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ライアン・エイゼルはルドレア女侯爵とジョセフィーヌに会う(ライアン視点)
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私が、ルドレア女侯爵の屋敷の大きな客間に通されるとエラが緊張した面持ちでソファに座っていた。エラのふっくらしていたは頬は、ほっそりしていて体つきも以前より痩せていた。
簡素なドレスに三つ編みのおさげは、どうみても娼婦には見えない。エラは僕の顔を見たが、そのままふぃっと視線を逸らし、二度と見つめてくることはなかった。
エラは30分ほどで帰っていった。しっかりとした足取りで、なにか吹っ切れた表情のエラは以前よりずっと綺麗だった。『変わったな』と私は呟いた。あの顔は、どんな状況に置かれても、頑張ってきた顔だ。私と同じだと思った。
「ライアンさん。ルドレア女侯爵とお嬢様がお待ちです」
その侍女の声で、ゆっくりと立ち上がり、深呼吸しながら歩いた。小さめの客間に通されると、ルドレア女侯爵様とジョセフィーヌ様がソファに座って待っていらっしゃった。
「ライアン! かなり立派に勤めを果たしたようだな? 嬉しい驚きだ」
ルドレア女侯爵は、満面の笑みを浮かべていた。ジョセフィーヌ様も、頷いていた。
「本日はお時間をとっていただき、誠にありがとうございます。その節は、大変、申し訳ございませんでした」
深く、頭を下げると、ルドレア女侯爵は朗らかに笑った。
「まぁ、座りなさい。ライアンは、これからどうしたい? 貴族の私兵になるつもりか? それなら紹介状を書いてやっても良い」
有り難いことに、ルドレア女侯爵はそうおっしゃってくださった。ルドレア女侯爵の紹介状があれば、どこだって雇ってくれる。
「ありがとうございます。是非、よろしくお願いします」
頭をまた深く下げたところで、ジョセフィーヌ様がおっしゃった。
「お母様。紹介状など必要ないですわ! ルドレア公爵家で雇いましょう。ライアンは、もう立派に更生しています。罪も償い、今は辺境地で活躍した立派な兵士ですよ? このような優秀な人材は当家で雇うべきです」
「えぇ? ジョセちゃんが、それを心から望んでいるの?」
ルドレア女侯爵は、戸惑って私とジョセフィーヌ様を交互に見つめた。私は、苦笑した。乱暴しようとした私を雇おうなんて冗談だろうと思ったからだ。
「いや、紹介状を書いていただくことは、図々しいと気がつきました。私は、このまま、自分の力で生きていきますよ。上司が私に言ってくれました。『これからが、お前の本当の人生だ!』と」
「ほぉーー。その上司の名前は?」
「マシューという年配の・・・・・・」
「採用しよう! マシューなら知っている。ルドレア侯爵家の私兵の精鋭はみなマシューの愛弟子だ。その言葉をライアンにかけたのなら、お墨付きはもらったようなものだ。隣の兵舎に住むか、屋敷の近くに家を借りてここに通っても良い。好きにしなさい」
ルドレア女侯爵が、いきなり採用とおっしゃった。上司のマシューさんって、そんなにすごい人とは思わなかった。その後に、ジョセフィーヌ様が意味深なことをおっしゃった。
「今日の高級娼館は、お別れ会だそうよ。三つ編みのおさげの子を送り出すんですって。今日から彼女の新しい人生が始まるのよ。その前で待っていてあげる男性がいたら素敵よね?」
ジョセフィーヌ様は私にその娼館の場所を記した紙をくれたのだった。
簡素なドレスに三つ編みのおさげは、どうみても娼婦には見えない。エラは僕の顔を見たが、そのままふぃっと視線を逸らし、二度と見つめてくることはなかった。
エラは30分ほどで帰っていった。しっかりとした足取りで、なにか吹っ切れた表情のエラは以前よりずっと綺麗だった。『変わったな』と私は呟いた。あの顔は、どんな状況に置かれても、頑張ってきた顔だ。私と同じだと思った。
「ライアンさん。ルドレア女侯爵とお嬢様がお待ちです」
その侍女の声で、ゆっくりと立ち上がり、深呼吸しながら歩いた。小さめの客間に通されると、ルドレア女侯爵様とジョセフィーヌ様がソファに座って待っていらっしゃった。
「ライアン! かなり立派に勤めを果たしたようだな? 嬉しい驚きだ」
ルドレア女侯爵は、満面の笑みを浮かべていた。ジョセフィーヌ様も、頷いていた。
「本日はお時間をとっていただき、誠にありがとうございます。その節は、大変、申し訳ございませんでした」
深く、頭を下げると、ルドレア女侯爵は朗らかに笑った。
「まぁ、座りなさい。ライアンは、これからどうしたい? 貴族の私兵になるつもりか? それなら紹介状を書いてやっても良い」
有り難いことに、ルドレア女侯爵はそうおっしゃってくださった。ルドレア女侯爵の紹介状があれば、どこだって雇ってくれる。
「ありがとうございます。是非、よろしくお願いします」
頭をまた深く下げたところで、ジョセフィーヌ様がおっしゃった。
「お母様。紹介状など必要ないですわ! ルドレア公爵家で雇いましょう。ライアンは、もう立派に更生しています。罪も償い、今は辺境地で活躍した立派な兵士ですよ? このような優秀な人材は当家で雇うべきです」
「えぇ? ジョセちゃんが、それを心から望んでいるの?」
ルドレア女侯爵は、戸惑って私とジョセフィーヌ様を交互に見つめた。私は、苦笑した。乱暴しようとした私を雇おうなんて冗談だろうと思ったからだ。
「いや、紹介状を書いていただくことは、図々しいと気がつきました。私は、このまま、自分の力で生きていきますよ。上司が私に言ってくれました。『これからが、お前の本当の人生だ!』と」
「ほぉーー。その上司の名前は?」
「マシューという年配の・・・・・・」
「採用しよう! マシューなら知っている。ルドレア侯爵家の私兵の精鋭はみなマシューの愛弟子だ。その言葉をライアンにかけたのなら、お墨付きはもらったようなものだ。隣の兵舎に住むか、屋敷の近くに家を借りてここに通っても良い。好きにしなさい」
ルドレア女侯爵が、いきなり採用とおっしゃった。上司のマシューさんって、そんなにすごい人とは思わなかった。その後に、ジョセフィーヌ様が意味深なことをおっしゃった。
「今日の高級娼館は、お別れ会だそうよ。三つ編みのおさげの子を送り出すんですって。今日から彼女の新しい人生が始まるのよ。その前で待っていてあげる男性がいたら素敵よね?」
ジョセフィーヌ様は私にその娼館の場所を記した紙をくれたのだった。
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