(完)身代わりの花嫁ーーお姉様、夜だけ入れ替わっていただけませんか?

青空一夏

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プロローグーー最低なハービィ伯爵

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「嫌です! やめてください! 助けて、誰かぁーー!」

「助けてくれる者などいるわけがないわい。わしはこのハービィ伯爵家の当主でお前はメイド。そのブラウンのありふれた髪と瞳で気がつかなかったが、お前は顔立ちが素晴らしく整い体つきも綺麗だなぁ。実にそそられる。いいからわしの物になれ!」

ハービィ伯爵はメイドのロザンヌに無理矢理乱暴し、愛人として離れに囲うがまもなく妊娠が判明した。
「まずいな。わしの妻は実に嫉妬深い。今でさえわしがお前に誘惑されたと必死に言い訳して大変なのに……あいつの先に妊娠なんてもってのほかだ。堕ろしてこれ以降は避妊薬を服用せよ!」

「子供に罪はありません。絶対にこの子だけは産みます!」
頑なに堕胎を拒むロザンヌにハービィ伯爵は憤った。

「生意気を言うな! お前の世話はこれ以降は誰にもさせん。離れにはメイドも侍女も寄越さないから覚悟しろ! 最低限の食べ物だけは餓死されても困るからやるがそれだけだ。反省して言うことをきくなら許してやろう」

ハービィ伯爵はすぐにロザンヌが泣きついて堕胎を承諾すると思い込んでいたが、そうはならなかった。なにも言ってこないロザンヌに怒り狂ったハービィ伯爵は、他の愛人を屋敷外に囲いだしロザンヌのことはきれいさっぱり忘れてしまった。




それからロザンヌが出産を迎えるほどの歳月が経ったある日、執事がハービィ伯爵にロザンヌの死を報告する。
「ロザンヌ様が出産に耐えられずお亡くなりになりました。栄養失調だったようですが、お子様は旦那様のプラチナブロンドとターコイズブルーの瞳を受け継ぐ美しい女の子でございます」

ロザンヌのことなどすっかり忘れていたハービィ伯爵は、
「あいつはまだ生きていたのか…… なに? 出産を一人でやったというのか? 呆れたな。まるで犬や猫だな。いらない娘だ。メイドとしてでも育てれればいいさ」
吐き捨てるようにそう言ったのである。




その2年後、ハービィ伯爵夫妻に待望の子供が誕生するとやっとロザンヌの子供に名前がつけられた。ハービィ伯爵夫妻の子供の名前エリザベートにちなんでエリと名付けられたのだ。

エリザベートの髪と瞳はハービィ伯爵とそっくりの銀髪にターコイズブルーの瞳。ロザンヌの子供であるエリも同じ髪色と瞳。ハービィ伯爵夫妻はエリをエリザベートの影として育てることに決めたのである。

「あの淫乱なロザンヌめ! 旦那様を誘惑し強引に子供を欲した女狐も役にたつことがあるわね。私の娘のエリザベートの影を産んでくれていたのには褒めてあげるわ。これ以降は、エリザベートがしなくてはならない辛いことは全てエリにさせましょう。あっははははは!」
ハービィ伯爵夫人の底意地の悪い笑い声が邸内に響き渡ったのだった。
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