(完結)私が貴方から卒業する時

青空一夏

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(モンタナ視点)

ペシオ公爵とわたしの父上は学園時代からの親友だった。だからよくペシオ公爵はドロレ公爵家にいらっしゃった。その度にまだ幼い私に、「モンタナ君が娘の婚約者になってくれたら嬉しいのになぁ」と、おっしゃった。
父上もそのようにおっしゃっていたので、きっといずれそうなるのだろう、子供心にそう思っていた。

わたしも父上と一緒にペシオ公爵家に遊びに行くようになったが、引っ込み思案のソレンヌ嬢はたまにしか部屋から出てこなかった。わたしのようなタイプが好きではないのかもしれない。

たまに話せた時のふっくらとした頬に浮かぶエクボや、読書好きな一面はわたしには好ましいものだったけれど、それからずっと会うことはなかった。




「悪魔に捕まってしまったよ。ソレンヌは第2王子に恋をしてしまった。王家のお茶会など行かせなければ良かった」
ある日、焦燥仕切った様子でドロレ公爵家にいらっしゃったペシオ公爵が父上に愚痴った。

娘を溺愛しているペシオ公爵にとっては娘の希望が最優先され、やがてソレンヌ嬢はランディ殿下と婚約した。


第2王子殿下は踊り子の側妃が産んだ王子だ。ソレンヌ嬢にとってはメリットよりデメリットしかないと思う。国王陛下からは疎まれ、王位継承権はほとんどないのにプライドだけは高い心の歪んだ男。

それでも、ソレンヌ嬢はランディ殿下の為に頑張って努力をする。ひたむきなその様子には心を動かされる。どうしてそのひたむきさをわたしに向けてくれなかったのだろう? わたしなら全力で受け止めたのに。

「ランディ様はペシオ公爵家を自分の財布と思っている。王家は体よく厄介者をペシオ公爵家に押しつけた気持ちでいるのだろう。学園に通う馬車までペシオ公爵家が負担しているよ。それでも娘が幸せならそれでいい。だが・・・・・・」
 ペシオ公爵の嘆きはそのままわたしの苦悩に変わった。

娘の幸せを願う両親の気持ちをソレンヌ嬢は考えたことがあるのだろうか?
 
わたしは気になる女の子が不幸になるのを黙って見ているわけにはいかない。 

ソレンヌ嬢、君はもうそろそろ目を覚ますべきなんだよ。わたしが気づかせてあげる。その為には憎まれても構わないよ。

ランディ殿下からの卒業。君の幸せな未来の為に・・・・・・これは絶対に必要な儀式だ。


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