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婚約破棄しましょう-1
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「デラノ様、明日の王家主催の学期末パーティですが、私を迎えに来る必要はございません。少々用事がございますので、どうぞ先に王宮に向かってくださいませ」
「わかったよ。でも、僕の家には貴族のような立派な馬車なんてないんだ。王宮に行くのがちょっと恥ずかしいなぁ。どうしたらいいんだろう? ああ、そうだ! キャリー様と一緒に行けばいいよね。僕たちで先に王宮へ向かうことにするよ」
「まあ、とても良い考えですわね」
本来なら、デラノはエレノアの婚約者として、こういった場面では他の貴族の男子生徒に声をかけ、馬車に同乗させてもらうのが最善策のはずである。しかし、そんな基本的な案すら思い至らず、キャリーと一緒に王宮へ行けることに浮かれていた。エレノアは冷めた眼差しでその様子を見つめたが、デラノは彼女の冷たい視線に気づくこともなく、ただ笑みを浮かべ続けていた。
王家主催の学期末パーティ当日、キャリーはデラノから贈られたルビーの指輪を誇らしげにはめ、その指輪と同じ色合いのドレスに着替えていた。彼女はマリーに手伝わせながら、デラノとの関係を得意げに話し続けていた。
マリーはキャリーの底知れぬ欲深さと、不敬極まりない態度に困惑していた。キャリーの話題は常にエジャートン公爵家のエレノアを嘲笑するものか、デラノとの密会を自慢するものばかりだったからだ。
キャリーがデラノとともに王宮へ向かった後、しばらくしてクロネリー男爵が久々に屋敷へ戻ってきた。男爵はマリーに向かい、深々と頭を下げて謝罪した。
「すまなかった。今までマリーが辛いめにあっていたとは知らなかったよ。キャリーがマリーを虐げていたなんて、思ってもいなかった。キャリーは私の前ではとても素直な良い子を演じていたんだな」
クロネリー男爵の後ろから姿を現したのは、エレノアとベッカムだった。
「マリー様、今まで本当にお辛かったでしょう。私はあなたがキャリー様に使用人のように扱われていた場面を目撃しましたの。ぜひ、王家主催の学期末パーティにご同行いただきたいのです。キャリー様のこれまでの言動、とくに私やデラノ様に関することを証言していただきたくて」
エレノアは変装して屋敷を訪れた際のことを話した。マリーは驚きながらも、エレノアの行動力に尊敬の念を抱いた。そして、目の前に立つのがエジャートン公爵家の令嬢エレノアとノールズ伯爵家のベッカムであると知ると、緊張しながらも深々とカーテシーをして応じた。
「かしこまりました。私でお役に立てることがあれば、何なりとお申し付けください。キャリーお姉様は、私になんでも話していましたから。ただ……酷い暴言も多く、お耳を汚すかもしれませんが」
「大丈夫ですわ。だいたい察しがついています。キャリー様の近くにいたあなたの証言は非常に重要です。それに、この屋敷のメイドや侍女たちも何人か証人として連れて行きたいのですが」
エレノアはクロネリー男爵に協力を依頼しながら話を進めていった。
王宮内の大広間は金と白を基調とした豪華な装飾が施され、広大な舞踏会場がある。貴族の世界では、未来の婚約やビジネスに関する交渉が進むこともある場所。もちろん、ここは数々の婚約破棄宣言もされた場所でもある。
煌びやかな装いの貴族たちが集う中、国王が壇上に立ち、今期の成績優秀者を称える声が響き渡る。そのなかには、エレノアやベッカムの名前もあった。
会場は拍手に包まれたが、次の瞬間、決意に満ちた表情でエレノアがきっぱりと宣言する。
「デラノ様、ここで私はあなたとの婚約を破棄します! デラノ様に毎月渡していた『支援金』も利息をつけて、きっちり返済していただきます!」
エレノアの声は冷たく、一切の迷いがなかった。
「え? 意味がわからないよ。なぜ僕が婚約破棄されるんだい? 婚約は貴族にとって重要な約束ごとだろう? 理由もなく破棄なんて許されないはずだ」
「それがね、エレノアには婚約を破棄する正当な理由があるんだよ。自分の胸に手を当てて考えてみるんだ。全てを話して反省し、エレノアに心から謝罪したほうがいいと思うよ」
ベッカムは諭すようにデラノに言う。
「は? ベッカム様には関係ないことでしょう? それに、僕が反省することなんて何もないさ」
「デラノ様、最後のチャンスをお与えしましたのに、残念ですわ。では、どうぞ、おひとりづつ証言してください」
エレノアが冷然と言い放つと、大広間の扉が大きく開き、まずは宝石店の店主が現れた。
「おや、それはお二人でお求めになったルビーの指輪ですな。実にお似合いです!」
店主は満面の笑みを浮かべ、キャリーに語りかけたのだった。
「わかったよ。でも、僕の家には貴族のような立派な馬車なんてないんだ。王宮に行くのがちょっと恥ずかしいなぁ。どうしたらいいんだろう? ああ、そうだ! キャリー様と一緒に行けばいいよね。僕たちで先に王宮へ向かうことにするよ」
「まあ、とても良い考えですわね」
本来なら、デラノはエレノアの婚約者として、こういった場面では他の貴族の男子生徒に声をかけ、馬車に同乗させてもらうのが最善策のはずである。しかし、そんな基本的な案すら思い至らず、キャリーと一緒に王宮へ行けることに浮かれていた。エレノアは冷めた眼差しでその様子を見つめたが、デラノは彼女の冷たい視線に気づくこともなく、ただ笑みを浮かべ続けていた。
王家主催の学期末パーティ当日、キャリーはデラノから贈られたルビーの指輪を誇らしげにはめ、その指輪と同じ色合いのドレスに着替えていた。彼女はマリーに手伝わせながら、デラノとの関係を得意げに話し続けていた。
マリーはキャリーの底知れぬ欲深さと、不敬極まりない態度に困惑していた。キャリーの話題は常にエジャートン公爵家のエレノアを嘲笑するものか、デラノとの密会を自慢するものばかりだったからだ。
キャリーがデラノとともに王宮へ向かった後、しばらくしてクロネリー男爵が久々に屋敷へ戻ってきた。男爵はマリーに向かい、深々と頭を下げて謝罪した。
「すまなかった。今までマリーが辛いめにあっていたとは知らなかったよ。キャリーがマリーを虐げていたなんて、思ってもいなかった。キャリーは私の前ではとても素直な良い子を演じていたんだな」
クロネリー男爵の後ろから姿を現したのは、エレノアとベッカムだった。
「マリー様、今まで本当にお辛かったでしょう。私はあなたがキャリー様に使用人のように扱われていた場面を目撃しましたの。ぜひ、王家主催の学期末パーティにご同行いただきたいのです。キャリー様のこれまでの言動、とくに私やデラノ様に関することを証言していただきたくて」
エレノアは変装して屋敷を訪れた際のことを話した。マリーは驚きながらも、エレノアの行動力に尊敬の念を抱いた。そして、目の前に立つのがエジャートン公爵家の令嬢エレノアとノールズ伯爵家のベッカムであると知ると、緊張しながらも深々とカーテシーをして応じた。
「かしこまりました。私でお役に立てることがあれば、何なりとお申し付けください。キャリーお姉様は、私になんでも話していましたから。ただ……酷い暴言も多く、お耳を汚すかもしれませんが」
「大丈夫ですわ。だいたい察しがついています。キャリー様の近くにいたあなたの証言は非常に重要です。それに、この屋敷のメイドや侍女たちも何人か証人として連れて行きたいのですが」
エレノアはクロネリー男爵に協力を依頼しながら話を進めていった。
王宮内の大広間は金と白を基調とした豪華な装飾が施され、広大な舞踏会場がある。貴族の世界では、未来の婚約やビジネスに関する交渉が進むこともある場所。もちろん、ここは数々の婚約破棄宣言もされた場所でもある。
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会場は拍手に包まれたが、次の瞬間、決意に満ちた表情でエレノアがきっぱりと宣言する。
「デラノ様、ここで私はあなたとの婚約を破棄します! デラノ様に毎月渡していた『支援金』も利息をつけて、きっちり返済していただきます!」
エレノアの声は冷たく、一切の迷いがなかった。
「え? 意味がわからないよ。なぜ僕が婚約破棄されるんだい? 婚約は貴族にとって重要な約束ごとだろう? 理由もなく破棄なんて許されないはずだ」
「それがね、エレノアには婚約を破棄する正当な理由があるんだよ。自分の胸に手を当てて考えてみるんだ。全てを話して反省し、エレノアに心から謝罪したほうがいいと思うよ」
ベッカムは諭すようにデラノに言う。
「は? ベッカム様には関係ないことでしょう? それに、僕が反省することなんて何もないさ」
「デラノ様、最後のチャンスをお与えしましたのに、残念ですわ。では、どうぞ、おひとりづつ証言してください」
エレノアが冷然と言い放つと、大広間の扉が大きく開き、まずは宝石店の店主が現れた。
「おや、それはお二人でお求めになったルビーの指輪ですな。実にお似合いです!」
店主は満面の笑みを浮かべ、キャリーに語りかけたのだった。
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