（完結）妹の為に薬草を採りに行ったら、婚約者を奪われていましたーーでも、そんな男で本当にいいの？

プロローグ

　わたくしの妹はとても可愛い。まぁるい真っ赤な頬はリンゴのようで、目は大きく睫は驚くほど長い。本当に愛らしい子なのよ。

「お姉様、大好き！　だからこの刺繍を手伝って！」

「いいわよ」

　私は快く手伝う。その結果、その刺繍はお母様からとても褒められた。

「リザは素晴らしい刺繍が、あっという間にできるのね？　それに比べてケリーは、まだできていないのですか？　あなたにはリザより前に、そのレース編みをするように言いましたよね？」

「はい、申し訳ありません。急ぎますので、少しお待ち下さいませ」

　リザの刺繍を夢中になって代わりにしていたら、うっかり自分のレース編みがおざなりになってしまう。

「まぁ、いいわ。ですが、あなたは姉としての自覚に欠けますよ」

　お母様にまた叱られてしまったわ。でも、リザが私にだけ見えるような角度で眉尻を下げて、手を合わせた。

（まぁ、仕方がないわね。かわいいリザの為だしね）

　リザは幼い頃から私の後をついて来る、とても可愛く愛らしい妹なのだ。

　この妹の魔法の言葉は「お姉様、大好き！」　これを言われると私は弱い。つい甘やかしてしまう。