38 / 50
リリィが、またしても・・・・・・(グレイス視点)
しおりを挟む
その水晶が割れ、黄金の小さな龍は、ゆっくりと明け放れた窓から外に出ていった。
私達は、後を追って、窓の外をみあげた。龍は、嬉しそうに天に昇りながら巨大になっていき、ゆったりと空を一回りした。
そうして、その大きな体を人の姿に変え窓から戻ってきた。
黄金の髪と瞳。日に焼けた小麦色の肌は、野性的でとても美しい男性だった。
「ふふふ。久しぶりに空を舞いました。私の名はミカエル。さて、私の主よ。貴方のお望みをお聞きしましょう」
ミカエル様は、アレクサ女公爵様にお尋ねになった。
アレクサ女公爵様は、事の経緯をご説明になる。
「あぁ、愚かな王子様だ。私が、ひねり潰してもいいのですがね。王宮ごと、この尾で吹き飛ばすか、王宮ごと火を吐いて焼いてしまいましょうか?」
「だめです! 王宮にはお父様がいますもの」
「そうですよ。兄上もいるし、王宮にはこの戦いには無縁な多くの侍女や使用人達がたくさんいますからね」
王女様とお義母様は、慌ててミカエル様を止めた。
「ふむ。ならば、私は人の姿のままで、戦いましょう。私に、適当な剣を下さいますか? あぁ、それで良いです」
ミカエル様が、剣を持つとその剣の刃のあたりが赤く色づいた。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
「この屋敷全体が王家の騎士達に取り囲まれました!」
影の報告で、また外を眺めると、騎士達の軍勢が屋敷をぐるりと取り囲み、火の矢を放ち始めていた。影達は、騎士が剣を振りかざす前に後ろに回り込み、攻撃する。皆、投げナイフの達人のようで、ナイフを立て続けに投げては身をかわし、その動きはとても素早かった。
圧倒的に、こちらの勝利かと思ったのも、つかのま、
「おい! アレクサンダーーー!これを見ろ! リリィが死んでもいいのか?」
総騎士団長のルシファー様が車椅子の方に剣を突きつけて叫んだ。
まだ充分には回復していないリリィが車椅子に縛られているのが見える。
まさか・・・・・・病院には護衛騎士を10人以上は配置していたのに・・・・・・
「ふふふ。残念でしたね? あの病院の医院長は私の昔からの友人よ?」
王妃様が、嬉しそうに言うと、リリィの怪我をしている足を蹴った。
「ほら。卑しい侍女よ。助けてくれ、と主に叫べ!」
王妃様は意地悪くおっしゃった。
リリィは叫んだ。
「私のことは、助けないでください! この命はグレイス様にいただいたものです。もう、一生分、幸せを味わえました。こんな私が侍女になれただけで充分なんです!」
「ふん。お涙ちょうだい茶番劇とはこのことだ。こんな侍女でも、お前らには大事なのだろう? その黒装束のやたら強い者どもに、戦うのをやめさせろ! 本当に殺すよ? この侍女、我慢強いみたいだが、試してみたい毒薬があるんだ。どれぐらい苦痛なのかな。あっははは」
小さな小瓶を開けてリリィに飲まそうとするふりをしながら、王子様が、愉快そうに笑ったのだった。
私達は、後を追って、窓の外をみあげた。龍は、嬉しそうに天に昇りながら巨大になっていき、ゆったりと空を一回りした。
そうして、その大きな体を人の姿に変え窓から戻ってきた。
黄金の髪と瞳。日に焼けた小麦色の肌は、野性的でとても美しい男性だった。
「ふふふ。久しぶりに空を舞いました。私の名はミカエル。さて、私の主よ。貴方のお望みをお聞きしましょう」
ミカエル様は、アレクサ女公爵様にお尋ねになった。
アレクサ女公爵様は、事の経緯をご説明になる。
「あぁ、愚かな王子様だ。私が、ひねり潰してもいいのですがね。王宮ごと、この尾で吹き飛ばすか、王宮ごと火を吐いて焼いてしまいましょうか?」
「だめです! 王宮にはお父様がいますもの」
「そうですよ。兄上もいるし、王宮にはこの戦いには無縁な多くの侍女や使用人達がたくさんいますからね」
王女様とお義母様は、慌ててミカエル様を止めた。
「ふむ。ならば、私は人の姿のままで、戦いましょう。私に、適当な剣を下さいますか? あぁ、それで良いです」
ミカエル様が、剣を持つとその剣の刃のあたりが赤く色づいた。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
「この屋敷全体が王家の騎士達に取り囲まれました!」
影の報告で、また外を眺めると、騎士達の軍勢が屋敷をぐるりと取り囲み、火の矢を放ち始めていた。影達は、騎士が剣を振りかざす前に後ろに回り込み、攻撃する。皆、投げナイフの達人のようで、ナイフを立て続けに投げては身をかわし、その動きはとても素早かった。
圧倒的に、こちらの勝利かと思ったのも、つかのま、
「おい! アレクサンダーーー!これを見ろ! リリィが死んでもいいのか?」
総騎士団長のルシファー様が車椅子の方に剣を突きつけて叫んだ。
まだ充分には回復していないリリィが車椅子に縛られているのが見える。
まさか・・・・・・病院には護衛騎士を10人以上は配置していたのに・・・・・・
「ふふふ。残念でしたね? あの病院の医院長は私の昔からの友人よ?」
王妃様が、嬉しそうに言うと、リリィの怪我をしている足を蹴った。
「ほら。卑しい侍女よ。助けてくれ、と主に叫べ!」
王妃様は意地悪くおっしゃった。
リリィは叫んだ。
「私のことは、助けないでください! この命はグレイス様にいただいたものです。もう、一生分、幸せを味わえました。こんな私が侍女になれただけで充分なんです!」
「ふん。お涙ちょうだい茶番劇とはこのことだ。こんな侍女でも、お前らには大事なのだろう? その黒装束のやたら強い者どもに、戦うのをやめさせろ! 本当に殺すよ? この侍女、我慢強いみたいだが、試してみたい毒薬があるんだ。どれぐらい苦痛なのかな。あっははは」
小さな小瓶を開けてリリィに飲まそうとするふりをしながら、王子様が、愉快そうに笑ったのだった。
14
お気に入りに追加
4,492
あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

〖完結〗その愛、お断りします。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った……
彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。
邪魔なのは、私だ。
そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。
「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。
冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない!
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから
咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。
そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。
しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる