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18 元カスコイン伯爵(カスパー第二王子殿下)視点
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「まさか・・・・・・俺が誰だか知らないくせに適当なことを言うなよ」
「処刑された第二王子殿下にそっくりな方ですな。世の中には三人はそっくりな人間がいる、と聞きますがこれほど似ていることはそうはない。お気の毒ですね。よりによって、あの方に似ているなんて」
俺はここでも否定されるのか? どこに行っても、神の家でも煙たがられる。
「かっこいいね、おにいちゃん! ぼくはうらやましいなぁーー」
俺が横たわるベッドに寄って来て、にこにこと微笑みかけた子供の目は輝いていた。彼の名前はヴィドで、今年で六歳になるという。
「俺は歴史に名を残すほどの極悪人にそっくりなんだぞ。なにが羨ましいんだよ」
俺をそう言いながら苦笑した。
その教会では男手も足りなく神父は老人だった為、力の必要な仕事を恩返しのつもりで手伝った。ヴィドは身体が小さく細い。少しでも疲れると熱をだすような子供だった。
「あの子は赤子の頃に教会の前に捨てられていたのですよ。その時から病弱でそう長くは生きられないでしょう」
俺は産まれた時から丈夫で熱など出したこともない。今でも鍛えた身体は少しも衰えていない。
「ヴィドは俺に懐いて離れないんだよ」
「憧れなんですよ。身近にあなたのような騎士様に見える男性はいませんでしたからね」
俺はヴィドにつきまとわれて正直迷惑だった。子供なんて好きじゃない。でも、あれほど信頼しきった眼差しを向けられると、追い払うこともできなかった。
❁.。.:*:.。.✽.
ある日、大きな地震が起きてヴィドが本棚の下敷きになった。片足が押しつぶされ、床に血の海ができる。神父様は涙を流しながら奇跡を祈った。
「ぼく、しあわせだったよ・・・・・・ここでは・・・・・・みんながやさしかったもん」
ちょっと待ってくれよ。これほど純真な汚れのない子が死ぬのはおかしいだろう? 俺は急ぎ清潔な布で足を縛り止血をし、王宮に馬を走らせた。
「アンジェリーナ様にお会いしたいのです。王太子妃様に! お願いします!」
王宮の門をたたき門番を脅し、殺される覚悟で兄上を呼んだ。騎士達に囲まれ剣をつきつけられた時に、それを奪い取り暴れながらも、アンジェリーナに会えることを願う。運良くアンジェリーナが庭園ガゼボに姿を見せたのに気づき、騎士達に切りつけられながらも全力で走り抜ける。
俺の命ならいらない。すでに俺は死んでいるのだから。この命でヴィドが助かるなら安いものさ。
初めてすがすがしい気持ちで満たされた。剣が背中を貫き激痛がはしっても、まだ死ねない。死ぬわけにはいかないんだ。アンジェリーナにヴィドを助けてもらうのさ。聖女様なら絶対に助けてくれる。俺はヴィドの為に死ぬなら本望だ。
❁.。.:*:.。.✽.
目が覚めると、俺はまたあの教会のベッドに寝ていた。心配そうに覗き込むヴィドの身体を、思わず抱き寄せて足があるかを確認する。
「きれいなおねえちゃんがきてね。なおしてくれたよ」
「聖女様がいらっしゃったのですよ。あなたはぼろぼろで死にかけていました」
血だらけの俺は教会の名前とヴィドのことしか言わなかったらしい。自分は死んでも構わない、とうわごとで何度も呟いたと聞かされた。
「カスパー第二王子殿下。あなたは生まれ変わったのですよ。神はもうあなたを許しました。聖女様もそうおっしゃっていました。人間は機会さえ与えられれば、変わることができるのです」
そうなのか? 俺は子供なんて嫌いだぞ。でも、ヴィドが死ぬのは嫌だった。こいつには絶対長生きしてもらいたいんだ!
ヴィドが俺に英雄を見るような眼差しを向けた。ニカッと笑ってすり寄ってくる。
「ずっとここにいるよね?」
たくさんの子供達が俺を眩しそうに見つめ、心からそう願ってくれたこの瞬間、俺はやっと生きる意味を見つけたんだ。
「処刑された第二王子殿下にそっくりな方ですな。世の中には三人はそっくりな人間がいる、と聞きますがこれほど似ていることはそうはない。お気の毒ですね。よりによって、あの方に似ているなんて」
俺はここでも否定されるのか? どこに行っても、神の家でも煙たがられる。
「かっこいいね、おにいちゃん! ぼくはうらやましいなぁーー」
俺が横たわるベッドに寄って来て、にこにこと微笑みかけた子供の目は輝いていた。彼の名前はヴィドで、今年で六歳になるという。
「俺は歴史に名を残すほどの極悪人にそっくりなんだぞ。なにが羨ましいんだよ」
俺をそう言いながら苦笑した。
その教会では男手も足りなく神父は老人だった為、力の必要な仕事を恩返しのつもりで手伝った。ヴィドは身体が小さく細い。少しでも疲れると熱をだすような子供だった。
「あの子は赤子の頃に教会の前に捨てられていたのですよ。その時から病弱でそう長くは生きられないでしょう」
俺は産まれた時から丈夫で熱など出したこともない。今でも鍛えた身体は少しも衰えていない。
「ヴィドは俺に懐いて離れないんだよ」
「憧れなんですよ。身近にあなたのような騎士様に見える男性はいませんでしたからね」
俺はヴィドにつきまとわれて正直迷惑だった。子供なんて好きじゃない。でも、あれほど信頼しきった眼差しを向けられると、追い払うこともできなかった。
❁.。.:*:.。.✽.
ある日、大きな地震が起きてヴィドが本棚の下敷きになった。片足が押しつぶされ、床に血の海ができる。神父様は涙を流しながら奇跡を祈った。
「ぼく、しあわせだったよ・・・・・・ここでは・・・・・・みんながやさしかったもん」
ちょっと待ってくれよ。これほど純真な汚れのない子が死ぬのはおかしいだろう? 俺は急ぎ清潔な布で足を縛り止血をし、王宮に馬を走らせた。
「アンジェリーナ様にお会いしたいのです。王太子妃様に! お願いします!」
王宮の門をたたき門番を脅し、殺される覚悟で兄上を呼んだ。騎士達に囲まれ剣をつきつけられた時に、それを奪い取り暴れながらも、アンジェリーナに会えることを願う。運良くアンジェリーナが庭園ガゼボに姿を見せたのに気づき、騎士達に切りつけられながらも全力で走り抜ける。
俺の命ならいらない。すでに俺は死んでいるのだから。この命でヴィドが助かるなら安いものさ。
初めてすがすがしい気持ちで満たされた。剣が背中を貫き激痛がはしっても、まだ死ねない。死ぬわけにはいかないんだ。アンジェリーナにヴィドを助けてもらうのさ。聖女様なら絶対に助けてくれる。俺はヴィドの為に死ぬなら本望だ。
❁.。.:*:.。.✽.
目が覚めると、俺はまたあの教会のベッドに寝ていた。心配そうに覗き込むヴィドの身体を、思わず抱き寄せて足があるかを確認する。
「きれいなおねえちゃんがきてね。なおしてくれたよ」
「聖女様がいらっしゃったのですよ。あなたはぼろぼろで死にかけていました」
血だらけの俺は教会の名前とヴィドのことしか言わなかったらしい。自分は死んでも構わない、とうわごとで何度も呟いたと聞かされた。
「カスパー第二王子殿下。あなたは生まれ変わったのですよ。神はもうあなたを許しました。聖女様もそうおっしゃっていました。人間は機会さえ与えられれば、変わることができるのです」
そうなのか? 俺は子供なんて嫌いだぞ。でも、ヴィドが死ぬのは嫌だった。こいつには絶対長生きしてもらいたいんだ!
ヴィドが俺に英雄を見るような眼差しを向けた。ニカッと笑ってすり寄ってくる。
「ずっとここにいるよね?」
たくさんの子供達が俺を眩しそうに見つめ、心からそう願ってくれたこの瞬間、俺はやっと生きる意味を見つけたんだ。
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