しで吐き捨てるように言った。
「魔女めっ! 俺を見るな! 汚らわしい!」
――そうか……私をそれほど魔女にしたいのか……無実の私をその邪悪な妹の言葉だけを信じて火あぶりの刑にしたあなたを決して私は許さない! ならば私は本物の魔女になって復讐を誓おう……ぎゃぁあぁあぁぁあああ~~!!
あたしは残酷な処刑シーンのところで漫画本を慌てて閉じた。これは友達に貸してもらった本なのだけど、「けっこう残酷だけど面白いよ。悪人がバッサバッサ復讐されていくんだよ?」とスプラッターもの大好き親友のお墨付きだった。
最初は妹とも仲が良く正妃に選ばれ夫にも愛され、それがどんどん妹の罠にはまり最期がこれ。そこから悪魔の力を借りて復活して復讐するらしいんだけれど、なんだかめちゃくちゃな設定だし復活する前の死に方が惨すぎる。
「こんなの読んじゃだめだ。心が荒むわ。もう読まないで早いとこ返そう」
その本が光っているのも知らずにあたしはそのまま朝まで眠った。
目覚めたらやたら豪華な部屋の天蓋付きのベッドに寝ているあたし。いや、これは夢でしょう? あんな微妙な本を読んだからこんな夢を見るのよねぇ。
「お姉様、お目覚めですか? 今日は皇太子妃候補を選ぶ日ですよね? 一緒に行きましょう」
部屋に入って来て抱きつく女の子の顔を見て私は固まった。
――この子、あの性悪な妹じゃない! ってことはあたし、……殺されるヒロイン?
夢よ、夢! 覚めろよ、悪夢! 立ち去れ、この性悪女!
心の中で唱えつつ思いっきり自分の頬をつねった。
「痛い! 痛いわ! しかも目の前に広がる光景は変わらない! なによぉーー!これ」
「大好きなお姉様、急いで支度したほうがいいですわ! さぁ、起きて一緒に朝食を食べましょう」
――うわっ! なに、こいつ! ニコニコして腹の中は悪魔のくせに女狐め!
あたしはこの女を絶対信用しないわよ。とにかく夢なら早く覚めてちょうだい!
20
お気に入りに追加
1,473
あなたにおすすめの小説
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
婚約者と妹に毒を盛られて殺されましたが、お忘れですか?精霊の申し子である私の身に何か起これば無事に生き残れるわけないので、ざまぁないですね。
無名 -ムメイ-
恋愛
リハビリがてら書きます。
1話で完結します。
注意:低クオリティです。
王子と王女の不倫を密告してやったら、二人に処分が下った。
ほったげな
恋愛
王子と従姉の王女は凄く仲が良く、私はよく仲間外れにされていた。そんな二人が惹かれ合っていることを知ってしまい、王に密告すると……?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる