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16 華遊館(キャバクラ)好きのキツネ
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さてと、次はキツネの家ね。キツネの家は案外質素。結婚もしていないからワンルームの部屋だったし、少しばかりだらしない生活スタイルを反映していた。
部屋に足を踏み入れると、そこには埃っぽい空気が漂っていた。床は散らかり放題で脱ぎ捨てた服が落ちているし、テーブルの上にはかじりかけの林檎がそのまま放置されている。キッチンは狭く、洗い物が積み上げられたままだ。金目の物は全くない。
だとしたら、アレしかないわね。
「キツネ! 女の子とお酒を楽しく飲めるお店が、青空商店街に最近開店したのを知っている?」
「えぇ! 知っていますとも! すっごく可愛い子が粒ぞろいでして、愛想も抜群です!酒の品揃いも充実しています」
鎌をかけると簡単に白状してくれた。
「そのお店はどのあたりにあったかしら?」
「青空商店街にある高級青果店の隣です。よくそこで手土産に高級フルーツを買って行きます」
「はい、アウト! キツネはこれ以降はキャバクラ出入り禁止ですわ。女の子とそんなお店で話していないで、しっかりと婚活しなさい」
「キャ、キャバクラ? なんですか、それは?」
「華遊館のことよ。女の子達がいて高いお酒をその倍以上の値段で飲ませる、男をだめにするお店のことです」
「男をだめにする? いや、男の喜びを教えてくれる楽園のことですよね?」
楽園が聞いて呆れる。その楽園に通うのは自由だけれど、横領したお金を使って通うのは許せない。
「全ての華遊館にキツネ出入り禁止を通達させるわ。キツネを接待した店は罰金を取るようにしないとね」
「えぇーー。なんてことだ。愛しの、マリアンヌもオリビアもクラウディアも寂しくて死んじゃいますよ。私と会えないと、きっと泣いてしまいます」
その女の子達が泣くとしたら、キツネに会えないからではなくて、自分の売り上げが減ることに対してだと思う。
「キツネはその女の子達と店外で、対等な関係で会ったことはありますか?」
「リストランテでなら会ったことはありますよ」
「それはキツネが予約して、お金を全額だしたってことよね? コース料理をだすような高級なお店で、全額キツネがお金を出したなら対等な関係とは言えません。しっかり現実を見ましょう! キツネは金蔓なのです。ところで、今何時かしら?」
私はアドリオン男爵領で製造された、魔石を使った腕時計をチラリと見た。時計の針はもうすぐ3時を指し示すところで、私はうっかりおやつを食べ損ねるところだったのよ。
「嫌だぁ、大変! 急いで帰りますよ。おやつの時間に間に合いませんわ! どんまい。きっとキツネだけを愛してくれる女性が見つかるわよ。仕事ではなくて、心からあなたと一緒にいたいと思ってくれる女性がね!」
ショボンと肩を落としたキツネに私は声をかけた。キツネはちょっとだけ微笑んで私に頭を下げた。よく見ればキツネはまだ30代前半あたりだと思う。これから真面目に働いてくれてお金を回収できたら、キツネのお嫁さんを探してあげようと思った。
部屋に足を踏み入れると、そこには埃っぽい空気が漂っていた。床は散らかり放題で脱ぎ捨てた服が落ちているし、テーブルの上にはかじりかけの林檎がそのまま放置されている。キッチンは狭く、洗い物が積み上げられたままだ。金目の物は全くない。
だとしたら、アレしかないわね。
「キツネ! 女の子とお酒を楽しく飲めるお店が、青空商店街に最近開店したのを知っている?」
「えぇ! 知っていますとも! すっごく可愛い子が粒ぞろいでして、愛想も抜群です!酒の品揃いも充実しています」
鎌をかけると簡単に白状してくれた。
「そのお店はどのあたりにあったかしら?」
「青空商店街にある高級青果店の隣です。よくそこで手土産に高級フルーツを買って行きます」
「はい、アウト! キツネはこれ以降はキャバクラ出入り禁止ですわ。女の子とそんなお店で話していないで、しっかりと婚活しなさい」
「キャ、キャバクラ? なんですか、それは?」
「華遊館のことよ。女の子達がいて高いお酒をその倍以上の値段で飲ませる、男をだめにするお店のことです」
「男をだめにする? いや、男の喜びを教えてくれる楽園のことですよね?」
楽園が聞いて呆れる。その楽園に通うのは自由だけれど、横領したお金を使って通うのは許せない。
「全ての華遊館にキツネ出入り禁止を通達させるわ。キツネを接待した店は罰金を取るようにしないとね」
「えぇーー。なんてことだ。愛しの、マリアンヌもオリビアもクラウディアも寂しくて死んじゃいますよ。私と会えないと、きっと泣いてしまいます」
その女の子達が泣くとしたら、キツネに会えないからではなくて、自分の売り上げが減ることに対してだと思う。
「キツネはその女の子達と店外で、対等な関係で会ったことはありますか?」
「リストランテでなら会ったことはありますよ」
「それはキツネが予約して、お金を全額だしたってことよね? コース料理をだすような高級なお店で、全額キツネがお金を出したなら対等な関係とは言えません。しっかり現実を見ましょう! キツネは金蔓なのです。ところで、今何時かしら?」
私はアドリオン男爵領で製造された、魔石を使った腕時計をチラリと見た。時計の針はもうすぐ3時を指し示すところで、私はうっかりおやつを食べ損ねるところだったのよ。
「嫌だぁ、大変! 急いで帰りますよ。おやつの時間に間に合いませんわ! どんまい。きっとキツネだけを愛してくれる女性が見つかるわよ。仕事ではなくて、心からあなたと一緒にいたいと思ってくれる女性がね!」
ショボンと肩を落としたキツネに私は声をかけた。キツネはちょっとだけ微笑んで私に頭を下げた。よく見ればキツネはまだ30代前半あたりだと思う。これから真面目に働いてくれてお金を回収できたら、キツネのお嫁さんを探してあげようと思った。
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☆作者プロフィール☆
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