(完結)あなたの愛は諦めました (全5話)

青空一夏

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 私とジェイミー・エト伯爵とは政略結婚ではなく恋愛結婚だった。私がジェイミーの優しさを好きになって両親に頼み込んだ結果だ。結婚前にはたくさんの相談に乗ってくれ最高に優しかったのよ。

 今も侍女のケイの相談に乗ってあげているわ。内容は同僚とうまくいっていないなどの人間関係の悩みのようだ。私のいるサロンの窓は、外の爽やかな空気を取り込むために明け放れていたから、庭園で相談に乗っている話が手に取るように聞こえたの。これは午前中のことよ。

 午後になると、今度はメイドのリジーが自分の夫の浮気に関する悩みを私の夫に相談している。夕方は侍女カシアの実家の母親の相談で、夜には女御者の相談にも乗っていた。内容は夫の無駄遣いみたい。

 

 
「ねぇ、ジェイミー。私も娘のナーディアのことで相談があるのよ。ナーディアの・・・・・・」

 私が話し始めると夫はそれを遮るように、手をヒラヒラと私の目の前で振ってみせる。

「ナーディアにはナニーがいるだろう? だからわたしの助けはいらないはずだよ。ナニーは専門家だし、子育て経験のあるメイドや侍女もいるのだから皆に相談しておくれよ」

「でも、ナーディアは私達の娘ですわよ?」

「もちろん、わかっているよ。でも男親のわたしに娘のことを相談されても、正直良いアドヴァイスは思い浮かばないよ。これから執務室で少し仕事をするから邪魔をしないでくれよ」

 夫はそう言いながら執務室にスタスタと歩いて行き、私の目の前で扉を閉めた。










 ある日、私の友人クダリネ・ララ子爵令嬢がエト伯爵家に遊びに来たわ。彼女は顔も声も可愛くて、男性にはもてるタイプだったけれど未だに独身だった。


「私、全然モテなくてぇーー男性に縁がないのですわ。ですから、まだ結婚もできないんですよ。困っていますの。誰か良い方を紹介してくださいませんか?」

 ジェイミーはそのクダリネの相談をとても真面目に聞いていたわ。

「クダリネ嬢が可愛すぎるから、男性もかえって敬遠するのかもしれないですね。もう少し地味にしてみたらどうかな?」
 とジェイミー。

「うふ。だったらライラを真似したらいいかしら? 前から地味だったけれど、子供を産んでからますます地味になったわね? 伯爵夫人のくせにあまりにも着飾らなくてまるで平民のようですわ」

 そのクダリネの言葉に一緒になって笑う夫。クダリネがしばらく滞在したいとねだると、夫はあっさりと快諾した。

 その後、使用人の相談に乗ることはなくなったけれど、クダリネの相談には毎日何時間でも乗るようになったわ。毎日、毎日、なぜそんなにも悩み事が出てくるのか不思議すぎて・・・・・・私には全く理解不能なのだった。
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