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12ー2 私とイレーヌの幸せな結婚(ジャクソン視点)
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ところが弟のセオはあろうことか浮気をしており、おまけに子供まで妊娠させたということがわかった。相手の女が愚かなことにこのポワゾン家に乗り込んできたことで発覚した。
息子のラーニーはもちろん母親同然になついているイレーヌをかばう。私ももちろんイレーヌの味方だ。話を聞けば聞くほど呆れたセオの愚行に腹が煮えくり返る思いだった。
こんなろくでなしに大事なイレーヌを任せてしまったことが悔やまれる。イレーヌとセオの恋を見守っていたのはセオがイレーヌに誠心誠意尽くして大事にすると言ったからだ。それを信じて祝福したのにこのような浅ましいことを隠れて行っていたとは兄として情けない気持ちと、どうにも許せない気持ちが混ざり合ってセオを殴りつけてしまった。本当は1回や2回では足りないぐらいなんだが……
セオと離婚して実家に戻ったイレーヌを忘れる事はできなかった。ラーニーもすっかり元気をなくしふさぎ込むことも多くなった。しばらくしてイレーヌの母親、バッテンベルク侯爵夫人がポワゾン家に訪れた。
「単刀直入にお訊きしますわ。ジャクソン様は娘のイレーヌをどう思っていらっしゃいますの?」
「……このようなことを申し上げる立場ではないと思いますが、私はイレーヌを愛しております。いつからかは定かではありません。気づいたときにはすっかり大事な人になっていて、ですがそのときには弟のセオと付き合っておりました」
「私は母親としてイレーヌの幸せを望んでいます。女は自分の好いた相手と添い遂げることが一番幸せだと思っています。イレーヌもどうやらジャクソン様、あなたが好きなようです。ですが娘には他の選択肢も与えてあげる必要があるのです。あの子の父親の気持ちを満足させるためにそれは必要なことなのですよ。これから何人かの男性とお見合いをさせますがおそらく誰も選ばないでしょう。最後にジャクソン様に会っていただきます。そこで娘にプロポーズをしてあげてください」
「私がプロポーズをしてもよろしいのですか?子供もいます、初婚でもありません」
「ラーニーちゃんがいるからこそイレーヌはあなたが好きになったんだと思いますよ。あの子はラーニちゃんを自分の息子のように恋しがっています。夫は父親として娘に幸せな家庭を新たに築いてほしいと思っていますが、女性の幸せにはいろいろな形があるのだからジャクソン様を娘の夫候補から除外する事はできませんわ。どうぞ時が来たら、イレーヌを妻に迎えてやってくださいませ」
そのようなバッテンベルク侯爵夫人の後押しもあって、私はイレーヌに結婚を前提とした交際を申し込んだのだった。クララに申し訳ない、そのような言葉を口にしたイレーヌに私は持っていたクララの手紙を渡したのだった。
「私はもう迷わないわ……私に任せておいて」
その手紙を読んでイレーヌは子供のように泣きじゃくって、最後にはにっこりと微笑んだ。
「よろしくお願いします。どうか私を妻にしてください。そしてラーニ様のお母様にならせてください。それがクララの願いで私の1番の望むことなのですから」
私とイレーヌはその後、順調に交際を重ねて結婚した。ラーニーはイレーヌに抱きついてすぐに「お母様」と呼んだ。親子3人で過ごす時間はキラキラと輝き、今まで見ていた景色がうっすらとバラ色に輝いてさえ見えた。私の世界はかつてないほど鮮やかな色彩を放つ。愛する妻と子供がいる、これはなんと素晴らしいことなんだろう!
ラーニーの10歳の誕生日。私はバラの封筒の手紙を今度はラーニーに渡す。これもクララが10歳の誕生日に渡してくれるように残してくれたものだった。ちなみにクララは18歳の成人の日の手紙と、ラーニーが結婚をする日のお祝いの手紙まで残していたのだった。どこまでも用意周到な愛すべきクララ。
その手紙は、私とイレーヌそしてラーニーと3人で読んだ。そこにはラーニーの成長を天から見守っているという事が愛情たっぷりに書かれていたのだった。そして最後の一言が私とイレーヌの涙を誘った。
ラーニーにもし二人目のお母様がいてそのお名前がイレーヌだったら、その方は本当にあなたを愛してくれています。彼女はお母様の大親友なのだから。そしてもし妹や弟が生まれたら絶対に可愛がってあげてくださいね。
そしてその一年後、イレーヌは妊娠しポワゾン家とバッテンベルク家は大きな喜びに包まれた。バッテンベルク侯爵は喜びのあまり毎日のようにポワゾン家に入り浸り、夫人は3日と空けずにお手製のベビー服を持ち込むのだった。
「なんて嬉しいのかしら? 自分の孫が抱けるなんて夢みたい! もちろんラーニちゃんも私たちの大事な孫よ。それにしてもセオ様とのあいだにはできなかったのに不思議ね?」
バッテンベルク侯爵夫人はラーニーを膝の上に抱きながらイレーヌの膨らみかけたお腹を撫でた。
「あんな男の話はしなくていい! どうせ種なしスイカなんだろうよ。あの愛人の子供もあいつの子かどうか怪しいものだ!」
バッテンベルク侯爵は忌々しげに吐き捨てるようにそう言った。
「イレーヌお母様、僕は絶対にこれから生まれてくる赤ちゃんを守ってあげるからね! イレーヌお母様もその子供も僕が一生守ってあげるんだ」
ますます賢く美しくなっていくラーニーの頼もしい言葉にイレーヌは涙を流して喜び、バッテンベルク侯爵夫妻は朗らかに笑ったのだった。
生まれてきた子供は男の子でディランと名付けられた。ディランは後にバッテンベルク侯爵となる。ラーニーはポワゾン侯爵となり、2つの家は大いに繁栄したのだった。
ーー確かにセオはもしかしたら子供ができない体質だったのかもしれないな。しかし浮気相手の方には子供ができていた。と言う事はその子供は……
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次回はセオの末路と浮気相手の末路になります。
息子のラーニーはもちろん母親同然になついているイレーヌをかばう。私ももちろんイレーヌの味方だ。話を聞けば聞くほど呆れたセオの愚行に腹が煮えくり返る思いだった。
こんなろくでなしに大事なイレーヌを任せてしまったことが悔やまれる。イレーヌとセオの恋を見守っていたのはセオがイレーヌに誠心誠意尽くして大事にすると言ったからだ。それを信じて祝福したのにこのような浅ましいことを隠れて行っていたとは兄として情けない気持ちと、どうにも許せない気持ちが混ざり合ってセオを殴りつけてしまった。本当は1回や2回では足りないぐらいなんだが……
セオと離婚して実家に戻ったイレーヌを忘れる事はできなかった。ラーニーもすっかり元気をなくしふさぎ込むことも多くなった。しばらくしてイレーヌの母親、バッテンベルク侯爵夫人がポワゾン家に訪れた。
「単刀直入にお訊きしますわ。ジャクソン様は娘のイレーヌをどう思っていらっしゃいますの?」
「……このようなことを申し上げる立場ではないと思いますが、私はイレーヌを愛しております。いつからかは定かではありません。気づいたときにはすっかり大事な人になっていて、ですがそのときには弟のセオと付き合っておりました」
「私は母親としてイレーヌの幸せを望んでいます。女は自分の好いた相手と添い遂げることが一番幸せだと思っています。イレーヌもどうやらジャクソン様、あなたが好きなようです。ですが娘には他の選択肢も与えてあげる必要があるのです。あの子の父親の気持ちを満足させるためにそれは必要なことなのですよ。これから何人かの男性とお見合いをさせますがおそらく誰も選ばないでしょう。最後にジャクソン様に会っていただきます。そこで娘にプロポーズをしてあげてください」
「私がプロポーズをしてもよろしいのですか?子供もいます、初婚でもありません」
「ラーニーちゃんがいるからこそイレーヌはあなたが好きになったんだと思いますよ。あの子はラーニちゃんを自分の息子のように恋しがっています。夫は父親として娘に幸せな家庭を新たに築いてほしいと思っていますが、女性の幸せにはいろいろな形があるのだからジャクソン様を娘の夫候補から除外する事はできませんわ。どうぞ時が来たら、イレーヌを妻に迎えてやってくださいませ」
そのようなバッテンベルク侯爵夫人の後押しもあって、私はイレーヌに結婚を前提とした交際を申し込んだのだった。クララに申し訳ない、そのような言葉を口にしたイレーヌに私は持っていたクララの手紙を渡したのだった。
「私はもう迷わないわ……私に任せておいて」
その手紙を読んでイレーヌは子供のように泣きじゃくって、最後にはにっこりと微笑んだ。
「よろしくお願いします。どうか私を妻にしてください。そしてラーニ様のお母様にならせてください。それがクララの願いで私の1番の望むことなのですから」
私とイレーヌはその後、順調に交際を重ねて結婚した。ラーニーはイレーヌに抱きついてすぐに「お母様」と呼んだ。親子3人で過ごす時間はキラキラと輝き、今まで見ていた景色がうっすらとバラ色に輝いてさえ見えた。私の世界はかつてないほど鮮やかな色彩を放つ。愛する妻と子供がいる、これはなんと素晴らしいことなんだろう!
ラーニーの10歳の誕生日。私はバラの封筒の手紙を今度はラーニーに渡す。これもクララが10歳の誕生日に渡してくれるように残してくれたものだった。ちなみにクララは18歳の成人の日の手紙と、ラーニーが結婚をする日のお祝いの手紙まで残していたのだった。どこまでも用意周到な愛すべきクララ。
その手紙は、私とイレーヌそしてラーニーと3人で読んだ。そこにはラーニーの成長を天から見守っているという事が愛情たっぷりに書かれていたのだった。そして最後の一言が私とイレーヌの涙を誘った。
ラーニーにもし二人目のお母様がいてそのお名前がイレーヌだったら、その方は本当にあなたを愛してくれています。彼女はお母様の大親友なのだから。そしてもし妹や弟が生まれたら絶対に可愛がってあげてくださいね。
そしてその一年後、イレーヌは妊娠しポワゾン家とバッテンベルク家は大きな喜びに包まれた。バッテンベルク侯爵は喜びのあまり毎日のようにポワゾン家に入り浸り、夫人は3日と空けずにお手製のベビー服を持ち込むのだった。
「なんて嬉しいのかしら? 自分の孫が抱けるなんて夢みたい! もちろんラーニちゃんも私たちの大事な孫よ。それにしてもセオ様とのあいだにはできなかったのに不思議ね?」
バッテンベルク侯爵夫人はラーニーを膝の上に抱きながらイレーヌの膨らみかけたお腹を撫でた。
「あんな男の話はしなくていい! どうせ種なしスイカなんだろうよ。あの愛人の子供もあいつの子かどうか怪しいものだ!」
バッテンベルク侯爵は忌々しげに吐き捨てるようにそう言った。
「イレーヌお母様、僕は絶対にこれから生まれてくる赤ちゃんを守ってあげるからね! イレーヌお母様もその子供も僕が一生守ってあげるんだ」
ますます賢く美しくなっていくラーニーの頼もしい言葉にイレーヌは涙を流して喜び、バッテンベルク侯爵夫妻は朗らかに笑ったのだった。
生まれてきた子供は男の子でディランと名付けられた。ディランは後にバッテンベルク侯爵となる。ラーニーはポワゾン侯爵となり、2つの家は大いに繁栄したのだった。
ーー確かにセオはもしかしたら子供ができない体質だったのかもしれないな。しかし浮気相手の方には子供ができていた。と言う事はその子供は……
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次回はセオの末路と浮気相手の末路になります。
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