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4 アニー視点(リリの妹)
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「アニー、私はこれから奇行にはしるわ。けれど、心配しないでちょうだい。今は言えないけれど、私を信じてどうかなにも言わないで」
お姉様は突然そんなことを言いだし、確かにあり得ないことを次々としていった。
あのプライドの高い聡明なお姉様が愚鈍なロメオを捨てもせず、すがりついたのだ! この男は従姉妹のアンナをいつだって連れて歩く恥知らずなのに!
お姉様の友人達も同じ事を言われたようで、皆困惑して遠巻きに見ていることしかできなかった。図に乗ったアンナとロメオは夜会で姉を蔑むことまでしていたのに!
「お姉様! 本当にこのまま結婚なさるおつもりですか? 聞けばあのアンナは愛人として別邸に住まわせると言うじゃありませんか? 新婚でこれはないですよね? どうか婚約破棄を!」
私は必死になって止めたのに、ただ優雅に微笑むだけで聞き入れてはくださらなかった。
「お父様、お母様! お姉様はきっと頭がおかしくなったのでしょうか? こんなふざけた男なんて捨ててしまえばいいのに!」
「私達はリリの思うままにさせてあげたいのよ」
両親は悲しい顔のまま、クビを横に振った。
――おかしい。なにかがとてもおかしい!
――お姉様も両親も気が狂ってしまったの?
私はなすすべもなくお姉様があのクズと結婚するのを見ていた。結婚式は盛大に行われお姉様は薔薇のように美しかった。
アンナは愛人として離れに屋敷を与えられ、お姉様はとても大事に丁重にその女を扱っていた。顔には悲しみと諦めと苦悶の表情を浮かべながら。
それから半年、ロメオとアンナは夜会を開いては好き勝手に遊び回り、なんの義務をはたさず権利ばかりを主張するのだった。
「私は次期侯爵になるのだから、使えるお金をもっと増やしてほしい!」
「承知しました」
お姉様達夫婦の会話は呆れてしまうほどロメオ様が金品をねだるだけの会話しかない。私は侍女達にその内容を逐一書き留めておくように言ったぐらいだ。
ーーそもそも、次期侯爵はお姉様だ。ロメオはただの婿養子、自分の立場がわかっていないにもほどがある。
そして、あの事件は起こった。お姉様が結婚して半年ほど経ったある日の夜会。それは我がマスカ侯爵家で開かれた盛大なもので、国王陛下や王妃殿下もいらっしゃる大がかりなものだった。
そこにあり得ないぐらい豪華な衣装をまとった愛人アンナとロメオが現れたのだ。
――このような王族も列席する夜会で愛人を伴って現れる婿なんて前代未聞の出来事よ!
――あれではお姉様の面目は丸潰れよ!
それでもお姉様は、それを悲しそうに見ていた。両親とお姉様に私が国王陛下夫妻と和やかにお話をしているこちらに、その二人は嬉しそうに近づいて来た。
「国王陛下、王妃殿下。私、ロメオ様のパートナーのアンナと申します・・・・・・」
「パートナー? 妻はリリでしょうに? しかも婿の分際で愛人を離れに住まわす? 噂は本当だったのね? 陛下、こんなバカな話ってありませんわ」
王妃殿下は憤りをあらわにした。
もともと王妃殿下は倫理的に曲がったことをする人間が大嫌いなのだ。
「王妃殿下。いいのです。それよりロメオ様にお願いがありますわ。シャンパンを飲み過ぎたみたいですの。水を一杯持ってきてくださらない?」
「いいとも、ちょっと待っていて」
満面の笑みで水を持ってきたロメオにお姉様は、最高にいい笑顔をした。
「ロメオ様にアンナ様! 私はあなた方を許しますわ」
そう言ってその水を一気に飲み干したお姉様は、次の瞬間血を吐いて倒れたのだった。
お姉様は突然そんなことを言いだし、確かにあり得ないことを次々としていった。
あのプライドの高い聡明なお姉様が愚鈍なロメオを捨てもせず、すがりついたのだ! この男は従姉妹のアンナをいつだって連れて歩く恥知らずなのに!
お姉様の友人達も同じ事を言われたようで、皆困惑して遠巻きに見ていることしかできなかった。図に乗ったアンナとロメオは夜会で姉を蔑むことまでしていたのに!
「お姉様! 本当にこのまま結婚なさるおつもりですか? 聞けばあのアンナは愛人として別邸に住まわせると言うじゃありませんか? 新婚でこれはないですよね? どうか婚約破棄を!」
私は必死になって止めたのに、ただ優雅に微笑むだけで聞き入れてはくださらなかった。
「お父様、お母様! お姉様はきっと頭がおかしくなったのでしょうか? こんなふざけた男なんて捨ててしまえばいいのに!」
「私達はリリの思うままにさせてあげたいのよ」
両親は悲しい顔のまま、クビを横に振った。
――おかしい。なにかがとてもおかしい!
――お姉様も両親も気が狂ってしまったの?
私はなすすべもなくお姉様があのクズと結婚するのを見ていた。結婚式は盛大に行われお姉様は薔薇のように美しかった。
アンナは愛人として離れに屋敷を与えられ、お姉様はとても大事に丁重にその女を扱っていた。顔には悲しみと諦めと苦悶の表情を浮かべながら。
それから半年、ロメオとアンナは夜会を開いては好き勝手に遊び回り、なんの義務をはたさず権利ばかりを主張するのだった。
「私は次期侯爵になるのだから、使えるお金をもっと増やしてほしい!」
「承知しました」
お姉様達夫婦の会話は呆れてしまうほどロメオ様が金品をねだるだけの会話しかない。私は侍女達にその内容を逐一書き留めておくように言ったぐらいだ。
ーーそもそも、次期侯爵はお姉様だ。ロメオはただの婿養子、自分の立場がわかっていないにもほどがある。
そして、あの事件は起こった。お姉様が結婚して半年ほど経ったある日の夜会。それは我がマスカ侯爵家で開かれた盛大なもので、国王陛下や王妃殿下もいらっしゃる大がかりなものだった。
そこにあり得ないぐらい豪華な衣装をまとった愛人アンナとロメオが現れたのだ。
――このような王族も列席する夜会で愛人を伴って現れる婿なんて前代未聞の出来事よ!
――あれではお姉様の面目は丸潰れよ!
それでもお姉様は、それを悲しそうに見ていた。両親とお姉様に私が国王陛下夫妻と和やかにお話をしているこちらに、その二人は嬉しそうに近づいて来た。
「国王陛下、王妃殿下。私、ロメオ様のパートナーのアンナと申します・・・・・・」
「パートナー? 妻はリリでしょうに? しかも婿の分際で愛人を離れに住まわす? 噂は本当だったのね? 陛下、こんなバカな話ってありませんわ」
王妃殿下は憤りをあらわにした。
もともと王妃殿下は倫理的に曲がったことをする人間が大嫌いなのだ。
「王妃殿下。いいのです。それよりロメオ様にお願いがありますわ。シャンパンを飲み過ぎたみたいですの。水を一杯持ってきてくださらない?」
「いいとも、ちょっと待っていて」
満面の笑みで水を持ってきたロメオにお姉様は、最高にいい笑顔をした。
「ロメオ様にアンナ様! 私はあなた方を許しますわ」
そう言ってその水を一気に飲み干したお姉様は、次の瞬間血を吐いて倒れたのだった。
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