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 私がお金のことばかり気になるのは、ブランストーン男爵家の家計を任されていた名残だ。頼りない両親の代わりになんとか倹約しようとしたけれど、家族の我が儘は治らなくてまるで役に立てなかった。

 ブランストーン男爵家の事業はお父様が運営していたけれど、業績は悪くほとんどお金は入ってこない。領地からの税収しかないのに、思うがままお金を使う家族を管理することは難しかった。

 だから、このセアー伯爵家では少しでもお役に立てれば良いな、と思っている。せめて自分に関するお金はしっかり管理して迷惑をかけたくない。

 愛はなくても粗末には扱わない、とバーン様はおっしゃった。結婚してもセアー伯爵夫人として尊重してくださるのなら、身に余る光栄だと思った。

 私のように容姿も美しくなく、令嬢らしい趣味も持たないおかしな娘が愛されるわけがないわ。お母様に嫌われるのもお父様に疎まれメーガンお姉様に蔑まれるのも、私が普通の令嬢とは違うからだもの。

「ジアンナお祖母様にそっくりよ。お金のことばかり気にする女の子は誰からも愛されませんよ」

 お母様がいつも私に言い続けた言葉だ。








 商人達にドレスや仕立てる際の費用も聞き、なるべくお得な組み合わせにした。セアー伯爵家に恥をかかせない程度のぎりぎりの値段。華美すぎるドレスや宝石を好まない私は、飾りの少ないドレスと小さめの宝石だけれど上品な物を選ぶ。

 仕上がったドレスと宝石はバーン様にとても褒められた。

「ずいぶん妥当な金額のドレスに仕上がったな。デザインも悪くないし上品だ。高価すぎず、かといって安っぽすぎてバカにもされない。なかなかやるじゃないか? 宝石もまぁまぁだ」

 バーン様は満足そうに私に声をかけてくださった。

「ありがとうございます!」

 初めて褒められた子供のように私は破顔する。だって、とても嬉しいのだもの。これはお世辞ではなく本当に感心してくださっていることがわかるから。

 バーン様は私が金額のことをあからさまに商人に聞いても笑っていた。このような時のお父様は、「はしたない!」と、顔を歪めていたのに。

 お金のことをあまり言うのはレディらしくないし、貴族にとっては下品という価値観のあるこの国。ジアンナお祖母様に似ていると言われる私にはこの価値観は理解できなかった。

 だからこのような私を楽しそうに笑って見ていてくださるバーン様の側にいるとホッとする。ここにいてもいいんだ、とそう思えて嬉しかった。

(バーン様とならきっと楽しく暮らせそう。愛なんてなくても大丈夫よ)  
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