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7 運命の女性に出会えて良かった(フェルゼン視点)

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僕は生れつき不思議な肌の持ち主だった。ところどころ白すぎる肌はまだらで、痛くも痒くもなかったがそのような肌の子供は僕だけだった。医者に診せても原因も治療法もわからず両親は途方に暮れていた。

閉じ籠もってばかりいる僕に両親は同じ年頃の貴族の子供を屋敷に招待するが、奇異の目で見られて仲良くなることはなかった。人と違うことが辛かったし、自分は両親以外からは愛されない存在なんだと思っていた。

年頃になっても使用人や家庭教師達、両親等としか話すこともできず、侍女達でさえ僕の肌には怯え避けるようにしていた。『移るかも知れないし気持ち悪い』、そんな心の声がいつも聞こえてきたよ。

初めて婚約者が訪ねてきた時もそのような声が聞こえた。彼女の名前はフローレンス・ポピンズ候爵令嬢。莫大な借金があるポピンズ候爵家はリッチ候爵家の潤沢な資産が目当てだ。きっと親から嫌々この縁談を押しつけられたのだろう。終始、震えて下を向いていたから。

僕は誰とも結婚するべきではないのかもしれない・・・・・・どうせ結婚しても形だけのものになるはずだ・・・・・・全ての女性は僕の肌を気味悪がるだろうから。

ところが僕は初めてそうではない人、エリーゼに出会えたんだ。彼女はフローレンスの姉で僕を心から望んでいると言ったんだ。迷うことなく僕と手を繋ぎ僕の肌を綺麗と言ってくれたエリーゼ。

エリーゼの外見はとても美しいのだけれど、心の中はもっと美しい。僕のありのままを好ましいと思ってくれる珍しい女性はこの世で一番大切な女性になった。

「フェルゼン様は美男子だし素敵なのです。その肌だってとても綺麗ですよ。隠すことなんて必要ないわ。その美しさを堂々と見せましょう! 胸を張って堂々としていれば、誰もとやかく言いませんわ」
エリーゼの言葉は誰よりも信じられる。

勇気を出して夜会に出席した日、僕の世界は一気に色づいた。国王陛下も僕と同じような肌らしく王妃殿下の化粧品でずっと隠してきたと激白。他にも数名いて自分だけではないことがわかった。

「男でも化粧して良いと思うし、そもそも肌の色など何色でもよいわ! 要は中身が重要なのだ。これからは、肌の色も衣装に合わせて好きにすれば良いではないか?」
国王陛下はそうおっしゃって豪快に笑った。

このような展開になったのは全てエリーゼのお陰だ。エリーゼがいたからこそ僕は心の平安を得られたんだ。

それからの僕は夜会でも舞踏会でも、どこにでも気軽に行けるようになった。急に女性からモテだした僕には公爵令嬢達まで言い寄ってきたけれど、婚約者のエリーゼ以外はカボチャにしか見えない。

エリーゼは誰よりも綺麗な心の持ち主で一緒にいるだけでほんわかと気持ちが温かくなるんだ。



「僕は一生、エリーゼだけを愛するよ。誰よりも深く君だけを・・・・・・僕に生きる希望をくれた大事な女性だ。愛してるの言葉だけじゃ足りないけれど・・・・・・やっぱりこれしか言えない・・・・・・心から愛しているよ」
自分の語彙力の無さを呪いながらも必死で言葉を紡ぎ出すと、エリーゼはそっと僕を抱きしめた。

「私も心から愛しているわ! いつだって私はフェルゼン様の味方だし応援団長だし、恋人で妻で一番の理解者でいたいの」

この恐ろしくたくさんの役を一人でこなすのは大変だろうな、と思いながら僕は心の底から笑った。その朗らかな笑い声はリッチ候爵家に響き渡り、生涯消えることはなかった。リッチ侯爵家にはいつだって僕の笑い声とエリーゼの優しく穏やかな声があったのだ。もちろんもう少し先のことだが僕達の子供達がはしゃぐ声も混じって、リッチ候爵家はおおいに繁栄していった。




余談だが、僕達が結婚して2年後、義妹のフローレンスが上位の成績で花嫁学校を無事卒業した。エリーゼときたら、嬉しすぎて大号泣して大変だったんだ。とても可愛がっていた妹がお淑やかなレディになり優秀な成績で卒業したことに誰よりも喜んでいた。

そして、フローレンスへの求婚者は殺到することになるのだが・・・・・・フローレンスが選んだのは・・・・・・そしてポピンズ候爵家がどうなったかというと・・・・・・
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