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※ 場面が戻り3の続きになります。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
「親友の未亡人? 愛人じゃないの?」
「そんなわけないじゃないか。ただ昔とても世話になった大親友の未亡人だよ。騙されて大借金を背負ってしまい、娼館に売られそうになっていたから、助けてあげただけだよ」
「もう二度とお金をスティーブに用意させないで。こんなことが続けばお父様にバレてしまうわ」
「本当にごめんね。君の面目を潰すことになるよね?」
「ジャンと結婚するのに無理に我が儘を言ったのよ。こんなことがお父様達にバレたら、『親の言うことを聞かないからだ』と、きっとお説教が始まるわ」
「それなら簡単な方法があるよ。君の予算をわたしに少し貸してくれればいいんだよ。だって、リーズはすでに充分ドレスも化粧品も持っているだろう? 今シーズンは流行のドレスを仕立てないで、昨年のドレスを使い回せば良い」
私は当然のようにそう言われて、両親に相談もせずに頷く。こんなことは、すぐに終わると思っていたから。ところが、ジャンの出費は一向に収まらず、さらには屋敷にいても急にその未亡人に呼び出されることが増えていった。
「夜会は六時からよ? どこに行くの?」
「あ、うん。わたしは欠席するよ。親友の未亡人がすぐに来て欲しいって。体調が悪いらしくて」
「まさか、また私を一人で夜会に行かせるつもり?」
「病で伏している独りぼっちの女性を見捨てろ、と言うのかい? 君がそんなに冷たい性格だったなんて、わたしは悲しいよ」
私は夜会に向かう馬車の中で考える。
(おかしい・・・・・・こんなのは私の望んだ結婚生活じゃなかった)
お母様に相談したいのに、今更なんて言ったら良いのかわからない。惨めだし恥ずかしい。自分より親友の未亡人を大切にする夫なんて、自分が無価値な人間だって言われているみたいで、親にも恥ずかしくて言いづらかったのだ。
「どうしたんだい? 今日もジャンは一緒じゃないのかい? 顔色が悪いよ。待っていて、今、飲み物を取ってきてあげるから」
思いがけず、夜会で声をかけてくれたのはエルガーだった。精悍な顔立ちに誠実な笑みを浮かべるエルガーと、久しぶりに会話をしたら頼りたくなってしまう。私はエルガーを裏切った女なのに・・・・・・だから、わざと不機嫌に拒絶した。
「なんでもないわよ。あっちに行ってよ。私に構わないで放っておいてよっ! どうせいい気味だって思っているくせに」
我慢できなくて涙が一筋流れて、その涙をエルガーが親指でそっと拭う。
「いいかい? わたしは君の夫にはなれなかったけれど、身内のような気持ちでいるんだ。悩みがあるなら相談に乗るし、一人で抱え込まなくていいんだよ」
「じゃぁ、教えてもらえる? 男性にとって親友の未亡人ってどれぐらい大切なの? いくらまで援助するのが妥当なの? 妻と夜会に行くより、その未亡人の体調を見に行くことは普通なの?」
泣きながら私はエルガーに尋ねた。
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「親友の未亡人? 愛人じゃないの?」
「そんなわけないじゃないか。ただ昔とても世話になった大親友の未亡人だよ。騙されて大借金を背負ってしまい、娼館に売られそうになっていたから、助けてあげただけだよ」
「もう二度とお金をスティーブに用意させないで。こんなことが続けばお父様にバレてしまうわ」
「本当にごめんね。君の面目を潰すことになるよね?」
「ジャンと結婚するのに無理に我が儘を言ったのよ。こんなことがお父様達にバレたら、『親の言うことを聞かないからだ』と、きっとお説教が始まるわ」
「それなら簡単な方法があるよ。君の予算をわたしに少し貸してくれればいいんだよ。だって、リーズはすでに充分ドレスも化粧品も持っているだろう? 今シーズンは流行のドレスを仕立てないで、昨年のドレスを使い回せば良い」
私は当然のようにそう言われて、両親に相談もせずに頷く。こんなことは、すぐに終わると思っていたから。ところが、ジャンの出費は一向に収まらず、さらには屋敷にいても急にその未亡人に呼び出されることが増えていった。
「夜会は六時からよ? どこに行くの?」
「あ、うん。わたしは欠席するよ。親友の未亡人がすぐに来て欲しいって。体調が悪いらしくて」
「まさか、また私を一人で夜会に行かせるつもり?」
「病で伏している独りぼっちの女性を見捨てろ、と言うのかい? 君がそんなに冷たい性格だったなんて、わたしは悲しいよ」
私は夜会に向かう馬車の中で考える。
(おかしい・・・・・・こんなのは私の望んだ結婚生活じゃなかった)
お母様に相談したいのに、今更なんて言ったら良いのかわからない。惨めだし恥ずかしい。自分より親友の未亡人を大切にする夫なんて、自分が無価値な人間だって言われているみたいで、親にも恥ずかしくて言いづらかったのだ。
「どうしたんだい? 今日もジャンは一緒じゃないのかい? 顔色が悪いよ。待っていて、今、飲み物を取ってきてあげるから」
思いがけず、夜会で声をかけてくれたのはエルガーだった。精悍な顔立ちに誠実な笑みを浮かべるエルガーと、久しぶりに会話をしたら頼りたくなってしまう。私はエルガーを裏切った女なのに・・・・・・だから、わざと不機嫌に拒絶した。
「なんでもないわよ。あっちに行ってよ。私に構わないで放っておいてよっ! どうせいい気味だって思っているくせに」
我慢できなくて涙が一筋流れて、その涙をエルガーが親指でそっと拭う。
「いいかい? わたしは君の夫にはなれなかったけれど、身内のような気持ちでいるんだ。悩みがあるなら相談に乗るし、一人で抱え込まなくていいんだよ」
「じゃぁ、教えてもらえる? 男性にとって親友の未亡人ってどれぐらい大切なの? いくらまで援助するのが妥当なの? 妻と夜会に行くより、その未亡人の体調を見に行くことは普通なの?」
泣きながら私はエルガーに尋ねた。
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