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17 妖精王の愛し子

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「この髪色は、今変わられたのですか? だとしたらあなた様は緑の妖精王の加護を受けていらっしゃいます」

「まさか、私は普通の人間ですわ」

「妖精王が加護する基準はわたしにはわかりません。ですが、後天的にこの髪色になられたというのなら間違いはありません。妖精王に選ばれた人間は容姿が二度変化すると言われております。一度は白い絹糸のような髪になり、その後鮮やかな緑に変わります」

「私は妖精王様の加護を受けるような優れた人間ではありませんわ」

 キャサリン王妃殿下やレオナード王太子殿下から否定されることが多かった私には自分の価値が信じられない。

「俺の最愛は存在するだけで尊い。妖精王は人を見る目がある。だよな? お前達もそう思うだろう?」

 そこに居並ぶ騎士や侍女達に訊ねるヴァルナス皇太子殿下はひとつの答えしか許さない。少し横暴な気もして不安に感じていると、騎士達は豪快な笑いを響かせた。

「わっはははは! もちろん、殿下の最愛はそこにいらっしゃるだけで充分です。番とはそういうものです」
「これでブリュボン帝国は安泰です! 婚約者も作ろうとしないので内心、俺達は焦っていましたよーー」

「俺はきっと会えると信じていた。ステフは見目麗しく性格もとても良くて可愛い。これ以上の女性は世界中を探してもいない」

 なぜ今日会ったばかりなのに性格がわかるの? やっぱりなにか理想を押しつけてきそうで怖い。いずれはレオナード王太子殿下のように彼も・・・・・・

「ステフ、今他の男のことを考えたな?」
「え?」
「番の俺にはわかるんだよ。ステフの気持ちが心に響いてくるんだ。昔の婚約者を思いだし嫌な気分になっている。違うか?」
 答えないでいるとしっかりと抱きしめられ髪にキスが落ちてくる。
「俺が上書きしてやるから大丈夫だ。思い出すだけで悲しくなるようなクソは忘れろ」

 私も早く忘れたい。もう少しも好きではないけれど、すぐになかったことにはできない。


 ❁.。.:*:.。.✽.


 その三日後、草も生えなかった荒れた土地に緑が芽吹きだした。修道院が建つこのあたりの土壌は酸性化している為、本来なら緑は望めないはずだと修道女達は首を傾げる。

「本当におかしいわね。このように草まで生えるなんて」

 芽がでてきたばかりの名も知らぬ植物に手を触れれば、しっかりとした茎になりすくすくと高く伸びていく。やがて葉の形が次第にはっきりと現れた。

「これはかなり前に試しに植えてみた空豆だと思いますよ。驚きましたねぇ。まさに緑の妖精王の愛し子でいらっしゃいますわ」

 修道院長や修道女が私にひざまづく。それに戸惑っている間もなく、馬車が一台私達の前にとまった。そこから降りてきたのは赤い髪の・・・・・・
 


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