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15 髪の色が変わる?

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  この国の王族に流れている血、それは獅子(ライオン)の血だった。伝説だと思っていたけれど、この国の人々はすっかり信じ込んでいて、王族がその一生の伴侶となる番を見つけたら、それがどのような身分や立場でも応援するという。
 魂の底から求める最愛、それを見つけられる確率は極めて低いと聞いている。

「さぁて、セント・ニコライ修道院に送ってあげよう。すぐにでも護衛をつけるぞ。専属騎士が10人は必要だし、侍女もつける。それと必要な物はなんでも言うんだ。いいか?」

「そのようなものは必要ありません。私はひっそりと暮らしたいのですわ」

「そんなことできるはずないだろう? 俺の番だとこうして認識された以上は、その噂は帝国じゅうに広まる」

 まずいわ。そんなに目立つことは命取りよ。私はルコント王国では死んだことになっているのに・・・・・・思わず目を伏せ小さくため息をつくとヴァルナス皇太子は朗らかに笑った。

「なにか訳ありなのだろう? 貴族の令嬢が身分を隠して修道院に身を寄せているんだ。国はどこだ? 誰がステフを苦しめた? 俺がそいつらをすべて滅ぼしてやろう」

「ひっ・・・・・・」

「いや、もちろん冗談だ」

 すぐに猛々しい表情を引っ込め、貴公子としての美麗な笑みを浮かべた。私が怖がることはけっしてしないと約束してくれる。

「両親と私が無事であればなにもしていただかなくて良いのです。しばらくの間は静かに身を隠しているようにと、お母様は手紙に書いてくださいました」

「そうか。母親の言うことは守った方がいい。ならば、しばらく修道院で生活しろ。俺に任せろ。大丈夫だ」

 深くて甘い声が何度も私を安心させるように励ます。王家の馬車で修道院に戻ると、私を抱きかかえそのまま建物のなかに入ろうとした。

「自分の足で歩けますのでっ! もぉ、離してくださいませ」

 耐えきれなくて泣きそうになった。この方を信じて良いのかダメなのかわからない。だって、私は普通の人間で番のことはわからない。人間の世界の一目惚れなど信用できないものだし、貴族だった私にはそのような経緯で恋に落ちたことはない。
 幼い頃から婚約者が決められ、その方に尽くすように育てられた私には、恋愛結婚など考えたこともないのよ。このような急な展開には頭がついていけないわ。誰よりも愛おしいという思いがこもった眼差し、これは信じていいのかしら?

「やっぱり、君では無かったよ。勘違いだった。すまない」

 そんな言葉がいつか私に告げられそうで。もし、そうなったら今度こそ私の心は壊れてしまう。だから・・・・・・信じない・・・・・・

「どうした? それほど自分の足で歩きたいのか? しかし、修道院の床には絨毯が敷いていない。もし転んだら、確実に膝をすりむくぞ。すぐにふかふかの絨毯を手配する」

 お願い。そんなに優しくしないで!

 私はあのレオナード王太子殿下に裏切られたことが忘れられない。まだまだ、心は傷つき痛みは胸に広がったままよ。いきなりもっと素敵な男性に告白されても、すぐに気持ちは切り替わらない。それどころか私は、なおさら彼に疑いの目を向けてしまう。これはきっと嘘だ、間違いだと。

「どうした? 難しい顔をして? 君は笑っていれば良い。大丈夫だよ、俺がいる。俺がそうさせてやる」

 女性が嬉し泣きしたくなるような言葉をおっしゃってくださるのよ。

 神様、この方を信じて良いのですか? 私は自分に自信が持てません・・・・・・ 

 そう心のなかで呟いた瞬間、アデラインが叫んだ。

「お嬢様! 白い髪が緑になってきております!」

 
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