上 下
13 / 18

13 王太子はなにをやらかしていたのかしら?

しおりを挟む
「王太子殿下、お久しぶりですわね! 王家の血筋のイサベラ様が王太子殿下の横にいらっしゃるのなら我慢もできますが、そのイングリッド様には納得がいきませんわ! 私に『愛している、君だけは一生大事にする』とおっしゃったお言葉をよもやお忘れではないでしょうねぇ?」

「は? そのようなことを言った覚えは・・・・・・あっただろうか・・・・・・しかし、貴族同士はいろいろと色恋沙汰もある程度は許され・・・・・・」
 当然のように誤魔化そうとする王太子殿下に私は吐き気がしてきたわ。

「バカ者! 王太子のお前がいろいろな女と遊び呆けていたら、王家の血筋がみだりに増え王位継承権争いで世が大いに乱れるわい! これが王太子で良いのだろうか」
 国王陛下は困惑気味だ。

「父上。しかも兄上は娼館の女にまで惚れ込み、本来イサベルにプレゼントするべき使途の次期王太子妃品格保持費で商売女に宝石をプレゼントしていたようです」

「うわっ! なぜ、そのようなことを知っている? 汚いぞ。この私を調べあげたのか? 帰国するなり、なんの権利があってそのようなことをする? 我が国は長子相続が基本、次期国王の素行調査など不敬であろう?」

「エンリケは黙れ! レオよ、その証拠はあるのか?」

「はい、宮内庁で保管していた裏帳簿です。今、責任者に持って来させておりますので、少々お待ちください。兄上の命令で秘密の帳簿ができたとか・・・・・・理由は『真実の愛を一人占めしたいから』だそうです。」

「くっそ! 責任者だと! 裏切り者め」
 忌々しくおっしゃる王太子殿下に重なる国王陛下のお言葉は驚きに満ちていた。

「なんだと? 商売女に真実の愛などあるものか!」

「父上! 今の発言はいかがなものかと思われます。よろしいですか? 娼婦だって同じ人間なのですよ。王たる者が職業に貴賎をつけてどうするのです? 彼女達にだって真実の愛を語る資格はあります。だいたいその類いの女性を卑しむのなら、そのような仕事をさせなければよろしいではありませんか? 合法的に許可しておいて差別するのはおかしい!」

「は? わかった、わかった。お前の娼婦に対する熱い思いはよく理解した。やはり、レオが次期王というのが妥当か・・・・・・お前は風俗担当大臣でもなって娼婦の性病問題にでも取り組んでくれよ」

「ぷっぷっ」

「そんな大臣って画期的よね! クスクス」

「風俗担当大臣って国王陛下も皮肉がきいていらっしゃるわね。でも、あの職業がなくならない限りは誰かが衛生面も含めて管理しないとまずいですものねぇ」
 

「名案でございます! この王太子殿下を風俗担当大臣にして、そのイングリッドはあたくしへの侮辱と暴行未遂罪で娼婦落ちにしてくださいませ!」
 ペネロペ女公爵は上機嫌で国王陛下に進言なさった。

「ですね、大叔母様。父上、この魔石の映像を見てください。イングリッドが大叔母様に無礼を働いた様子とプリンシペ公爵が不倫していた告白が鮮明に記録されております」

「!? なんだ、このふざけた映像は? プリンシペ公爵! お前はもう公爵の地位には置いてはおけぬ。イングリッドの母親と通じていたなどと汚らわしい! 息子のジェイコブは王家の血筋ゆえ、平民というわけにもいくまいなぁ。王太子共々とんだ厄介者だ。全くレオがいてくれて良かった。王太子はレオ、王太子妃はイサベラとする! 」

 全ての貴族がレオ様側につき、王太子殿下はガクッと膝から崩れ落ちたのだった。

 そして追い打ちをかけるように、宮内庁の王太子妃品格保持費部署の責任者が駆けつけ裏帳簿を差し出すと国王陛下は顔を真っ赤にして怒鳴った。

「エンリケ! お前は平民落ちだ! 去勢のうえの平民! バカ者が!」

ーーこれほど国王陛下を怒らすなど娼婦を買った以上になにをしていたのかしら?
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄した王子と男爵令嬢のその後……は幸せ?……な訳ない!

たろ
恋愛
「エリザベス、君との婚約を破棄する」 「どうしてそんな事を言うのですか?わたしが何をしたと言うのでしょう」 「君は僕の愛するイライザに対して嫌がらせをしただろう、そんな意地の悪い君のことは愛せないし結婚など出来ない」 「……愛せない……わかりました。殿下……の言葉を……受け入れます」 なんで君がそんな悲しそうな顔をするんだ? この話は婚約破棄をして、父親である陛下に嘘で固めて公爵令嬢のエリザベスを貶めたと怒られて 「そんなにその男爵令嬢が好きなら王族をやめて男爵に婿に行け」と言われ、廃嫡される王子のその後のお話です。 頭脳明晰、眉目秀麗、みんなが振り向くかっこいい殿下……なのにエリザベスの前では残念な男。 ★軽い感じのお話です そして、殿下がひたすら残念です 広ーい気持ちで読んでいただけたらと思います

その言葉はそのまま返されたもの

基本二度寝
恋愛
己の人生は既に決まっている。 親の望む令嬢を伴侶に迎え、子を成し、後継者を育てる。 ただそれだけのつまらぬ人生。 ならば、結婚までは好きに過ごしていいだろう?と、思った。 侯爵子息アリストには幼馴染がいる。 幼馴染が、出産に耐えられるほど身体が丈夫であったならアリストは彼女を伴侶にしたかった。 可愛らしく、淑やかな幼馴染が愛おしい。 それが叶うなら子がなくても、と思うのだが、父はそれを認めない。 父の選んだ伯爵令嬢が婚約者になった。 幼馴染のような愛らしさも、優しさもない。 平凡な容姿。口うるさい貴族令嬢。 うんざりだ。 幼馴染はずっと屋敷の中で育てられた為、外の事を知らない。 彼女のために、華やかな舞踏会を見せたかった。 比較的若い者があつまるような、気楽なものならば、多少の粗相も多目に見てもらえるだろう。 アリストは幼馴染のテイラーに己の色のドレスを贈り夜会に出席した。 まさか、自分のエスコートもなしにアリストの婚約者が参加しているとは露ほどにも思わず…。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

この罰は永遠に

豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」 「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」 「……ふうん」 その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。 なろう様でも公開中です。

眠りから目覚めた王太子は

基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」 ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。 「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」 王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。 しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。 「…?揃いも揃ってどうしたのですか」 王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。 永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。

不貞の末路《完結》

アーエル
恋愛
不思議です 公爵家で婚約者がいる男に侍る女たち 公爵家だったら不貞にならないとお思いですか?

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

処理中です...