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4 思ったよりもずっとクズだったセオ
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「セオがとんでもない嘘つきだったなんて頭にくるわ! 三男なんて侯爵になれるはずないでしょう?ばっかみたい!永遠になれないわよっ!」
シェリルが激しく悪態をついた。
「いずれ侯爵にはなれるはずなんだ。だって私はイレーヌの夫なんだから!」
「いちいち、わけわかんないわよ! セオの奥様のイレーヌ様は貧乏な平民だって言ったじゃない?」
シェリルはイライラとしながらセオに言葉を投げつける。
「お前、バッテンベルク侯爵がそれを聞いたら大変な騒ぎになるぞ! イレーヌはバッテンベルク侯爵様の一人娘だろうが! 自分より格上の嫁を平民呼ばわりしたなど呆れたな。浮気者とはこれほど嘘偽りを言うものなのか!」
ジャクソン様は怒りを通り越して、情けない表情になっていた。
「お願いだよ! イレーヌ、お義父上にはこのことは内密にしておくれよ。私達夫婦に子供ができないときには、この私をバッテンベルク侯爵の籍に迎えてくれると約束してくれたんだ」
この世界では爵位は男性しか継げないが、娘しかいない場合はその孫(男に限る)に継がせるか、孫ができない場合にはその娘婿を一時的に跡継ぎとして養子縁組することも認められていた。ただし、娘婿が当主でいられるのはその家の娘が生きている間だけ、もちろん離縁した場合には当主でいられるはずもない。
「あなたは私の実家バッテンベルク侯爵の地位がまだ手に入ると思っているんですか? もしバッテンベルク侯爵になれたとしても私と結婚している間に限ってですし、私が亡くなればあなたは追い出されますよ。あなたにはバッテンベルク侯爵家の血が流れていないのですから」
「そんなことはわかっている。だがイレーヌが生きている間は私が侯爵でいられるということだことだろう?」
「私のお父様があなたをバッテンベルク家の籍に移すことを承諾すればですがね」
私を裏切っておきながらまだバッテンベルク家の当主になろうとしているセオに呆れてしまう。
「ちょっと待ってよ。セオがイレーヌ様と結婚していなければダメなら、あたしは愛人でもいいわよ。平民でいるよりずっと楽できそうだし。ついでに産まれた子をイレーヌ様とセオの子供として育てたらどうかしら? ほら、そうすれば皆が幸せになれるわ」
名案とばかりにシェリルがにっこりと微笑んでそう言った。
「私にシェリルさんとセオの子供を自分の子供として育てろと言うのですか? そして、あなたがたの子供に実家のバッテンベルク侯爵家を継がせろと?」
私はとても屈辱的な提案をシェリルにされたのだった。
シェリルが激しく悪態をついた。
「いずれ侯爵にはなれるはずなんだ。だって私はイレーヌの夫なんだから!」
「いちいち、わけわかんないわよ! セオの奥様のイレーヌ様は貧乏な平民だって言ったじゃない?」
シェリルはイライラとしながらセオに言葉を投げつける。
「お前、バッテンベルク侯爵がそれを聞いたら大変な騒ぎになるぞ! イレーヌはバッテンベルク侯爵様の一人娘だろうが! 自分より格上の嫁を平民呼ばわりしたなど呆れたな。浮気者とはこれほど嘘偽りを言うものなのか!」
ジャクソン様は怒りを通り越して、情けない表情になっていた。
「お願いだよ! イレーヌ、お義父上にはこのことは内密にしておくれよ。私達夫婦に子供ができないときには、この私をバッテンベルク侯爵の籍に迎えてくれると約束してくれたんだ」
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「あなたは私の実家バッテンベルク侯爵の地位がまだ手に入ると思っているんですか? もしバッテンベルク侯爵になれたとしても私と結婚している間に限ってですし、私が亡くなればあなたは追い出されますよ。あなたにはバッテンベルク侯爵家の血が流れていないのですから」
「そんなことはわかっている。だがイレーヌが生きている間は私が侯爵でいられるということだことだろう?」
「私のお父様があなたをバッテンベルク家の籍に移すことを承諾すればですがね」
私を裏切っておきながらまだバッテンベルク家の当主になろうとしているセオに呆れてしまう。
「ちょっと待ってよ。セオがイレーヌ様と結婚していなければダメなら、あたしは愛人でもいいわよ。平民でいるよりずっと楽できそうだし。ついでに産まれた子をイレーヌ様とセオの子供として育てたらどうかしら? ほら、そうすれば皆が幸せになれるわ」
名案とばかりにシェリルがにっこりと微笑んでそう言った。
「私にシェリルさんとセオの子供を自分の子供として育てろと言うのですか? そして、あなたがたの子供に実家のバッテンベルク侯爵家を継がせろと?」
私はとても屈辱的な提案をシェリルにされたのだった。
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