9 / 9
8 カイリン視点 / バーン視点
しおりを挟む
(カイリン視点)
とても優しいバーン様に、いつの間にか恋をしていた私だ。例え愛されなくても、私はこの方となら一生添い遂げることができそう。
(愛の言葉なんてなくても我慢できる。優しい気遣いと思いやりがあれば、家族としては充分やっていけるもの)
だから、幸せな気分でバージンロードをゆっくりと歩いたわ。そして、バーン様と目が合ってにっこりと笑い合う。この方の笑顔はとても眩しい。
「愛しているよ」
思いがけない言葉が耳元でささやかれて涙で霞む祭壇。やっぱりこの言葉が欲しかった。自分の本心は誤魔化せない。
「私も愛しています」
嬉しくて恥ずかしくて声が少しだけ震えた。
お互いが両思いになっていたことがわかり、今までの景色も別世界のように輝く。温かいものがじんわりと心にひろがり、心の底から微笑むことができた。
(生まれて初めて幸せを感じたかもしれないわ)
結婚式が終わりメーガンお姉様が駆け寄ってきて、私を脅したけれど私はもうかつての私ではないのよ。
「バーン様をお姉様に譲れ、とおっしゃるのですか? そんなこと出来るわけがありません」
大きな声でバーン様にも聞こえるように言った。これぐらいは許されるわよね?
あとはバーン様に撃退してもらい、あれからお姉様はセアー伯爵家には寄りつかない。
それから半年後のこと。セアー伯爵家のサロンで、私はバーン様の隣に寄り添って座っている。
「バーン様、実家の両親達は全く私を訪ねてこなくなりましたけれど、あれからどうなったのかしら?」
「あぁ、カイリンが気にすることはひとつもないよ。あれでも一応カイリンの家族だからお金はたっぷりやっている。充分贅沢できて今頃は満足だろうさ」
「え? あれからずっとお金を援助し続けているのですか? そんなこといけません。あの人達はきりがない貪欲な性格ですから・・・・・・」
「大丈夫。長くは続かない。カイリンはなにも気にしなくていいからね。あんな家族のことを考えていたら胎教に良くないよ」
私が子供を授かったことがわかり、セアー伯爵家は喜びに包まれていた。
(これからは私も母になる。もうかつての家族のことは忘れよう。さようなら、ブランストーン男爵家)
(バーン視点)
「ブランストーン男爵家には金を好きなだけあげればいいさ。あの母親には高給食材をたっぷり送りつけろ。あの父親には酒をたっぷり。怠惰な者達の命は長くは続かない。あぁ、あのメーガンには話題のスイーツを毎日届けてあげるといいと思う」
「はい、かしこまりました。媚薬と食欲増進剤、どちらを盛りますか?」
「うん、増進剤でいいだろう。醜く太って最後は動けなくなって足から腐って死ねば良い」
「かしこまりました。では、そのように」
セアー伯爵家の家令は無表情でうなづいた。
カイリンを虐げたお礼は充分しよう。もちろん優しいカイリンの手前、あいつらを飢えさせるとか貧乏暮らしをさせるのはまずいし、世間体もある。
だが、こちらが充分な金を援助してあいつらが自らの不摂生で死ぬのなら、それはあいつらの評判をますます落とすし愚か者の証明にもなる。
カイリンは今では私の最愛の妻だ。わたしの最愛を虐げた罪は重い。
わたしはバーン・セアー。女嫌いで有名だった男だが、今は妻を溺愛しすぎる夫として有名になっている。
だから、せいぜいカイリンの家族を大事にするさ。わたしなりのやり方でな。
完
とても優しいバーン様に、いつの間にか恋をしていた私だ。例え愛されなくても、私はこの方となら一生添い遂げることができそう。
(愛の言葉なんてなくても我慢できる。優しい気遣いと思いやりがあれば、家族としては充分やっていけるもの)
だから、幸せな気分でバージンロードをゆっくりと歩いたわ。そして、バーン様と目が合ってにっこりと笑い合う。この方の笑顔はとても眩しい。
「愛しているよ」
思いがけない言葉が耳元でささやかれて涙で霞む祭壇。やっぱりこの言葉が欲しかった。自分の本心は誤魔化せない。
「私も愛しています」
嬉しくて恥ずかしくて声が少しだけ震えた。
お互いが両思いになっていたことがわかり、今までの景色も別世界のように輝く。温かいものがじんわりと心にひろがり、心の底から微笑むことができた。
(生まれて初めて幸せを感じたかもしれないわ)
結婚式が終わりメーガンお姉様が駆け寄ってきて、私を脅したけれど私はもうかつての私ではないのよ。
「バーン様をお姉様に譲れ、とおっしゃるのですか? そんなこと出来るわけがありません」
大きな声でバーン様にも聞こえるように言った。これぐらいは許されるわよね?
あとはバーン様に撃退してもらい、あれからお姉様はセアー伯爵家には寄りつかない。
それから半年後のこと。セアー伯爵家のサロンで、私はバーン様の隣に寄り添って座っている。
「バーン様、実家の両親達は全く私を訪ねてこなくなりましたけれど、あれからどうなったのかしら?」
「あぁ、カイリンが気にすることはひとつもないよ。あれでも一応カイリンの家族だからお金はたっぷりやっている。充分贅沢できて今頃は満足だろうさ」
「え? あれからずっとお金を援助し続けているのですか? そんなこといけません。あの人達はきりがない貪欲な性格ですから・・・・・・」
「大丈夫。長くは続かない。カイリンはなにも気にしなくていいからね。あんな家族のことを考えていたら胎教に良くないよ」
私が子供を授かったことがわかり、セアー伯爵家は喜びに包まれていた。
(これからは私も母になる。もうかつての家族のことは忘れよう。さようなら、ブランストーン男爵家)
(バーン視点)
「ブランストーン男爵家には金を好きなだけあげればいいさ。あの母親には高給食材をたっぷり送りつけろ。あの父親には酒をたっぷり。怠惰な者達の命は長くは続かない。あぁ、あのメーガンには話題のスイーツを毎日届けてあげるといいと思う」
「はい、かしこまりました。媚薬と食欲増進剤、どちらを盛りますか?」
「うん、増進剤でいいだろう。醜く太って最後は動けなくなって足から腐って死ねば良い」
「かしこまりました。では、そのように」
セアー伯爵家の家令は無表情でうなづいた。
カイリンを虐げたお礼は充分しよう。もちろん優しいカイリンの手前、あいつらを飢えさせるとか貧乏暮らしをさせるのはまずいし、世間体もある。
だが、こちらが充分な金を援助してあいつらが自らの不摂生で死ぬのなら、それはあいつらの評判をますます落とすし愚か者の証明にもなる。
カイリンは今では私の最愛の妻だ。わたしの最愛を虐げた罪は重い。
わたしはバーン・セアー。女嫌いで有名だった男だが、今は妻を溺愛しすぎる夫として有名になっている。
だから、せいぜいカイリンの家族を大事にするさ。わたしなりのやり方でな。
完
20
お気に入りに追加
669
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(26件)
あなたにおすすめの小説
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
【完結済み】「こんなことなら、婚約破棄させてもらう!」幼い頃からの婚約者に、浮気を疑われた私。しかし私の前に、事の真相を知る人物が現れて……
オコムラナオ
恋愛
(完結済みの作品を、複数話に分けて投稿します。最後まで書きあがっておりますので、安心してお読みください)
婚約者であるアルフレッド・アルバートン侯爵令息から、婚約破棄を言い渡されたローズ。
原因は、二人で一緒に行ったダンスパーティーで、ローズが他の男と踊っていたから。
アルフレッドはローズが以前から様子がおかしかったことを指摘し、自分以外の男に浮気心を持っているのだと責め立てる。
ローズが事情を説明しようとしても、彼は頑なに耳を貸さない。
「こんなことなら、婚約破棄させてもらう!」
彼がこう宣言したとき、意外なところからローズに救いの手が差し伸べられる。
明かされたのはローズの潔白だけではなく、思いもよらない事実だった……
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
【完結】昨日までの愛は虚像でした
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
公爵令息レアンドロに体を暴かれてしまった侯爵令嬢ファティマは、純潔でなくなったことを理由に、レアンドロの双子の兄イグナシオとの婚約を解消されてしまう。その結果、元凶のレアンドロと結婚する羽目になったが、そこで知らされた元婚約者イグナシオの真の姿に慄然とする。
手のひら返しが凄すぎて引くんですけど
マルローネ
恋愛
男爵令嬢のエリナは侯爵令息のクラウドに婚約破棄をされてしまった。
地位が低すぎるというのがその理由だったのだ。
悲しみに暮れたエリナは新しい恋に生きることを誓った。
新しい相手も見つかった時、侯爵令息のクラウドが急に手のひらを返し始める。
その理由はエリナの父親の地位が急に上がったのが原因だったのだが……。
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
『白い結婚』が好条件だったから即断即決するしかないよね!
三谷朱花
恋愛
私、エヴァはずっともう親がいないものだと思っていた。亡くなった母方の祖父母に育てられていたからだ。だけど、年頃になった私を迎えに来たのは、ピョルリング伯爵だった。どうやら私はピョルリング伯爵の庶子らしい。そしてどうやら、政治の道具になるために、王都に連れていかれるらしい。そして、連れていかれた先には、年若いタッペル公爵がいた。どうやら、タッペル公爵は結婚したい理由があるらしい。タッペル公爵の出した条件に、私はすぐに飛びついた。だって、とてもいい条件だったから!
家に代々伝わる髪色を受け継いでいないからとずっと虐げられてきていたのですが……。
四季
恋愛
メリア・オフトレスは三姉妹の真ん中。
しかしオフトレス家に代々伝わる緑髪を受け継がず生まれたために母や姉妹らから虐げられていた。
だがある時、トレットという青年が現れて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
うっわ〜(・・;) 酷い家族
確かに姑とは相性もよくなく
そこに産まれた自分の子が
毛嫌いする姑にソックリ
だからカワイイと思えない
は、意外と実際にある話ですよね
それにしても
バーンさまの所業は
さすが頭の良い商売人😅
自業自得にもっていくあたり
これからも繁栄の未来しか
みえません💦
バーン様のご両親は
お祖母様をよく知っていたのでしょうね
そして、孫娘の1人がそっくりなことも✌️
スッキリしました!!!
感想ありがとうございます!
あっは😅 ですよねーー
そうそう
実際にもありそうなお話です
自業自得という結末が大多数になっております😁
スッキリしていただき良かったです
こちらも読んでくださってありがとうございます!
嬉しいぃーー💃🏻💖✨
あ、名前間違えました(^_^;)
あ、大丈夫ですーー
名前なんて作者自身が何度も間違えておりますのでぇーー😁
たまにヒロインの名前もど忘れしますもん💦
カイリンが虐げられて心配でしたが、ブランストーン伯爵夫人は良いひとみたいで、幸せになれそうか予感が(*ˊᵕˋ*)
感想ありがとうございます!
あれ💦
返信が抜けていたみたい
今気がつきました😲
ひゃーー、ごめんなさい、すみません、申し訳ありません🙇🏻♀️🙇🏻♀️🙇🏻♀️
はい、幸せになると思いまぁす
超お返事が遅くなって🙇♀️🙇♀️🙇♀️