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侯爵令嬢の私の前に現れたくそガキ(ジョセフィーヌ視点)
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私と伯母様は、王家主催の舞踏会に招かれ、それが私の社交界デビューとなるのでした。
私にはこの一年、みっちり家庭教師が5人もつきました。そこで、令嬢としてわきまえておくべき知識を詰め込んだのです。髪やお肌も念入りに毎日侍女達からお手入れをされてきた結果、”侯爵令嬢として充分通用する”というお墨付きを伯母様からいただきましたよ。
「ルドレア侯爵家は、四大公爵家に継ぐ家柄ですからね。今日、デビューする公爵家のお嬢様はお一人だけだから、二番目に王様とお妃様にご挨拶するのですよ」
伯母様のお言葉に、頷きながら私はドレスを侍女達に着せてもらいます。今日のドレスは薄桃色でウエストの部分はリボンで飾られ裾に向かって花開くようなデザインです。ピンクパールのネックレスとブレスレット、イヤリングは伯母様からのプレゼントです。伯母様はとてもセンスがいいのです。
「まぁ、とても素敵よ。なんて綺麗なのかしら! 流石は私の娘だわ」
私は、養女になり伯母様の実子扱いになっていたのでした。ですから、伯母様のことは今ではお母様とお呼びしています。
「さぁ、参りましょうか。ジョセちゃん」
お母様は、いつもの頼りなげな表情とはまるで変わっていました。お母様とこの一年一緒にいてわかったことがいくつかあります。
ひとつは、屋敷のなかでのプライベートな空間では泣き虫さんで、コミュ障あわわ、とてもシャイな女性だということ。
もう一つは、社交界では4大公爵夫人をも凌ぐ影響力と人脈をお持ちだということ。お母様は、外ではバリバリのやり手なのです。なぜ、外と内でこうも違うのでしょうね? 伯母様はおっしゃいましたよ。
「女は誰でも女優になれるのよ。なりたい自分を思い描けばそれになれる。けれど、疲れすぎないようにオンとオフはきっちりさせるの」
なるほど、オンとオフは大事なのですね。誰でも女優になれるなんて、素敵ですよね? ならば、私は今日は生粋のお嬢様を演じましょう。侯爵令嬢という役になりきれるでしょうか。
舞踏会の大広間は、シャンデリアが輝き、大理石の床には毛足の長い赤い絨毯が敷きつめられていました。薔薇の花がそこかしこに飾られ、大きなテーブルにはさまざまなお料理が並んでいます。私と伯母様が入場すると、たくさんの貴婦人達がいらっしゃって伯母様にご挨拶をなさいます。
「「「「ルドレア侯爵様。ご機嫌よう。今日はお嬢様をお連れでいらっしゃいますのね? まぁーー、素晴らしく綺麗なお嬢様でいらっしゃいますねぇ」」」」
「えぇ、自慢の娘でしてよ」
お母様は、得意満面でおっしゃいました。私は、その方達に丁寧にご挨拶をしましたよ。皆様、とても良い方達のようです。一人、一人が私に自己紹介をしてくださいました。公爵夫人が二人、侯爵夫人が二人、伯爵夫人が三人、子爵夫人が二人いらっしゃいました。これって、いわゆる派閥のようなものでしょうか?
特に公爵夫人のお二人は伯母様とは大親友だそうで、冗談を言い合って朗らかな笑い声をあげています。
「筆頭公爵夫人のグレイスが私のところに小走りに来たら駄目じゃないの!」
「うふふ。養女に迎えたお嬢様を早く間近で見たくて。私はグレイス・ブレイ公爵夫人ですよ。ジョセフィーヌちゃんと呼んでもよくって? うちは、男の子だけだからねぇ、このような綺麗なお嬢様を養女にできて羨ましいこと! 妹のセレニーティ様のお子様でしょう?」
「えぇ、詳細は後でお話しますわ。ジョセちゃんは実子扱いの養女にしましたの。この子が次期女侯爵ですわ。皆様、お見知りおきくださいませね」
「あら、それだと公爵家の嫁には来れないかしらぁ。筆頭公爵家と筆頭侯爵家の跡継ぎが婚約したら王家から待ったがかかるわね。残念・・・・・・あぁ、でもうちの二男なんていかがかしら?」
「うふふ。いいですわねぇーー。けれど、ジョセちゃんの自由にさせてあげたいですわ」
伯母様の言葉に吸い寄せられるように、一人の青年が近づいてきました。この顔には見覚えがありますよ。
「やぁ、ジョセじゃないか? 久しぶりだね?」
この男性はエラの婚約者のライアン様だったのです。
私にはこの一年、みっちり家庭教師が5人もつきました。そこで、令嬢としてわきまえておくべき知識を詰め込んだのです。髪やお肌も念入りに毎日侍女達からお手入れをされてきた結果、”侯爵令嬢として充分通用する”というお墨付きを伯母様からいただきましたよ。
「ルドレア侯爵家は、四大公爵家に継ぐ家柄ですからね。今日、デビューする公爵家のお嬢様はお一人だけだから、二番目に王様とお妃様にご挨拶するのですよ」
伯母様のお言葉に、頷きながら私はドレスを侍女達に着せてもらいます。今日のドレスは薄桃色でウエストの部分はリボンで飾られ裾に向かって花開くようなデザインです。ピンクパールのネックレスとブレスレット、イヤリングは伯母様からのプレゼントです。伯母様はとてもセンスがいいのです。
「まぁ、とても素敵よ。なんて綺麗なのかしら! 流石は私の娘だわ」
私は、養女になり伯母様の実子扱いになっていたのでした。ですから、伯母様のことは今ではお母様とお呼びしています。
「さぁ、参りましょうか。ジョセちゃん」
お母様は、いつもの頼りなげな表情とはまるで変わっていました。お母様とこの一年一緒にいてわかったことがいくつかあります。
ひとつは、屋敷のなかでのプライベートな空間では泣き虫さんで、コミュ障あわわ、とてもシャイな女性だということ。
もう一つは、社交界では4大公爵夫人をも凌ぐ影響力と人脈をお持ちだということ。お母様は、外ではバリバリのやり手なのです。なぜ、外と内でこうも違うのでしょうね? 伯母様はおっしゃいましたよ。
「女は誰でも女優になれるのよ。なりたい自分を思い描けばそれになれる。けれど、疲れすぎないようにオンとオフはきっちりさせるの」
なるほど、オンとオフは大事なのですね。誰でも女優になれるなんて、素敵ですよね? ならば、私は今日は生粋のお嬢様を演じましょう。侯爵令嬢という役になりきれるでしょうか。
舞踏会の大広間は、シャンデリアが輝き、大理石の床には毛足の長い赤い絨毯が敷きつめられていました。薔薇の花がそこかしこに飾られ、大きなテーブルにはさまざまなお料理が並んでいます。私と伯母様が入場すると、たくさんの貴婦人達がいらっしゃって伯母様にご挨拶をなさいます。
「「「「ルドレア侯爵様。ご機嫌よう。今日はお嬢様をお連れでいらっしゃいますのね? まぁーー、素晴らしく綺麗なお嬢様でいらっしゃいますねぇ」」」」
「えぇ、自慢の娘でしてよ」
お母様は、得意満面でおっしゃいました。私は、その方達に丁寧にご挨拶をしましたよ。皆様、とても良い方達のようです。一人、一人が私に自己紹介をしてくださいました。公爵夫人が二人、侯爵夫人が二人、伯爵夫人が三人、子爵夫人が二人いらっしゃいました。これって、いわゆる派閥のようなものでしょうか?
特に公爵夫人のお二人は伯母様とは大親友だそうで、冗談を言い合って朗らかな笑い声をあげています。
「筆頭公爵夫人のグレイスが私のところに小走りに来たら駄目じゃないの!」
「うふふ。養女に迎えたお嬢様を早く間近で見たくて。私はグレイス・ブレイ公爵夫人ですよ。ジョセフィーヌちゃんと呼んでもよくって? うちは、男の子だけだからねぇ、このような綺麗なお嬢様を養女にできて羨ましいこと! 妹のセレニーティ様のお子様でしょう?」
「えぇ、詳細は後でお話しますわ。ジョセちゃんは実子扱いの養女にしましたの。この子が次期女侯爵ですわ。皆様、お見知りおきくださいませね」
「あら、それだと公爵家の嫁には来れないかしらぁ。筆頭公爵家と筆頭侯爵家の跡継ぎが婚約したら王家から待ったがかかるわね。残念・・・・・・あぁ、でもうちの二男なんていかがかしら?」
「うふふ。いいですわねぇーー。けれど、ジョセちゃんの自由にさせてあげたいですわ」
伯母様の言葉に吸い寄せられるように、一人の青年が近づいてきました。この顔には見覚えがありますよ。
「やぁ、ジョセじゃないか? 久しぶりだね?」
この男性はエラの婚約者のライアン様だったのです。
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