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6 アメリア、思わぬ展開にほくそ笑む!(アメリア視点)
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アメリア視点
「いいえ、でもあなた達の庭園での会話を聞いてしまったの。ところどころ聞き取れなかったけれど、アメリアが子供を産みたがっているのは感じたわ。なぜチャーリーではなく私に相談してくれなかったの? 水くさいじゃない! ねぇ、チャーリーもアメリアの子供を育てることを協力してあげてちょうだいね」
私の頭は混乱した。こんなことってある? ものすごい大金が私のものになるの? お人好しのソフィアにお腹の底から笑いがこみ上げてくるのを必死で堪えた。
「あなた方は2分の1づつの割合で遺産を共有していくことになります。ソフィア様の意思で相続後の共有物分割は生涯禁止します。ソフィア様はお二人が一生仲良く協力しあって生きていくことを望んでいます」
フェラーリ家の顧問弁護士でもあるハッサンが実務的な声でそう言った。
「分割禁止? いったいどういう意味なの?」
私は法律的な知識は皆無。ハッサンの言っている意味がよくわからない。元々勉強は好きでは無いもの。
「つまりね、アメリアとチャーリーには、どんなことでもお互いに仲良く相談しあって、助け合って生きてほしいの。素敵でしょう?私達3人は強い絆で結ばれているのだから、私亡き後もどうか二人で協力しあって生きてちょうだいね。心はいつもあなた達と共にあることを忘れないで!」
ソフィアは夢見るような眼差しで言葉を紡ぎ出す。
「まさに美しき友情と愛で結ばれた素晴らしい世界ですね。要するに莫大な遺産をアメリア様とチャーリー様は引き継ぐことができますが、お金を口座から引き出すのも、不動産を処分するにも一方の承認が必ずいるということです。勝手に単独で口座から1ダーラーも引き出すことはできないという意味です」
ハッサンのわかりやすい説明に私は、やっと理解する。莫大な遺産が私のものになるけれど、自由に1ダーラーたりとも使えない、ということね。
「嫌ねぇ。ハッサン! 言い方! ものごとはなんでも相談しあって決めた方がいいに決まっているわ。それにアメリアはチャーリーの従姉妹だし気が合うし、二人ともとても仲が良いでしょう?」
天使のように微笑むソフィアに思わずたじろぐ私だったわ。
「まぁ、一方が亡くなれば単独所有になりますからね。独り占めできますよ」
ハッサンの法律家らしからぬ発言にソフィアは顔をしかめている。
「んもぉ、ハッサンは本当に言い方が駄目ね。アメリアもチャーリーもごめんなさいね。ハッサンはとても優しい思いやりのある人なのよ。でもこの通り、口が悪いだけなの」
ソフィアはハッサンを窘めながら私達に謝った。
私はチャーリーと顔を見合わせた。彼は心底失望したような顔をしていたわ。顔は青ざめ引きつっているようにも見える。
「まさか・・・・・・僕は君の夫だよ? なぜ、アメリアに盗られるんだい? 分割禁止? 一生、アメリアと共有になるのかい?」
「そうよ。あなた方はずっと一生仲良しでいられるわ。素敵でしょう? 私の最高のプレゼントを受け取ってくれるわね?」
ソフィアは満面の笑みでにっこりと微笑んだのよ。
「いや、それはおかしいよ。だってアメリアはソフィアとは親友とはいえ他人で・・・・・・」
余計なことを言い始めたチャーリー。
「チャーリー! ソフィアの優しい心を踏みにじる気? ここは感謝してお礼を言うべきところでしょう? あなたこそ夫になったばかりなのに遺産の半分の権利をもらえるのよ?」
私はチャーリーを牽制する。
――そうよ。欲張りすぎなのよ、チャーリーは。夫になったばかりで遺産を全部独り占めしようなんて図々しい! 私は学生時代からソフィアの親友として側にいたし、こうしてチャーリーも譲ってあげたじゃない。当然もらうべきお金といってもいいわ。ーー
私とチャーリーはソフィアに感謝の意を伝え、ハッサンは粛々とその遺言書の作成を進めていったのよ。
私はそれ以来ハッサンの言葉をいつも思い出すのよ。
「まぁ、一方が亡くなれば単独所有になりますからね。独り占めできますよ」
この言葉が耳から離れない・・・・・・
*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
※これは異世界のお話で現行法の日本の法律に基づくお話ではありません。日本の法律ですと共有分割禁止は5年を超えない期間を設けることができますが、生涯分割禁止ということはできなかったと思います。
あくまで異世界独自の法律に基づくと、このように遺言できるという設定ですのでご了承くださいませ。
「いいえ、でもあなた達の庭園での会話を聞いてしまったの。ところどころ聞き取れなかったけれど、アメリアが子供を産みたがっているのは感じたわ。なぜチャーリーではなく私に相談してくれなかったの? 水くさいじゃない! ねぇ、チャーリーもアメリアの子供を育てることを協力してあげてちょうだいね」
私の頭は混乱した。こんなことってある? ものすごい大金が私のものになるの? お人好しのソフィアにお腹の底から笑いがこみ上げてくるのを必死で堪えた。
「あなた方は2分の1づつの割合で遺産を共有していくことになります。ソフィア様の意思で相続後の共有物分割は生涯禁止します。ソフィア様はお二人が一生仲良く協力しあって生きていくことを望んでいます」
フェラーリ家の顧問弁護士でもあるハッサンが実務的な声でそう言った。
「分割禁止? いったいどういう意味なの?」
私は法律的な知識は皆無。ハッサンの言っている意味がよくわからない。元々勉強は好きでは無いもの。
「つまりね、アメリアとチャーリーには、どんなことでもお互いに仲良く相談しあって、助け合って生きてほしいの。素敵でしょう?私達3人は強い絆で結ばれているのだから、私亡き後もどうか二人で協力しあって生きてちょうだいね。心はいつもあなた達と共にあることを忘れないで!」
ソフィアは夢見るような眼差しで言葉を紡ぎ出す。
「まさに美しき友情と愛で結ばれた素晴らしい世界ですね。要するに莫大な遺産をアメリア様とチャーリー様は引き継ぐことができますが、お金を口座から引き出すのも、不動産を処分するにも一方の承認が必ずいるということです。勝手に単独で口座から1ダーラーも引き出すことはできないという意味です」
ハッサンのわかりやすい説明に私は、やっと理解する。莫大な遺産が私のものになるけれど、自由に1ダーラーたりとも使えない、ということね。
「嫌ねぇ。ハッサン! 言い方! ものごとはなんでも相談しあって決めた方がいいに決まっているわ。それにアメリアはチャーリーの従姉妹だし気が合うし、二人ともとても仲が良いでしょう?」
天使のように微笑むソフィアに思わずたじろぐ私だったわ。
「まぁ、一方が亡くなれば単独所有になりますからね。独り占めできますよ」
ハッサンの法律家らしからぬ発言にソフィアは顔をしかめている。
「んもぉ、ハッサンは本当に言い方が駄目ね。アメリアもチャーリーもごめんなさいね。ハッサンはとても優しい思いやりのある人なのよ。でもこの通り、口が悪いだけなの」
ソフィアはハッサンを窘めながら私達に謝った。
私はチャーリーと顔を見合わせた。彼は心底失望したような顔をしていたわ。顔は青ざめ引きつっているようにも見える。
「まさか・・・・・・僕は君の夫だよ? なぜ、アメリアに盗られるんだい? 分割禁止? 一生、アメリアと共有になるのかい?」
「そうよ。あなた方はずっと一生仲良しでいられるわ。素敵でしょう? 私の最高のプレゼントを受け取ってくれるわね?」
ソフィアは満面の笑みでにっこりと微笑んだのよ。
「いや、それはおかしいよ。だってアメリアはソフィアとは親友とはいえ他人で・・・・・・」
余計なことを言い始めたチャーリー。
「チャーリー! ソフィアの優しい心を踏みにじる気? ここは感謝してお礼を言うべきところでしょう? あなたこそ夫になったばかりなのに遺産の半分の権利をもらえるのよ?」
私はチャーリーを牽制する。
――そうよ。欲張りすぎなのよ、チャーリーは。夫になったばかりで遺産を全部独り占めしようなんて図々しい! 私は学生時代からソフィアの親友として側にいたし、こうしてチャーリーも譲ってあげたじゃない。当然もらうべきお金といってもいいわ。ーー
私とチャーリーはソフィアに感謝の意を伝え、ハッサンは粛々とその遺言書の作成を進めていったのよ。
私はそれ以来ハッサンの言葉をいつも思い出すのよ。
「まぁ、一方が亡くなれば単独所有になりますからね。独り占めできますよ」
この言葉が耳から離れない・・・・・・
*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
※これは異世界のお話で現行法の日本の法律に基づくお話ではありません。日本の法律ですと共有分割禁止は5年を超えない期間を設けることができますが、生涯分割禁止ということはできなかったと思います。
あくまで異世界独自の法律に基づくと、このように遺言できるという設定ですのでご了承くださいませ。
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