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4 オリーブ、初めてのデート
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それから迎えた初めてのデートの日。彼の横にはスカーレット様の姿があった。ライトピンクのドレスとお揃いの、つばの広い帽子を被り日焼け対策に余念がない。
「えっと・・・・・・なぜスカーレット様がここにいらっしゃるのですか?」
「あぁ、ごめんなさい。ご迷惑でしたよね? 今日はカーター様がオリーブ様と、有名なグランメゾンに行かれると聞いて、私も一度是非行ってみたかったのですわ。だってそこは予約がいっぱいで、なかなか入れない特別なグランメゾンだったから・・・・・・」
「そうですか」
私はそれだけしか言うことができない。
「いいよね? 君は優しい人だから許してくれるだろう? まさかスカーレットに帰れ、なんて言わないよね? あそこは予約が半年待ちの人気高級店だろう? 誰だって一緒に行きたくなるよ」
こんな状況で嫌なんて言えなかった。
言ったらまるで私が意地悪しているみたいだもの。
「はい。美味しいものは皆で食べた方が、いっそう美味しさが増しますものね」
心の中では、皆の前に『仲の良い』あるいは『気心の知れた』という言葉を入れていた。
「うふふ。優しいのですねぇ。では、早速向かいましょう。今日は紫外線が強くて嫌な日ですわね? 曇りの日か雨が良かったのに」
「そうだね。こんな日差しだと日に焼けてしまうから困るね。スカーレット、僕のジャケットで日陰を作ってあげようか? あ、ごめん、オリーブも日差しが苦手かな?」
「え? 太陽の光は好きですよ。今日の日差しは柔らかで気持ちいいです」
かつての彼は、太陽の光が人間の身体には不可欠だと言った。
でも、今はこの柔らかい日差しでさえも困ると言う。
私は時の残酷さを思い知る。人の心は移ろうもの。考え方も好みも、少年の頃のままではいられないのね。私だけが変わらずに、彼を想っていたことが惨めで滑稽だった。
★*☆*
「わぁーー! 美味しい! 盛り付けも素敵だしお味も最高だわ」
「本当だ! すっごく美味しいね。ほら、オリーブも早く食べなよ」
「え、えぇ。いただきます・・・・・・」
スカーレット様と彼が微笑み合いながら向かい合って食べるなかで、私はどうしていいかわからない。
これは泣いていいの?
笑っているべきなの?
正解がわからない。
「あらぁ、このお野菜は嫌いだわ。カーター様が召し上がってくださる?」
「あぁ、いいよ。じゃぁ、スカーレットにはこちらの魚をあげよう」
「嬉しい! ありがとう。カーター様はいつも優しいのね」
食事が全て終わり、私はそっと席を立つと化粧室に行く。化粧室の鏡に映る私は悲しい顔をしていた。とても大好きな男性との初デートという顔ではない。
初めてのデートって、もっと楽しくて甘いものだって思っていたのに・・・・・・
テーブルに戻るとカーター様とスカーレット様は、相変わらず楽しげにおしゃべりをしていて、お会計はまだ済んでいないようだった。通常は男性がテーブルで会計を済ますのがマナーのはずなのに・・・・・・結局、3人分の食事代は私が払った。
★*☆*
「ねぇ、次は小物でも見ませんこと? ストールが欲しくて・・・・・・」
「私は少し気分が優れないので帰りますわ」
「あら、オリーブ様こそストールが必要ですわ。だって可哀想なくらい日に焼けてしまっているでしょう?」
その言葉にカーター様は、声をあげて笑った。
*~*~*~*~*~*~*~*注釈~*~*~*~*~*~*~*~*~*
グランメゾン:超高級なフランス料理店で、三ツ星クラスのレストランのことをいうそうです。ここは異世界の設定なのですが、ちょっとオシャレに思えて使ってしまいました。(^_^;
この世界ではデート時の食事は男性がお金を払うのが常識です。高級なお店ではテーブルでお金を払います。女性は明細を見ないように、さりげなく化粧室に行くのがマナーとなっています。
「えっと・・・・・・なぜスカーレット様がここにいらっしゃるのですか?」
「あぁ、ごめんなさい。ご迷惑でしたよね? 今日はカーター様がオリーブ様と、有名なグランメゾンに行かれると聞いて、私も一度是非行ってみたかったのですわ。だってそこは予約がいっぱいで、なかなか入れない特別なグランメゾンだったから・・・・・・」
「そうですか」
私はそれだけしか言うことができない。
「いいよね? 君は優しい人だから許してくれるだろう? まさかスカーレットに帰れ、なんて言わないよね? あそこは予約が半年待ちの人気高級店だろう? 誰だって一緒に行きたくなるよ」
こんな状況で嫌なんて言えなかった。
言ったらまるで私が意地悪しているみたいだもの。
「はい。美味しいものは皆で食べた方が、いっそう美味しさが増しますものね」
心の中では、皆の前に『仲の良い』あるいは『気心の知れた』という言葉を入れていた。
「うふふ。優しいのですねぇ。では、早速向かいましょう。今日は紫外線が強くて嫌な日ですわね? 曇りの日か雨が良かったのに」
「そうだね。こんな日差しだと日に焼けてしまうから困るね。スカーレット、僕のジャケットで日陰を作ってあげようか? あ、ごめん、オリーブも日差しが苦手かな?」
「え? 太陽の光は好きですよ。今日の日差しは柔らかで気持ちいいです」
かつての彼は、太陽の光が人間の身体には不可欠だと言った。
でも、今はこの柔らかい日差しでさえも困ると言う。
私は時の残酷さを思い知る。人の心は移ろうもの。考え方も好みも、少年の頃のままではいられないのね。私だけが変わらずに、彼を想っていたことが惨めで滑稽だった。
★*☆*
「わぁーー! 美味しい! 盛り付けも素敵だしお味も最高だわ」
「本当だ! すっごく美味しいね。ほら、オリーブも早く食べなよ」
「え、えぇ。いただきます・・・・・・」
スカーレット様と彼が微笑み合いながら向かい合って食べるなかで、私はどうしていいかわからない。
これは泣いていいの?
笑っているべきなの?
正解がわからない。
「あらぁ、このお野菜は嫌いだわ。カーター様が召し上がってくださる?」
「あぁ、いいよ。じゃぁ、スカーレットにはこちらの魚をあげよう」
「嬉しい! ありがとう。カーター様はいつも優しいのね」
食事が全て終わり、私はそっと席を立つと化粧室に行く。化粧室の鏡に映る私は悲しい顔をしていた。とても大好きな男性との初デートという顔ではない。
初めてのデートって、もっと楽しくて甘いものだって思っていたのに・・・・・・
テーブルに戻るとカーター様とスカーレット様は、相変わらず楽しげにおしゃべりをしていて、お会計はまだ済んでいないようだった。通常は男性がテーブルで会計を済ますのがマナーのはずなのに・・・・・・結局、3人分の食事代は私が払った。
★*☆*
「ねぇ、次は小物でも見ませんこと? ストールが欲しくて・・・・・・」
「私は少し気分が優れないので帰りますわ」
「あら、オリーブ様こそストールが必要ですわ。だって可哀想なくらい日に焼けてしまっているでしょう?」
その言葉にカーター様は、声をあげて笑った。
*~*~*~*~*~*~*~*注釈~*~*~*~*~*~*~*~*~*
グランメゾン:超高級なフランス料理店で、三ツ星クラスのレストランのことをいうそうです。ここは異世界の設定なのですが、ちょっとオシャレに思えて使ってしまいました。(^_^;
この世界ではデート時の食事は男性がお金を払うのが常識です。高級なお店ではテーブルでお金を払います。女性は明細を見ないように、さりげなく化粧室に行くのがマナーとなっています。
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