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4 去って行ったアデライン
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「あぁ、アデラインは辞めましたよ。故郷に帰って結婚するそうです」
「そんなはずないわ。 あの アデラインが 私に黙って辞めてしまうはずがないもの」
物心ついた時から側にいてくれたアデラインは私には姉のような存在だったのに。私の心には深い衝撃が走り、言葉に言い尽くせないほどの驚きと悲しみが広がっていく。
「 実はね、 アデラインには もうだいぶ前から結婚のお話があって、ステファニーの為に先延ばしをしていたのよ。でも今は立派なレオナード王太子殿下という婚約者もできて、自分の役目はもう終わったと言っていたわ。ステファニーと会うと、ここを去れなくなるからと言っていましたよ 」
私はアデラインに裏切られたような気持ちになった。 まだまだ一緒にいて欲しかった。 来年には 王立貴族学園に通う歳になる。 新しく私を待ち受けている学園生活に緊張もしていたところに、最も信頼していた専属侍女がいなくなって、不安が心の奥底に広がる。
せめて最後だけでも言葉を交わしたかった。
「今までありがとう」 と、伝えられるだけでも良かったのに。 本当にアデラインがここを去ることを望むのならば、 彼女の結婚生活の幸せを願って、辛いけれど私はきっと祝福できたと思う。こんなふうに黙って行ってしまうなんてあんまりだと思った。
❁.。.:*:.。.✽.
翌日はまた王宮に向かい講義を受けた。この日は主にルコント王国と交流のある異国の言語の習得や対話術、パブリックスピーキングについて学ぶ。パブリックスピーキングとは、公の場で話すことすべてを指すのだけれど、聞き手の心を動かし、共感や行動を促すことを目的としている。
「よろしいですか? 人前でただ単にお話をすれば良いというわけではないのです。話す内容や順序を緻密に構成し、服装や声色などにも配慮しなければいけません。さらには、身振り手振りを加えて、いきいきとした表情も大切ですわ」
語学のイスジ先生の話が全く頭に入ってこない。思い浮かぶのはアデラインの顔ばかりで・・・・・・
「ジュベール侯爵令嬢、全く私の講義に興味がないようですね。今日はもう終わりにしましょう。やる気のない生徒に教えることほど無駄なことはございませんからね」
「申し訳ありません。ただ私の専属侍女が突然辞めてしまって・・・・・・」
「実にくだらないことです。使用人が辞めただけではありませんか。侍女のかわりはたくさんおります」
アデラインの代わりなんているわけがない。幼い頃から仕えてくれた大事な専属侍女なのに。私はずっと一緒にいられると思い込んでいたのよ。
講義後のレオナード王太子殿下との束の間の寛ぎのひとときに、アデラインのことを相談してみる。けれど 私が期待していた反応は得られなかった。
「 使用人はいつかはやめる。家族ではないんだからね」
そんな風に言われて、納得するしかなかった。そうして、ますます私はレオナード 王太子殿下に依存していく。彼はどこまでも優しく私を慰めてくれたから。アデラインがいなくなり、彼しか私にはいなくなったから。
❁.。.:*:.。.✽.
王立貴族学園に入学すると、王家からお迎えの馬車が来る。そこにはレオナード王太子殿下もいらっしゃり、私達は一緒に学園に向かう。これは毎朝のルーティンになっており、私達の関係は日ごとに深まっていると感じていたわ。
愛し合っている。
信頼し合っている。
そう思っていたのに・・・・・・
最終学年になった頃にお父様が手掛けていた事業が失敗し、手広く行なっていた投資先が続けざまに破綻してしまう。さらに、私のゴールデンブロンドの髪が・・・・・・
「そんなはずないわ。 あの アデラインが 私に黙って辞めてしまうはずがないもの」
物心ついた時から側にいてくれたアデラインは私には姉のような存在だったのに。私の心には深い衝撃が走り、言葉に言い尽くせないほどの驚きと悲しみが広がっていく。
「 実はね、 アデラインには もうだいぶ前から結婚のお話があって、ステファニーの為に先延ばしをしていたのよ。でも今は立派なレオナード王太子殿下という婚約者もできて、自分の役目はもう終わったと言っていたわ。ステファニーと会うと、ここを去れなくなるからと言っていましたよ 」
私はアデラインに裏切られたような気持ちになった。 まだまだ一緒にいて欲しかった。 来年には 王立貴族学園に通う歳になる。 新しく私を待ち受けている学園生活に緊張もしていたところに、最も信頼していた専属侍女がいなくなって、不安が心の奥底に広がる。
せめて最後だけでも言葉を交わしたかった。
「今までありがとう」 と、伝えられるだけでも良かったのに。 本当にアデラインがここを去ることを望むのならば、 彼女の結婚生活の幸せを願って、辛いけれど私はきっと祝福できたと思う。こんなふうに黙って行ってしまうなんてあんまりだと思った。
❁.。.:*:.。.✽.
翌日はまた王宮に向かい講義を受けた。この日は主にルコント王国と交流のある異国の言語の習得や対話術、パブリックスピーキングについて学ぶ。パブリックスピーキングとは、公の場で話すことすべてを指すのだけれど、聞き手の心を動かし、共感や行動を促すことを目的としている。
「よろしいですか? 人前でただ単にお話をすれば良いというわけではないのです。話す内容や順序を緻密に構成し、服装や声色などにも配慮しなければいけません。さらには、身振り手振りを加えて、いきいきとした表情も大切ですわ」
語学のイスジ先生の話が全く頭に入ってこない。思い浮かぶのはアデラインの顔ばかりで・・・・・・
「ジュベール侯爵令嬢、全く私の講義に興味がないようですね。今日はもう終わりにしましょう。やる気のない生徒に教えることほど無駄なことはございませんからね」
「申し訳ありません。ただ私の専属侍女が突然辞めてしまって・・・・・・」
「実にくだらないことです。使用人が辞めただけではありませんか。侍女のかわりはたくさんおります」
アデラインの代わりなんているわけがない。幼い頃から仕えてくれた大事な専属侍女なのに。私はずっと一緒にいられると思い込んでいたのよ。
講義後のレオナード王太子殿下との束の間の寛ぎのひとときに、アデラインのことを相談してみる。けれど 私が期待していた反応は得られなかった。
「 使用人はいつかはやめる。家族ではないんだからね」
そんな風に言われて、納得するしかなかった。そうして、ますます私はレオナード 王太子殿下に依存していく。彼はどこまでも優しく私を慰めてくれたから。アデラインがいなくなり、彼しか私にはいなくなったから。
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