上 下
45 / 50

王妃様の処分は自業自得 ?(王妃様視点) ※ 残酷シーンあり ご注意くださいませ。

しおりを挟む
途中から、私だけが娼館に行かされた。

「ちょっと! 私をこんな所で働かせようと言うの? この私を! 絶対に嫌だからね!」

私の美貌はまだ衰えてはいない。だからといって、このような憂き目に遭うとは・・・・・・情けない・・・・・・

私は隣国の王族の血が入っている高貴な生まれなのに・・・・・・

「おい、ばぁさん! さっさと仕事にとりかかれ!」

命令してきた男が、粗末な服とバケツとモップを持ってきた。

あら? ・・・・・・これって・・・・・・

「おい、ばぁさん! 早く、掃除をはじめろよ! まずは、トイレ掃除からだな」

私は、自分の姿を鏡にうつす。まだまだ、充分美しく、ばぁさんと言われる歳でもなかった。

「これは、どういうことなのか・・・・・・」

私が、疑問に思っていると、その男はクスリと笑った。

「ここは、25歳までしか女と認めない娼館だぜ? あんたの歳だと、いいとこ掃除婦だよ」

「・・・・・・掃除婦・・・・・・」

酔っ払いが吐いたものが一面に広がるトイレは、臭いなんてものじゃなかった。
トイレの汚物と吐しゃ物と、アルコールのよどんだ臭いに吐き気がこみ上げてくる。

5棟並んでいる娼館のすべてのトイレ掃除をさせられる。朝から晩まで、トイレの便器を磨き続ける。
この罰はなんなのだ?

高貴な者に対する罰は死罪だ。毒か断頭台の露と消える。だからこそ、歴史のなかで語り継がれて悲劇のヒロインにも悪女にもなれるのに、この罰は・・・・・・陳腐すぎる・・・・・・

私は、このまま生きるなら、華々しく散ることを望む。歴史に残る悪女として名を残してやろう。

昼間に堂々とそこを抜け出して、歩いていると見知った馬車が通りがかった。

「止りなさい。テルス伯爵夫人。私です! 王妃です」

私が、馬車の前に駆け出すと、テルス伯爵夫人は小窓から顔をだした。

「王妃様? あら、まぁ、噂は本当だったのですね! 掃除婦になった王妃様なんて初めてですわ! あっははは」

「なにが、おかしいのです?」

私は、腹が立って叫んだ。

「だって、その理由をご存じですか? 『殺す価値もないクズだから』だそうです。あぁ、元王妃を助けると縛り首という噂もあります。あと、『私こそは元王妃だ』と言ってまわる女乞食が青空広場には、たくさんいるそうです。おもしろいですね?」

「・・・・・・」

私は、飛んできた龍が側で見ていて、薄笑いを浮かべて戻っていったことを知らなかった。

青空広場に行ってみると、たくさんの浮浪者がいて、宮廷の真似事をしていた。

「私こそが王妃ですよ! 無礼者! 私の命令がきけないの?」

「うふふ。私こそが王妃ですわ。ほら、高貴な血筋の顔がわからないのですか?」

「バカ者どもが! 私が本物だ! これを見よ! 王家の指輪がこの薬指にあるのが証拠だ。お前達はただの乞食だろう!」

私が叫ぶと、一斉に女達がこちらに振り返った。男の浮浪者達も、それに反応する。

「「「お前が本物の王妃? それなら、その指輪をおくれよ」」」
「「「本物なら、お前は、さんざん贅沢してきたんだろう?」」」
「「「お前と残酷王子は、金を湯水のように使いまくったって聞いてるよ」」」

「「「俺たちが失業したのはお前らのせいだ! 責任をとれよ?」」」 「「「指輪をくれーーぇ」」」 「「「殴らせろ!」」」

「「「俺は蹴りたい」」」 

そのキチガイの集団の怒りがどんどん増幅していくのがわかる。

棒きれを持って、近づいてくる者。鎌のようなものを持ってくる者。散々に叩かれて殴られて、刺されて・・・・・・

私は、もう決して目覚めることはなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

完結/クラスメイトの私物を盗んだ疑いをかけられた私は王太子に婚約破棄され国外追放を命ぜられる〜ピンチを救ってくれたのは隣国の皇太子殿下でした

まほりろ
恋愛
【完結】 「リリー・ナウマン! なぜクラスメイトの私物が貴様の鞄から出て来た!」 教室で行われる断罪劇、私は無実を主張したが誰も耳を貸してくれない。 「貴様のような盗人を王太子である俺の婚約者にしておくわけにはいかない! 貴様との婚約を破棄し、国外追放を命ずる! 今すぐ荷物をまとめて教室からいや、この国から出ていけ!!」 クラスメイトたちが「泥棒令嬢」「ろくでなし」「いい気味」と囁く。 誰も私の味方になってくれない、先生でさえも。 「アリバイがないだけで公爵家の令嬢を裁判にもかけず国外追放にするの? この国の法律ってどうなっているのかな?」 クラスメイトの私物を盗んだ疑いをかけられた私を救って下さったのは隣国の皇太子殿下でした。 アホ王太子とあばずれ伯爵令嬢に冤罪を着せられたヒロインが、ショタ美少年の皇太子に助けてられ溺愛される話です。 完結、全10話、約7500文字。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 他サイトにも掲載してます。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

うしろめたいお兄様へ。

希猫 ゆうみ
恋愛
婚約者ウォルトンから結婚後に愛人を囲うと宣言された伯爵令嬢フランシスカ。 両親に婚約破棄を訴えたが相手にされなかった。 父親であるマスグレイヴ伯爵にはかつて正妻と二人の愛人がいたらしい。 一人の愛人が去り正妻が病死した後、もう一人の愛人が後妻となった。それがフランシスカの母親。 だから「大騒ぎするな」と呆れられてしまったのだ。 両親の倫理観も自身の結婚も断固として受け入れられないフランシスカ。 教会に相談すると贖罪の為の寄付か修道院に入るよう言われてしまった。 この身が罪で穢れているなら…… 汚らわしい血しか流れていない体なら…… シスターになると決意したフランシスカに父親は猛反対し過酷な選択を突き付ける。 大人しくウォルトンと結婚するか、死人として隠れて一生を地下牢で暮らすか。 「そんな……酷い……!」 しかし絶望したフランシスカに意外な代替案が示された。 「お前の腹違いの兄を連れて来い。そうすれば兄妹でマスグレイヴ伯爵家を継げるようにしてやろう」 非道な提案だったがフランシスカは不遇な兄を助けられるならと奮い立つ。 なぜならその腹違いの兄バレットという男は今、出自のせいで監獄に閉じ込められているというのだから……

恋人に捨てられた私のそれから

能登原あめ
恋愛
* R15、シリアスです。センシティブな内容を含みますのでタグにご注意下さい。  伯爵令嬢のカトリオーナは、恋人ジョン・ジョーに子どもを授かったことを伝えた。  婚約はしていなかったけど、もうすぐ女学校も卒業。  恋人は年上で貿易会社の社長をしていて、このまま結婚するものだと思っていたから。 「俺の子のはずはない」  恋人はとても冷たい眼差しを向けてくる。 「ジョン・ジョー、信じて。あなたの子なの」  だけどカトリオーナは捨てられた――。 * およそ8話程度 * Canva様で作成した表紙を使用しております。 * コメント欄のネタバレ配慮してませんので、お気をつけください。 * 別名義で投稿したお話の加筆修正版です。

私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。

Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。 そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。 二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。 自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

「不吉な子」と罵られたので娘を連れて家を出ましたが、どうやら「幸運を呼ぶ子」だったようです。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
マリッサの額にはうっすらと痣がある。 その痣のせいで姑に嫌われ、生まれた娘にも同じ痣があったことで「気味が悪い!不吉な子に違いない」と言われてしまう。 自分のことは我慢できるが娘を傷つけるのは許せない。そう思ったマリッサは離婚して家を出て、新たな出会いを得て幸せになるが……

処理中です...