13 / 50
マイケルにグレイスを会わせたら・・・・・・(アレクサンダーside)
しおりを挟む
マイケルの屋敷に偽グレイスが、入り浸っていると聞き、様子を見に来たら本当に偽物は頻繁に来るようで、この日も子供を抱いてやって来た。
よくも、まぁ、図々しいにも程があると思い、じっと見ていたら、なぜか頬を染めてもじもじされた。
この偽物は人妻なのに、なにを考えているのだろう?
アイザックの話は愉快だった。『虐められているから職場を変えてくれ』だと?『もっと良い職場に移せ』だと?
甘ったれるのもいい加減にしろ! 自分の実力ではなく、マイケルの権力を利用して職場を得ようとするからそんなことになるんだ。
誰だって、良い職場に行きたい。皆、必死で働いているんだ。なのに、ひょこっとやって来て、周りが歓迎すると思う方が間違っている。そこは、我慢して地道に働いて認めてもらうしかないのだ。
私のような勇者だとて、なりたての時は、やっかみやら嫉妬で散々嫌がらせをされたものだ。そうして、魔物との戦いで、生きるか死ぬかの経験をしてきた私にとって、職場の虐めぐらいで偽物に泣きついた男の薄っぺらさは、もう笑うかしない。情けない男だ。
しかも、マイケルは偽物にこう言ったのだ。
「あぁ。なんでもグレイスのお願いは聞こう。世界一大事な妹だからね」
おい、おい。マイケルよ。お前の目は節穴か? こいつは真っ赤な偽物だぞ! しかも、お小遣いまで渡すとは!
まぁ、ここまでしてくれれば、この偽物は疑わず増長するとは思うがな・・・・・・
終いには、この偽者は、とんでもないことを言い出した!
「お兄様! この子の新しい帽子が欲しいのです。この子はカリブ伯爵の甥ですよ? もっと良いお洋服も着せてあげたいですわ。あぁ、そう言えば、お兄様は結婚しないの? このまま独身で跡継ぎがいなければ、この子がカリブ伯爵でしょう?」
あっははは! こんな愉快な話があるか? あの子供は、アイザックとこの偽物の子供だ。カリブ伯爵家の血の一滴も入っていない者が継げるわけがない。もし、そんな真似をする奴がいてそれがバレれば極刑になる。
なんと、愚かな女だ。ふと、親友を見ればなんと朗らかに笑っているじゃないか・・・・・・あぁ、なんて残念な親友だ・・・・・・妹の区別もつかないとは・・・・・・
このレイラ男爵達に、さも作戦がうまくいっていると思い込ませたかった。だからこそ、マイケルには本物のグレイスが私の屋敷にいると言わないでいたが、こうもあっさり偽物に騙されてニコニコしている親友に呆れてしまった。
偽者は、マイケルからお小遣いを貰って意気揚々と帰っていった。私は、少し意地悪がしたくなった。グレイスに会わせよう。マイケルはわからないだろう。私の恋人と噂される”異国の姫”に、前からマイケルは会いたがっていたのだ。
私は、従者にグレイスをカリブ伯爵家に連れてくるように言った。
「マイケルよ。私の恋人に会いたがっていただろう? これから呼んでいいかい? 彼女も君に会いたがっていた」
「あぁ、親友の妻になる女性だろう? もちろん、会いたいさ。どこの姫君だい? 婚約はしたのだろう?」
「いや、婚約はしていない。いずれ、結婚するつもりではいるが、今はその時期ではない」
「やれ、やれ。このイケメンの英雄は、女にモテモテすぎるな。いったい、何人の女を囲っているのか」
マイケルは呆れ顔で笑った。私は、内心、ムッとする。私は女にはモテる、しかし、それほどいい加減な男ではないつもりだ。実際、マイケルの妹には、手は出していないし他に囲っている女もいない。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
グレイスは、ベールをしていなかった。長い金髪は優雅にカールをさせて片側にたらし、小さな白い花をいくつも髪に挿していた。淡い水色のドレスは清楚でグレイスの抜けるような青空にも似た瞳によくあっていた。
マイケルは、和やかに挨拶している。やはり、気がつかないか。気が良い奴なのに残念な男だと思った。
「天女のように美しい姫君に、プレゼントを差し上げたい。両手を広げていただけませんか?」
マイケルは、見事な真珠のネックレスをグレイスの手のひらに、そっと載せた。
そして、私のほうにゆっくりと素晴らしい微笑を浮かべながら振り返ると、私に向かってパンチを繰り出したのだった。
よくも、まぁ、図々しいにも程があると思い、じっと見ていたら、なぜか頬を染めてもじもじされた。
この偽物は人妻なのに、なにを考えているのだろう?
アイザックの話は愉快だった。『虐められているから職場を変えてくれ』だと?『もっと良い職場に移せ』だと?
甘ったれるのもいい加減にしろ! 自分の実力ではなく、マイケルの権力を利用して職場を得ようとするからそんなことになるんだ。
誰だって、良い職場に行きたい。皆、必死で働いているんだ。なのに、ひょこっとやって来て、周りが歓迎すると思う方が間違っている。そこは、我慢して地道に働いて認めてもらうしかないのだ。
私のような勇者だとて、なりたての時は、やっかみやら嫉妬で散々嫌がらせをされたものだ。そうして、魔物との戦いで、生きるか死ぬかの経験をしてきた私にとって、職場の虐めぐらいで偽物に泣きついた男の薄っぺらさは、もう笑うかしない。情けない男だ。
しかも、マイケルは偽物にこう言ったのだ。
「あぁ。なんでもグレイスのお願いは聞こう。世界一大事な妹だからね」
おい、おい。マイケルよ。お前の目は節穴か? こいつは真っ赤な偽物だぞ! しかも、お小遣いまで渡すとは!
まぁ、ここまでしてくれれば、この偽物は疑わず増長するとは思うがな・・・・・・
終いには、この偽者は、とんでもないことを言い出した!
「お兄様! この子の新しい帽子が欲しいのです。この子はカリブ伯爵の甥ですよ? もっと良いお洋服も着せてあげたいですわ。あぁ、そう言えば、お兄様は結婚しないの? このまま独身で跡継ぎがいなければ、この子がカリブ伯爵でしょう?」
あっははは! こんな愉快な話があるか? あの子供は、アイザックとこの偽物の子供だ。カリブ伯爵家の血の一滴も入っていない者が継げるわけがない。もし、そんな真似をする奴がいてそれがバレれば極刑になる。
なんと、愚かな女だ。ふと、親友を見ればなんと朗らかに笑っているじゃないか・・・・・・あぁ、なんて残念な親友だ・・・・・・妹の区別もつかないとは・・・・・・
このレイラ男爵達に、さも作戦がうまくいっていると思い込ませたかった。だからこそ、マイケルには本物のグレイスが私の屋敷にいると言わないでいたが、こうもあっさり偽物に騙されてニコニコしている親友に呆れてしまった。
偽者は、マイケルからお小遣いを貰って意気揚々と帰っていった。私は、少し意地悪がしたくなった。グレイスに会わせよう。マイケルはわからないだろう。私の恋人と噂される”異国の姫”に、前からマイケルは会いたがっていたのだ。
私は、従者にグレイスをカリブ伯爵家に連れてくるように言った。
「マイケルよ。私の恋人に会いたがっていただろう? これから呼んでいいかい? 彼女も君に会いたがっていた」
「あぁ、親友の妻になる女性だろう? もちろん、会いたいさ。どこの姫君だい? 婚約はしたのだろう?」
「いや、婚約はしていない。いずれ、結婚するつもりではいるが、今はその時期ではない」
「やれ、やれ。このイケメンの英雄は、女にモテモテすぎるな。いったい、何人の女を囲っているのか」
マイケルは呆れ顔で笑った。私は、内心、ムッとする。私は女にはモテる、しかし、それほどいい加減な男ではないつもりだ。実際、マイケルの妹には、手は出していないし他に囲っている女もいない。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
グレイスは、ベールをしていなかった。長い金髪は優雅にカールをさせて片側にたらし、小さな白い花をいくつも髪に挿していた。淡い水色のドレスは清楚でグレイスの抜けるような青空にも似た瞳によくあっていた。
マイケルは、和やかに挨拶している。やはり、気がつかないか。気が良い奴なのに残念な男だと思った。
「天女のように美しい姫君に、プレゼントを差し上げたい。両手を広げていただけませんか?」
マイケルは、見事な真珠のネックレスをグレイスの手のひらに、そっと載せた。
そして、私のほうにゆっくりと素晴らしい微笑を浮かべながら振り返ると、私に向かってパンチを繰り出したのだった。
27
お気に入りに追加
4,492
あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

〖完結〗その愛、お断りします。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った……
彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。
邪魔なのは、私だ。
そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。
「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。
冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない!
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる