(完結)第二王子に捨てられましたがパンが焼ければ幸せなんです! まさか平民の私が・・・・・・なんですか?

青空一夏

文字の大きさ
上 下
19 / 24

15 

しおりを挟む
 なぜならば・・・・・・すっかり回復した金のドラゴン王が、私とセオドリック王太子殿下を乗せて王都まで飛んでくれたからだった。

 子ドラゴン達は、私の側を離れたくないらしく一緒に行きたがった。セオドリック王太子殿下が頭を撫でると、首を傾げながらじっと殿下を見つめる。そして、自らセオドリック王太子殿下の膝にちょこんと座った。もう一頭は私の膝に当たり前のように座る。

「なにかすっかり懐いてしまったようです。ついさっきまでは怯えていたのですよ」
「やはりアンジェリーナ様のラスクのお蔭でしょうね。聖女様の焼くパンは一口食べただけでも生きる力が湧きますし、穏やかで優しい気持ちになれますから」

 セオドリック王太子殿下が私の髪をそっと撫でた。金のドラゴン王は私達が背中に乗りやすくする為、地面にお腹をこすりつけ身体を低くした。私達が乗ると驚くほどの早さで空を切るように羽ばたく。けれど、私達の身体にはあまり振動は伝わらない。私達が落ちないように気を遣ってくれているのがわかった。なので、少しも怖くはなかった。

 ここから王都までは3日ほどかかる道のりも、ドラゴン王の背中に乗るとほんの一瞬に思えた。馬車を走らせるにはある程度整備された道を通る必要があり、遠回りを強いられることも多い。でも、ドラゴンなら目的地まで一直線で飛んでいける。眼下に見る景色も素晴らしくて、これほど早いドラゴンに乗っていながらも、寛げているのが不思議だった。





 黄金のドラゴン王の身体が陽光に煌めく。寄り添うように飛行する銀のドラゴンの身体も同じように、陽の光を浴びて神秘的な輝きをみせた。大人のドラゴンは巨大で恐ろしいけれど、しなやかで美しい。腕の中の子ドラゴンもとても愛らしくて、いつの間にか私達の腕のなかで眠ってしまった。

「可愛い子達ですね。子犬のように小さくて人懐っこいのに、この子達がわずか数年で大人になるのが信じられません」
「そうですね。このぶんだと、アンジェリーナ様の側にずっと居そうです」
 セオドリック王太子殿下がお笑いになる。そんなことができたらいいな、と思う。

(人間もドラゴンも同じくこの世に生きる者として、一緒に暮らせて支え合うことはできないのかな?)

 まもなく王宮が見えてきて、王宮で働く役人達が私達にいち早く気がついた。
「ドラゴンの襲撃だ」
「この世の終わりだ」
 迂闊な人達だ。まもなく、ドラゴンの背中に私とセオドリック王太子殿下が乗っているのを認めると、今度は満面の笑みで見当違いのことを口にしていた。
「聖女様はドラゴンを操る能力がおありなんだ」
「人間は遂にドラゴンを支配できるようになったのだ」
 不愉快な声に私は眉をひそめた。

(なぜ、そんなふうにしか考えられないの?)

「ドラゴンと人間は対等だ。これからはお互いが助け合うべきだ。種族が違ってもわかり合えることはたくさんある」
 セオドリック王太子殿下はドラゴン王から降りるなり、ピシャリとその人達を窘めた。私とセオドリック王太子殿下の意見は少しのすれ違いもなくぴったりと合っている。これから私とセオドリック王太子殿下で、ドラゴンとの新しい世界を築き上げるんだ!


❁.。.:*:.。.✽.


 私達は国王陛下夫妻にカスコイン伯爵とヒルダ様の悪行を説明した。

「カスコイン伯爵・・・・・・なんて愚かな子でしょう。情けないです。こうなっては北の塔に一生監禁するしかないでしょう」
 王妃殿下を涙を溜めてそうおっしゃった。

「いや、国外追放だ。もうこの国には置いておけぬわい」
 国王陛下も諦めの表情だった。

「世界でも一番戒律の厳しい修道院に行かせるのはいかがでしょうか? 国外追放しても異国で犯罪を犯せば、結局は我が国の責任になります」
 セオドリック王太子殿下の言葉に、私はとても冷たい提案をした。

「カスコイン伯爵は処刑してください。たくさんの人がいる大広場で公開処刑になさってください」
 私は聖女らしからぬことを提案した。さきほどまで、彼には生きて償うことを願っていたのに・・・・・・けれど、これは必要なことだった。彼が出直す為に・・・・・・それは・・・・・・





୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧

※次回、やっと断罪ですよ。カスコイン視点。
 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無双する天然ヒロインは皇帝の愛を得る

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕「強運」と云う、転んでもただでは起きない一風変わった“加護”を持つ子爵令嬢フェリシティ。お人好しで人の悪意にも鈍く、常に前向きで、かなりド天然な令嬢フェリシティ。だが、父である子爵家当主セドリックが他界した途端、子爵家の女主人となった継母デラニーに邪魔者扱いされる子爵令嬢フェリシティは、ある日捨てられてしまう。行く宛もお金もない。ましてや子爵家には帰ることも出来ない。そこで訪れたのが困窮した淑女が行くとされる或る館。まさかの女性が春を売る場所〈娼館〉とは知らず、「ここで雇って頂けませんか?」と女主人アレクシスに願い出る。面倒見の良い女主人アレクシスは、庇護欲そそる可憐な子爵令嬢フェリシティを一晩泊めたあとは、“或る高貴な知り合い”ウィルフレッドへと託そうとするも……。 ※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日(2024.12.24)からHOTランキング入れて頂き、ありがとうございます🙂(最高で29位✨)

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
 リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。  お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。  少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。  22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

【完結】契約の花嫁だったはずなのに、無口な旦那様が逃がしてくれません

Rohdea
恋愛
──愛されない契約の花嫁だったはずなのに、何かがおかしい。 家の借金返済を肩代わりして貰った代わりに “お飾りの妻が必要だ” という謎の要求を受ける事になったロンディネ子爵家の姉妹。 ワガママな妹、シルヴィが泣いて嫌がった為、必然的に自分が嫁ぐ事に決まってしまった姉のミルフィ。 そんなミルフィの嫁ぎ先は、 社交界でも声を聞いた人が殆どいないと言うくらい無口と噂されるロイター侯爵家の嫡男、アドルフォ様。 ……お飾りの妻という存在らしいので、愛される事は無い。 更には、用済みになったらポイ捨てされてしまうに違いない! そんな覚悟で嫁いだのに、 旦那様となったアドルフォ様は確かに無口だったけど───…… 一方、ミルフィのものを何でも欲しがる妹のシルヴィは……

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

こな
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~

北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!** 「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」  侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。 「あなたの侍女になります」 「本気か?」    匿ってもらうだけの女になりたくない。  レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。  一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。  レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。 ※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません) ※設定はゆるふわ。 ※3万文字で終わります ※全話投稿済です

処理中です...