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23 剣道ができるエメラルドは、実は合気道の有段者
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「さて、行ってくるわね?」
午後からは教会のバザーのお手伝いに行かなければいけなかった私は、酢豚でパンパンになったお腹をさすって馬車に乗り込んだ。
けれど、すぐに忘れ物に気がつき慌てて引き返す。日傘を忘れた。忘れ物を手にとって、再び馬車に乗ろうとすると、旦那様が「帰りは迎えにいくよ」とおっしゃった。
「あら、一人で帰れますわ。馬車を3時間後に教会に寄こしてくださいませ」
私は素っ気なく言い放った。最近はこちらに歩み寄りたいのか、優しくて居心地が悪いったらない。「君を愛することはない」と言い放ったくせに、最近構ってちゃんオーラを出してくるのも戸惑ってしまう。私は、綺麗な男性は苦手なんだってばっ!
☆彡 ★彡
バザーのお手伝いで慌ただしく時間が過ぎていく。時計を見ると、もう夕方の5時を過ぎていた。夕暮れのなかを他のご夫人方と馬車の停車位置まで戻ろうとしていると、もっさりした4人組が現れた。一斉に私に襲いかかろうとする男達に、私はすかさず日傘を構えた。
「めぇーーん! こてぇーー! さぁ、お立ちなさい! この程度で倒れるなんてだらしないですわよ」
実は私、剣道を習っていたことがあるのよ。
「ひやぁ~~!! なんだよ。このパラソル振り回した怪物はぁ~~」
まだまだぁ、許しませんわよ。か弱いレディをこんな真っ昼間に襲おうとするなど! ・・・・・・ん? 通りの向かい側から歩いていらっしゃるのは旦那様? まずいですわ。
「きゃぁーー!!助けてぇ」
「いや、いや。それ、無理がありますって!」
悪党の一人が呆れたような声を出す。
「いいから、私を拘束するふりをしなさい! 旦那様には見られたくないですわ」
なぜなのでしょう? 麗しい旦那様が苦手なはずの私だけれど、強すぎる女性と思われるのが嫌だった。おかしいわね?
「ふぁぁい。おうおう、この女の命がおしくねーのかよ?」
側に来た旦那様に脅しの文句を突きつけて、男はナイフを私の首に押しつけた。
「私が代わりに人質になるから妻を離せ!」
顔面蒼白で必死に男達に提案する旦那様にちょっと見直した。旦那様も剣術は得意なはずだから、私の首筋にナイフが突きつけられていなければ、いくらでも戦えたと思う。
「もう演技は良いわよ。離してちょうだい」
けれど、この悪党は私を離そうとしなかった。
「日傘がなきゃ、なにもできないだろう? このまま誘拐させてもらうぜぃ。イッヒヒヒ」
この、外道がぁ! 私は羽交い締めにされていた頭を低く下げ、男の腕をとる。あごを肘のくぼみにあてるようにし、相手のふくらはぎ周辺に素早く自分のふくらはぎをかけた。そのまま自分の身体を華麗に180度回転させ反動をつけながら、急所に蹴りをくらわした。
ぐはっ!
ふん! この私を見くびってもらっては困る。前世の父は合気道教室の師範だったし、私はその父に鍛えられて育ったのだから。私は剣道より合気道の方が得意なのだ。
旦那様が目をパチクリして私を凝視している。困ったな。急所に強烈な蹴りをいれられた男は、泡を吹いて倒れちゃっている。
「さきほど旦那様が見た光景は全て幻だと思います。この悪党は旦那様が倒してくださいましたよね?」
私はそう言いながらも旦那様に駆け寄った。
「あぁ、そうだよ。白昼夢だよね。エメラルドがそう言うならその通りだ」
と、旦那様。なんて従順なのかしら。最初からこの感じだったら良かったのに。
旦那様は私をしきりに心配して、お姫様抱っこをしながら、馬車まで運んでくれたのだった。
優しい。案外、良い人だ。
「こいつらは治安守備隊に引き渡そう! 私の妻を襲おうとしたのだから厳重に罰する必要がある」
これほど私のために怒ってくださる旦那様に悪い気はしなかった。
「あら、お待ちになって。せっかくだから脅してエリアス侯爵家でただ働きさせましょう? だって、味噌職人が必要ですもの!」
私は満面の笑みを浮かべたのだった。
午後からは教会のバザーのお手伝いに行かなければいけなかった私は、酢豚でパンパンになったお腹をさすって馬車に乗り込んだ。
けれど、すぐに忘れ物に気がつき慌てて引き返す。日傘を忘れた。忘れ物を手にとって、再び馬車に乗ろうとすると、旦那様が「帰りは迎えにいくよ」とおっしゃった。
「あら、一人で帰れますわ。馬車を3時間後に教会に寄こしてくださいませ」
私は素っ気なく言い放った。最近はこちらに歩み寄りたいのか、優しくて居心地が悪いったらない。「君を愛することはない」と言い放ったくせに、最近構ってちゃんオーラを出してくるのも戸惑ってしまう。私は、綺麗な男性は苦手なんだってばっ!
☆彡 ★彡
バザーのお手伝いで慌ただしく時間が過ぎていく。時計を見ると、もう夕方の5時を過ぎていた。夕暮れのなかを他のご夫人方と馬車の停車位置まで戻ろうとしていると、もっさりした4人組が現れた。一斉に私に襲いかかろうとする男達に、私はすかさず日傘を構えた。
「めぇーーん! こてぇーー! さぁ、お立ちなさい! この程度で倒れるなんてだらしないですわよ」
実は私、剣道を習っていたことがあるのよ。
「ひやぁ~~!! なんだよ。このパラソル振り回した怪物はぁ~~」
まだまだぁ、許しませんわよ。か弱いレディをこんな真っ昼間に襲おうとするなど! ・・・・・・ん? 通りの向かい側から歩いていらっしゃるのは旦那様? まずいですわ。
「きゃぁーー!!助けてぇ」
「いや、いや。それ、無理がありますって!」
悪党の一人が呆れたような声を出す。
「いいから、私を拘束するふりをしなさい! 旦那様には見られたくないですわ」
なぜなのでしょう? 麗しい旦那様が苦手なはずの私だけれど、強すぎる女性と思われるのが嫌だった。おかしいわね?
「ふぁぁい。おうおう、この女の命がおしくねーのかよ?」
側に来た旦那様に脅しの文句を突きつけて、男はナイフを私の首に押しつけた。
「私が代わりに人質になるから妻を離せ!」
顔面蒼白で必死に男達に提案する旦那様にちょっと見直した。旦那様も剣術は得意なはずだから、私の首筋にナイフが突きつけられていなければ、いくらでも戦えたと思う。
「もう演技は良いわよ。離してちょうだい」
けれど、この悪党は私を離そうとしなかった。
「日傘がなきゃ、なにもできないだろう? このまま誘拐させてもらうぜぃ。イッヒヒヒ」
この、外道がぁ! 私は羽交い締めにされていた頭を低く下げ、男の腕をとる。あごを肘のくぼみにあてるようにし、相手のふくらはぎ周辺に素早く自分のふくらはぎをかけた。そのまま自分の身体を華麗に180度回転させ反動をつけながら、急所に蹴りをくらわした。
ぐはっ!
ふん! この私を見くびってもらっては困る。前世の父は合気道教室の師範だったし、私はその父に鍛えられて育ったのだから。私は剣道より合気道の方が得意なのだ。
旦那様が目をパチクリして私を凝視している。困ったな。急所に強烈な蹴りをいれられた男は、泡を吹いて倒れちゃっている。
「さきほど旦那様が見た光景は全て幻だと思います。この悪党は旦那様が倒してくださいましたよね?」
私はそう言いながらも旦那様に駆け寄った。
「あぁ、そうだよ。白昼夢だよね。エメラルドがそう言うならその通りだ」
と、旦那様。なんて従順なのかしら。最初からこの感じだったら良かったのに。
旦那様は私をしきりに心配して、お姫様抱っこをしながら、馬車まで運んでくれたのだった。
優しい。案外、良い人だ。
「こいつらは治安守備隊に引き渡そう! 私の妻を襲おうとしたのだから厳重に罰する必要がある」
これほど私のために怒ってくださる旦那様に悪い気はしなかった。
「あら、お待ちになって。せっかくだから脅してエリアス侯爵家でただ働きさせましょう? だって、味噌職人が必要ですもの!」
私は満面の笑みを浮かべたのだった。
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