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4 カンザス公爵家に戻るヨハンー ヨハンsideー微ざまぁ(暴力シーンあり、コメディー風味?)
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ヨハンside
「喜べ! お前は明日にでも包帯を巻いてボロボロな格好でカンザス公爵家に戻れるぞ!」
慌てて王城から戻ってきたブラック侯爵が地下のヨハンの部屋までやって来て叫んだ。
「え! いきなりどうしたのですか? 3ヶ月は必要だと言っていたでしょう?」
「状況が変わった。英雄が帰還しやがった! ルミネの兄のアーサーだよ! 大変まずいことになりそうだったが、ルミネの腹には子供がいるようだ。喜べ! そのお陰で多分アーサーの怒りも半減する。わしを酷く責めたて金を巻き上げようとしたが、ルミネの子供が産まれたらそんなことも有耶無耶になるだろう!」
「そんなにうまくいきますか? 僕は嫌ですよ……あのアーサーは鬼神や魔王の異名もあるほどの騎士団長ですよ? ルミネを借金まみれにして行方不明になった僕など一瞬で殺されます」
「だが、溺愛する妹の子供の父親はさすがに殺せまい。ルミネはまだお前を愛している様子だった。とにかく急いでお前が戻らないと、こちらに大借金がまわってくるわい。国王陛下は民衆に絶大な人気のあるアーサーを全面支持する構えだ」
ブラック侯爵は唾をとばしまくり、すっかり興奮して大声でまくしたてたのである。
「うるさいな。いったい何事ですか!」
長男のアルビーと次男のダニエルは、小者感満載なびくついた表情で地下へと降りてくる。
アルビーは昼間から娼館に入り浸る悪癖があり、ダニエルは博打が三度の飯より好き。二人ともブラック侯爵の補佐として領地経営に携わっているふりをして実際は遊び呆けているばかりであった。
その二人はアーサーが帰還したことを知るとたちまち顔面蒼白になったが、ルミネの様子を語る父親に明らかにホッとしてヨハンに命じた。
「お前は明日の朝、すぐにカンザス公爵家に戻れ! 包帯でぐるぐる巻きにしたほうがいい」
アルビーがそう言えば、
「いや、待て。アーサーの目は誤魔化せないぞ。怪我のふりをしてもばれてしまう。悪いが俺たちの安全の為だ。ヨハン、少し我慢しろよっ」
と、ダニエルはヨハンに向けて拳を向けた。
ドガッ!!
「ふぎゃぁーー!! 痛い! 痛い!」
ダニエルがヨハンの脇腹を蹴ったのである。
バキッ!!
「うぐっ! 唇が切れたじゃないかぁあああぁーー」
アルビーは、すかさずヨハンの両頬を殴り前歯が二本抜け落ちた。
ドシン!!
仕上げにブラック侯爵が尻でヨハンを突き飛ばし壁に叩きつけ、その体の上に腰掛けるとあばら骨が嫌な音をたて……2折れた折れた感触にヨハンは白目をむいたのである。
「まぁ、このくらいで大丈夫だろう。町なかでチンピラに絡まれたとか、森で魔獣に襲われたとか盗賊にやられたとか適当に言い訳しろよ!」
ブラック侯爵はヨハンにそう言うと地下の部屋を後にした。
「ひ、酷いですぅぅぅーー。父上! 僕を見殺しにするんですかぁ? アーサーがいるところなんて怖くて帰れません」
「これしかないんだよ。とにかく、お前さえ戻ればルミネは『考えてもいい』と言ったのだから……」
アーサーは翌朝カンザス公爵家に戻り、アーサーの目前で借りてきた猫状態。
「大変、申し訳ありません。いきなり暴漢に襲われまして……」
「ほぉ? 傷を見せてくれ。包帯を取り給え。傷口やら殴られた跡などを見たいな」
「は、はい……」
包帯の下からは赤痣、青痣、黄痣やらで色とりどりに染まった肌が現れた。
「これは派手にやられたなぁ。痛かっただろう? 気の毒に……このような理由ならしばらく帰ってこれなかったのも納得だよ。ルミネ、かわいそうなヨハンに軟膏を塗ってあげたほうがいい」
「えぇ、軟膏ですよね! 今、持ってきますわ。消毒薬と一緒に劣化を防ぐのに医療用冷蔵保冷器に入れておいたはずですわ」
ルミネが涙を滲ませて心配気な表情を浮かべ軟膏と消毒薬を持ってくる間、アーサーは何気にヨハンに声をかけた。
「アルビーとダニエルは手や足を痛がっているだろうな?」
「えぇ、多分痛いでしょうね」
反射的にそう答えたヨハンであったが、自分が何を暴露してしまったか全く気づかないのだった。
「さぁ、ヨハン様。体に軟膏を塗りますわね」
「ぎゃぁあああああーー!!」
「まぁ、大げさな! 男性は我慢するものですわ」
「痛い、痛い、痛い!! これ、これは絶対傷口用軟膏じゃないよな?」
傷口が熱い。飛び上がるほどの劇痛に冷や汗がだらだらと落ちる。
「まさか……ここに、ほら傷口用と……あら、どうやらこれはマスタードだったようですわ。侍女がうっかり医療用冷蔵保冷器に間違ってマスタードを保管したようですわ。ほほほほ。ごめんあそばせぇーー」
涙目になったヨハンにルミネは、潤んだ大きな瞳で謝る。ヨハンの返事も待たずにアーサーは「よくあることだ。気にするな! 男は傷口に塩やマスタードぐらい塗られてもなんてことはない。なぁ、そうだろう? ヨハン君!」と言いながらバンバンと肩をたたいた。その力強い振動で折れたあばら骨がいっそう痛み、ヨハンの目から涙がまた滴り落ちたのだった。
「喜べ! お前は明日にでも包帯を巻いてボロボロな格好でカンザス公爵家に戻れるぞ!」
慌てて王城から戻ってきたブラック侯爵が地下のヨハンの部屋までやって来て叫んだ。
「え! いきなりどうしたのですか? 3ヶ月は必要だと言っていたでしょう?」
「状況が変わった。英雄が帰還しやがった! ルミネの兄のアーサーだよ! 大変まずいことになりそうだったが、ルミネの腹には子供がいるようだ。喜べ! そのお陰で多分アーサーの怒りも半減する。わしを酷く責めたて金を巻き上げようとしたが、ルミネの子供が産まれたらそんなことも有耶無耶になるだろう!」
「そんなにうまくいきますか? 僕は嫌ですよ……あのアーサーは鬼神や魔王の異名もあるほどの騎士団長ですよ? ルミネを借金まみれにして行方不明になった僕など一瞬で殺されます」
「だが、溺愛する妹の子供の父親はさすがに殺せまい。ルミネはまだお前を愛している様子だった。とにかく急いでお前が戻らないと、こちらに大借金がまわってくるわい。国王陛下は民衆に絶大な人気のあるアーサーを全面支持する構えだ」
ブラック侯爵は唾をとばしまくり、すっかり興奮して大声でまくしたてたのである。
「うるさいな。いったい何事ですか!」
長男のアルビーと次男のダニエルは、小者感満載なびくついた表情で地下へと降りてくる。
アルビーは昼間から娼館に入り浸る悪癖があり、ダニエルは博打が三度の飯より好き。二人ともブラック侯爵の補佐として領地経営に携わっているふりをして実際は遊び呆けているばかりであった。
その二人はアーサーが帰還したことを知るとたちまち顔面蒼白になったが、ルミネの様子を語る父親に明らかにホッとしてヨハンに命じた。
「お前は明日の朝、すぐにカンザス公爵家に戻れ! 包帯でぐるぐる巻きにしたほうがいい」
アルビーがそう言えば、
「いや、待て。アーサーの目は誤魔化せないぞ。怪我のふりをしてもばれてしまう。悪いが俺たちの安全の為だ。ヨハン、少し我慢しろよっ」
と、ダニエルはヨハンに向けて拳を向けた。
ドガッ!!
「ふぎゃぁーー!! 痛い! 痛い!」
ダニエルがヨハンの脇腹を蹴ったのである。
バキッ!!
「うぐっ! 唇が切れたじゃないかぁあああぁーー」
アルビーは、すかさずヨハンの両頬を殴り前歯が二本抜け落ちた。
ドシン!!
仕上げにブラック侯爵が尻でヨハンを突き飛ばし壁に叩きつけ、その体の上に腰掛けるとあばら骨が嫌な音をたて……2折れた折れた感触にヨハンは白目をむいたのである。
「まぁ、このくらいで大丈夫だろう。町なかでチンピラに絡まれたとか、森で魔獣に襲われたとか盗賊にやられたとか適当に言い訳しろよ!」
ブラック侯爵はヨハンにそう言うと地下の部屋を後にした。
「ひ、酷いですぅぅぅーー。父上! 僕を見殺しにするんですかぁ? アーサーがいるところなんて怖くて帰れません」
「これしかないんだよ。とにかく、お前さえ戻ればルミネは『考えてもいい』と言ったのだから……」
アーサーは翌朝カンザス公爵家に戻り、アーサーの目前で借りてきた猫状態。
「大変、申し訳ありません。いきなり暴漢に襲われまして……」
「ほぉ? 傷を見せてくれ。包帯を取り給え。傷口やら殴られた跡などを見たいな」
「は、はい……」
包帯の下からは赤痣、青痣、黄痣やらで色とりどりに染まった肌が現れた。
「これは派手にやられたなぁ。痛かっただろう? 気の毒に……このような理由ならしばらく帰ってこれなかったのも納得だよ。ルミネ、かわいそうなヨハンに軟膏を塗ってあげたほうがいい」
「えぇ、軟膏ですよね! 今、持ってきますわ。消毒薬と一緒に劣化を防ぐのに医療用冷蔵保冷器に入れておいたはずですわ」
ルミネが涙を滲ませて心配気な表情を浮かべ軟膏と消毒薬を持ってくる間、アーサーは何気にヨハンに声をかけた。
「アルビーとダニエルは手や足を痛がっているだろうな?」
「えぇ、多分痛いでしょうね」
反射的にそう答えたヨハンであったが、自分が何を暴露してしまったか全く気づかないのだった。
「さぁ、ヨハン様。体に軟膏を塗りますわね」
「ぎゃぁあああああーー!!」
「まぁ、大げさな! 男性は我慢するものですわ」
「痛い、痛い、痛い!! これ、これは絶対傷口用軟膏じゃないよな?」
傷口が熱い。飛び上がるほどの劇痛に冷や汗がだらだらと落ちる。
「まさか……ここに、ほら傷口用と……あら、どうやらこれはマスタードだったようですわ。侍女がうっかり医療用冷蔵保冷器に間違ってマスタードを保管したようですわ。ほほほほ。ごめんあそばせぇーー」
涙目になったヨハンにルミネは、潤んだ大きな瞳で謝る。ヨハンの返事も待たずにアーサーは「よくあることだ。気にするな! 男は傷口に塩やマスタードぐらい塗られてもなんてことはない。なぁ、そうだろう? ヨハン君!」と言いながらバンバンと肩をたたいた。その力強い振動で折れたあばら骨がいっそう痛み、ヨハンの目から涙がまた滴り落ちたのだった。
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