2 / 6
1
しおりを挟む
私とジェイミー・エト伯爵とは政略結婚ではなく恋愛結婚だった。私がジェイミーの優しさを好きになって両親に頼み込んだ結果だ。結婚前にはたくさんの相談に乗ってくれ最高に優しかったのよ。
今も侍女のケイの相談に乗ってあげているわ。内容は同僚とうまくいっていないなどの人間関係の悩みのようだ。私のいるサロンの窓は、外の爽やかな空気を取り込むために明け放れていたから、庭園で相談に乗っている話が手に取るように聞こえたの。これは午前中のことよ。
午後になると、今度はメイドのリジーが自分の夫の浮気に関する悩みを私の夫に相談している。夕方は侍女カシアの実家の母親の相談で、夜には女御者の相談にも乗っていた。内容は夫の無駄遣いみたい。
「ねぇ、ジェイミー。私も娘のナーディアのことで相談があるのよ。ナーディアの・・・・・・」
私が話し始めると夫はそれを遮るように、手をヒラヒラと私の目の前で振ってみせる。
「ナーディアにはナニーがいるだろう? だからわたしの助けはいらないはずだよ。ナニーは専門家だし、子育て経験のあるメイドや侍女もいるのだから皆に相談しておくれよ」
「でも、ナーディアは私達の娘ですわよ?」
「もちろん、わかっているよ。でも男親のわたしに娘のことを相談されても、正直良いアドヴァイスは思い浮かばないよ。これから執務室で少し仕事をするから邪魔をしないでくれよ」
夫はそう言いながら執務室にスタスタと歩いて行き、私の目の前で扉を閉めた。
ある日、私の友人クダリネ・ララ子爵令嬢がエト伯爵家に遊びに来たわ。彼女は顔も声も可愛くて、男性にはもてるタイプだったけれど未だに独身だった。
「私、全然モテなくてぇーー男性に縁がないのですわ。ですから、まだ結婚もできないんですよ。困っていますの。誰か良い方を紹介してくださいませんか?」
ジェイミーはそのクダリネの相談をとても真面目に聞いていたわ。
「クダリネ嬢が可愛すぎるから、男性もかえって敬遠するのかもしれないですね。もう少し地味にしてみたらどうかな?」
とジェイミー。
「うふ。だったらライラを真似したらいいかしら? 前から地味だったけれど、子供を産んでからますます地味になったわね? 伯爵夫人のくせにあまりにも着飾らなくてまるで平民のようですわ」
そのクダリネの言葉に一緒になって笑う夫。クダリネがしばらく滞在したいとねだると、夫はあっさりと快諾した。
その後、使用人の相談に乗ることはなくなったけれど、クダリネの相談には毎日何時間でも乗るようになったわ。毎日、毎日、なぜそんなにも悩み事が出てくるのか不思議すぎて・・・・・・私には全く理解不能なのだった。
今も侍女のケイの相談に乗ってあげているわ。内容は同僚とうまくいっていないなどの人間関係の悩みのようだ。私のいるサロンの窓は、外の爽やかな空気を取り込むために明け放れていたから、庭園で相談に乗っている話が手に取るように聞こえたの。これは午前中のことよ。
午後になると、今度はメイドのリジーが自分の夫の浮気に関する悩みを私の夫に相談している。夕方は侍女カシアの実家の母親の相談で、夜には女御者の相談にも乗っていた。内容は夫の無駄遣いみたい。
「ねぇ、ジェイミー。私も娘のナーディアのことで相談があるのよ。ナーディアの・・・・・・」
私が話し始めると夫はそれを遮るように、手をヒラヒラと私の目の前で振ってみせる。
「ナーディアにはナニーがいるだろう? だからわたしの助けはいらないはずだよ。ナニーは専門家だし、子育て経験のあるメイドや侍女もいるのだから皆に相談しておくれよ」
「でも、ナーディアは私達の娘ですわよ?」
「もちろん、わかっているよ。でも男親のわたしに娘のことを相談されても、正直良いアドヴァイスは思い浮かばないよ。これから執務室で少し仕事をするから邪魔をしないでくれよ」
夫はそう言いながら執務室にスタスタと歩いて行き、私の目の前で扉を閉めた。
ある日、私の友人クダリネ・ララ子爵令嬢がエト伯爵家に遊びに来たわ。彼女は顔も声も可愛くて、男性にはもてるタイプだったけれど未だに独身だった。
「私、全然モテなくてぇーー男性に縁がないのですわ。ですから、まだ結婚もできないんですよ。困っていますの。誰か良い方を紹介してくださいませんか?」
ジェイミーはそのクダリネの相談をとても真面目に聞いていたわ。
「クダリネ嬢が可愛すぎるから、男性もかえって敬遠するのかもしれないですね。もう少し地味にしてみたらどうかな?」
とジェイミー。
「うふ。だったらライラを真似したらいいかしら? 前から地味だったけれど、子供を産んでからますます地味になったわね? 伯爵夫人のくせにあまりにも着飾らなくてまるで平民のようですわ」
そのクダリネの言葉に一緒になって笑う夫。クダリネがしばらく滞在したいとねだると、夫はあっさりと快諾した。
その後、使用人の相談に乗ることはなくなったけれど、クダリネの相談には毎日何時間でも乗るようになったわ。毎日、毎日、なぜそんなにも悩み事が出てくるのか不思議すぎて・・・・・・私には全く理解不能なのだった。
204
お気に入りに追加
1,437
あなたにおすすめの小説


殿下が望まれた婚約破棄を受け入れたというのに、どうしてそのように驚かれるのですか?
Mayoi
恋愛
公爵令嬢フィオナは婚約者のダレイオス王子から手紙で呼び出された。
指定された場所で待っていたのは交友のあるノーマンだった。
どうして二人が同じタイミングで同じ場所に呼び出されたのか、すぐに明らかになった。
「こんなところで密会していたとはな!」
ダレイオス王子の登場により断罪が始まった。
しかし、穴だらけの追及はノーマンの反論を許し、逆に追い詰められたのはダレイオス王子のほうだった。

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。
Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。
二人から見下される正妃クローディア。
正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。
国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。
クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……
小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。
この作品は『小説家になろう』でも公開中です。

婚約者に親しい幼なじみがいるので、私は身を引かせてもらいます
Hibah
恋愛
クレアは同級生のオーウェンと家の都合で婚約した。オーウェンには幼なじみのイブリンがいて、学園ではいつも一緒にいる。イブリンがクレアに言う「わたしとオーウェンはラブラブなの。クレアのこと恨んでる。謝るくらいなら婚約を破棄してよ」クレアは二人のために身を引こうとするが……?

離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。
Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。
ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。
なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。
しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。
だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

【完結】私から奪っていく妹にさよならを
横居花琉
恋愛
妹のメラニーに物を奪われたジャスミン。
両親はメラニーを可愛がり、ジャスミンに我慢するように言った。
やがて婚約者ができたジャスミンだったが、メラニーは婚約者も奪った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる