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11 ミア侍女長、嫌がらせをする!(ミア視点)
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侍女長ミア視点
私はソフィア様がお生まれになった頃より、ずっとその美しく成長する様を見守ってきた。
ソフィア様が兄のように慕っているハッサン様がこちらに来られてからは、このお二人がいずれは結婚なさって、ますますこのフェラーリ家が栄えていくのだろうと確信したものだ。
旦那様もそうお考えになっていたようで、私達使用人を集めて何度かそのような思いを口にされたことがある。
しかし、不慮の事故であっという間に当主夫妻が亡くなると、キザな男が頻繁に屋敷を訪れるようになった。
アメリア様が連れてくるものだから、誰もその男を追い出すことはできなかった。アメリア様とソフィア様は同じ女学校の出身で親友なのだ。
私はアメリア様があまり好きではない。アメリア様のソフィア様に向ける眼差しが、親友のそれとはかけ離れているように感じるからだ。
フェラーリ家で長年侍女長として仕えてきた私は、フェラーリ家を訪れる金目当てのたくさんの来客を見てきた。人を見る目はあるつもりだ。アメリア様はソフィア様のお金だけが目当てだ。
ソフィア様が夜会のドレスを新調する時には必ずフェラーリ家に入り浸り、ソフィア様と同じ生地でちゃっかりドレスをあつらえる。ソフィア様の宝石を当然のように借りていき、我が物顔でそれをつけた。
「アメリア様は非常識なお嬢様よね。ソフィア様はなぜあのような方とつきあうのかしら?」
「アメリア様はソフィア様の前では、猫なで声でとてもいい人を演じているからね。私達使用人には見下したような態度でいるけどさ。猫かぶりがとっても上手なのよ」
「ソフィア様のお人好しにも困るわ。アメリア様の連れてくるあのチャーリー様も胡散臭くて気持ち悪いわ・・・・・・おかしなことにならなきゃいいけど」
メイドや侍女達の噂話はよく観察した的を射たものだった。
ソフィア様に新しい友人ができると、必ずアメリア様が割って入り邪魔をするような行動をするのも腹立たしい。
「アメリア様以外の方とも、もっと交流をしてくださいませ。それにアメリア様は宝石を持ち出しすぎです!」
「まぁ、心配してくれてありがとう。でも、アメリアがヤキモチをやくのよ。かわいいでしょう? アメリアってば、私が本当に大好きなのね? 宝石のことなら気にしてないわ! 返してもらうのはいつでもいいし、ドレスだって私の新調にあわせて、その余り布で縫ってあげているだけよ」
「その余り布がいったい、いくらすると思うのですか? 仕立て代だってフェラーリ家の負担ですよ? 貧乏男爵家のアメリア様が纏っていいドレスではありません!」
「そんな悲しいことを言わないで。フェラーリ家はアメリアのドレス代なんかではびくともしないわ。私がしてあげたいのよ。アメリアとチャーリーは私の大事な人達なのよ」
ソフィア様に必死な思いで忠告すると、とても悲しそうな声で項垂れてしまった。
ソフィア様の悲しむ姿はみたくない!
ご両親を亡くされてからは食欲もなくなり痩せてしまったソフィア様。
なんとしても元気になっていただかなくては・・・・・・
だが、私は見てはいけない場面を見てしまう。アメリア様とチャーリー様の接吻現場だ。フェラーリ家の四阿の片隅で抱擁しあう二人。一瞬の出来事だったが、しっかりと見てしまう。
その後、私達の期待は裏切られソフィア様はチャーリー様を夫として迎えた。
間違っているわ!
こんなことは先代の当主夫妻が存命であったなら、許されないことだ!
その後に続くソフィア様の余命宣告にアメリア様の妊娠発覚。
アメリア様のお腹の子供はきっと・・・・・・それなのにソフィア様は何も知らずに喜んでいた。
ソフィア様にお伝えしようかしら?
あの二人の抱擁からの接吻シーンのことを
いいえ、そんなことをお話したら純真なソフィア様のお心が壊れてしまう
どうしたらいいの?
ソフィア様には真実を告げることはできない。それでも最近のアメリア様の態度には心底腹が立つ。
まるでこのフェラーリ家の当主夫人のように振る舞いだした女を私は許すことができない。
私はわざと不器用なメイド達を集めた。二人の敷きパッドを慌ただしいスケジュールで敢えて縫わせた。
針仕事の得意でないメイド達は必ずといっていいほど、考えられない失態をしでかすのはわかっていた。
最終的にチェックをするのは私の役目だが、今回はわざとチェックはしない。せめてもの嫌がらせだ。
責任はもちろん私が取るつもりだった。
翌朝、アメリア様は背中に絆創膏を貼っていたし、チャーリー様も同様だった。
「ハッサン様。メイドで針仕事の不慣れな者がいまして、もしかしたらアメリア様とチャーリー様の背中のお怪我はそのせいかもしれません。チェックをし忘れました。全て、私の責任ですのでお二人に謝って来ます。そして私を減給処分してくださいませ」
フェラーリ家の重要事項を最終的に決定するのはソフィア様だけれど、こういった細々とした屋敷での相談事はハッサン様に指示を仰ぐようになっていた。
「敷きパッドに針がささっていたかもだって? 僕はアメリアやチャーリーからは、痒くて自分で掻いた傷だと聞いている。だから、なにも言う必要はないさ。本人達がそう言っているんだ。いいかい? 絶対に言わないでほしい」
ハッサン様は愉快そうな眼差しでありながらも、厳しい口調で他言無用とおっしゃった。私はそれがきっととても重大なことなのだと思い、しっかりと頷いた。
私はほんの少しだけアメリア様達に嫌がらせができた。ソフィア様を騙して、うまい汁を吸おうとしているあいつらを排除するには、あまりにも小さな嫌がらせだけれど。こんなことしか私にはできないのが悔しかった。
私はソフィア様がお生まれになった頃より、ずっとその美しく成長する様を見守ってきた。
ソフィア様が兄のように慕っているハッサン様がこちらに来られてからは、このお二人がいずれは結婚なさって、ますますこのフェラーリ家が栄えていくのだろうと確信したものだ。
旦那様もそうお考えになっていたようで、私達使用人を集めて何度かそのような思いを口にされたことがある。
しかし、不慮の事故であっという間に当主夫妻が亡くなると、キザな男が頻繁に屋敷を訪れるようになった。
アメリア様が連れてくるものだから、誰もその男を追い出すことはできなかった。アメリア様とソフィア様は同じ女学校の出身で親友なのだ。
私はアメリア様があまり好きではない。アメリア様のソフィア様に向ける眼差しが、親友のそれとはかけ離れているように感じるからだ。
フェラーリ家で長年侍女長として仕えてきた私は、フェラーリ家を訪れる金目当てのたくさんの来客を見てきた。人を見る目はあるつもりだ。アメリア様はソフィア様のお金だけが目当てだ。
ソフィア様が夜会のドレスを新調する時には必ずフェラーリ家に入り浸り、ソフィア様と同じ生地でちゃっかりドレスをあつらえる。ソフィア様の宝石を当然のように借りていき、我が物顔でそれをつけた。
「アメリア様は非常識なお嬢様よね。ソフィア様はなぜあのような方とつきあうのかしら?」
「アメリア様はソフィア様の前では、猫なで声でとてもいい人を演じているからね。私達使用人には見下したような態度でいるけどさ。猫かぶりがとっても上手なのよ」
「ソフィア様のお人好しにも困るわ。アメリア様の連れてくるあのチャーリー様も胡散臭くて気持ち悪いわ・・・・・・おかしなことにならなきゃいいけど」
メイドや侍女達の噂話はよく観察した的を射たものだった。
ソフィア様に新しい友人ができると、必ずアメリア様が割って入り邪魔をするような行動をするのも腹立たしい。
「アメリア様以外の方とも、もっと交流をしてくださいませ。それにアメリア様は宝石を持ち出しすぎです!」
「まぁ、心配してくれてありがとう。でも、アメリアがヤキモチをやくのよ。かわいいでしょう? アメリアってば、私が本当に大好きなのね? 宝石のことなら気にしてないわ! 返してもらうのはいつでもいいし、ドレスだって私の新調にあわせて、その余り布で縫ってあげているだけよ」
「その余り布がいったい、いくらすると思うのですか? 仕立て代だってフェラーリ家の負担ですよ? 貧乏男爵家のアメリア様が纏っていいドレスではありません!」
「そんな悲しいことを言わないで。フェラーリ家はアメリアのドレス代なんかではびくともしないわ。私がしてあげたいのよ。アメリアとチャーリーは私の大事な人達なのよ」
ソフィア様に必死な思いで忠告すると、とても悲しそうな声で項垂れてしまった。
ソフィア様の悲しむ姿はみたくない!
ご両親を亡くされてからは食欲もなくなり痩せてしまったソフィア様。
なんとしても元気になっていただかなくては・・・・・・
だが、私は見てはいけない場面を見てしまう。アメリア様とチャーリー様の接吻現場だ。フェラーリ家の四阿の片隅で抱擁しあう二人。一瞬の出来事だったが、しっかりと見てしまう。
その後、私達の期待は裏切られソフィア様はチャーリー様を夫として迎えた。
間違っているわ!
こんなことは先代の当主夫妻が存命であったなら、許されないことだ!
その後に続くソフィア様の余命宣告にアメリア様の妊娠発覚。
アメリア様のお腹の子供はきっと・・・・・・それなのにソフィア様は何も知らずに喜んでいた。
ソフィア様にお伝えしようかしら?
あの二人の抱擁からの接吻シーンのことを
いいえ、そんなことをお話したら純真なソフィア様のお心が壊れてしまう
どうしたらいいの?
ソフィア様には真実を告げることはできない。それでも最近のアメリア様の態度には心底腹が立つ。
まるでこのフェラーリ家の当主夫人のように振る舞いだした女を私は許すことができない。
私はわざと不器用なメイド達を集めた。二人の敷きパッドを慌ただしいスケジュールで敢えて縫わせた。
針仕事の得意でないメイド達は必ずといっていいほど、考えられない失態をしでかすのはわかっていた。
最終的にチェックをするのは私の役目だが、今回はわざとチェックはしない。せめてもの嫌がらせだ。
責任はもちろん私が取るつもりだった。
翌朝、アメリア様は背中に絆創膏を貼っていたし、チャーリー様も同様だった。
「ハッサン様。メイドで針仕事の不慣れな者がいまして、もしかしたらアメリア様とチャーリー様の背中のお怪我はそのせいかもしれません。チェックをし忘れました。全て、私の責任ですのでお二人に謝って来ます。そして私を減給処分してくださいませ」
フェラーリ家の重要事項を最終的に決定するのはソフィア様だけれど、こういった細々とした屋敷での相談事はハッサン様に指示を仰ぐようになっていた。
「敷きパッドに針がささっていたかもだって? 僕はアメリアやチャーリーからは、痒くて自分で掻いた傷だと聞いている。だから、なにも言う必要はないさ。本人達がそう言っているんだ。いいかい? 絶対に言わないでほしい」
ハッサン様は愉快そうな眼差しでありながらも、厳しい口調で他言無用とおっしゃった。私はそれがきっととても重大なことなのだと思い、しっかりと頷いた。
私はほんの少しだけアメリア様達に嫌がらせができた。ソフィア様を騙して、うまい汁を吸おうとしているあいつらを排除するには、あまりにも小さな嫌がらせだけれど。こんなことしか私にはできないのが悔しかった。
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