(完)友人の恋人が婚約者になりましたー悪女にされた私

青空一夏

文字の大きさ
上 下
1 / 8

1 友人の彼が婚約者に

しおりを挟む
 私はセント・アダム学園の3年生になったばかりです。ここは貴族の子女が通う学園で、私とクララ・アイヤナ準男爵令嬢はとても仲のよい友人でした。

「また、イレーヌ・オズボルト侯爵令嬢とクララ・アイヤナ準男爵令嬢が一緒にいらっしゃるわ。ずいぶん、身分違いの友情だわね?」

「確かにねぇーー。それだけ、イレーヌ様がお優しいのね。あの方は掃除婦のおばさんにまで挨拶なさる、気さくな方ですものね」

「うん、イレーヌ様はとても気品があってお優しいわ。でも、やはり侯爵令嬢と準男爵令嬢では身分が違い過ぎですわ。準男爵令嬢なんて平民と変わらないではありませんか?」

 学園の皆様のヒソヒソ話が聞こえてきますが、私は話が合えば友人になるのに身分は関係ないと思っています。

 ふわふわしたピンクの髪に綺麗な空色の瞳のクララ様は、カーティス男爵家の次男オリオン様と付き合っていました。

 この二人はクラスでも公認の仲で、登下校は必ず一緒です。オリオン様はブラウンの髪と瞳の綺麗なお顔だちで、お二人はお似合いでした。

 隣のクラスのオリオン様はたびたび私のクラスまで、クララ様に会いに来ますので、お二人はきっと婚約なさるのだろうと誰もが思っておりました。

「クララ様とオリオン様はいつ婚約なさるの?」

 私がお二人にお聞きすると、

「そうね、すぐにでも婚約したいと思っているのよ。ね? オリオン様?」

「うん、そうだね」

 お二人は微笑みながら私に答えるのでした。私はもちろんこのお二人を応援しておりました。ところが・・・・・・




☆彡★彡☆彡


 
 
「イレーヌの婚約相手はオリオン・カーティス男爵令息に決まったよ」

 学園でのあの会話の三日後のことでした。嬉しそうに微笑みながら、お父様はおっしゃったのでした。

「お父様! オリオン様には付き合っていらっしゃるクララ・アイヤナ準男爵令嬢がいますけれど・・・・・・」

「いや、そんなことは関係ない。これは家と家の問題だからな! 明日にはあちらと顔合わせがあるからな」

 お父様は一方的におっしゃって執務室に消えていきますし、お母様は全く私の言うことを聞いてはくれません。

「オズボルト侯爵家はお金に困っているのよ! 貴女が嫁ぐことで解決するわ。貴族の娘は家のために嫁ぐのは当たり前です。相手に恋人がいようと関係ありません。貴族に妻の他に愛人がいるのは珍しいことではありません」

 お母様は冷たく当然のようにおっしゃったのでした。




 
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

誰も残らなかった物語

悠十
恋愛
 アリシアはこの国の王太子の婚約者である。  しかし、彼との間には愛は無く、将来この国を共に治める同士であった。  そんなある日、王太子は愛する人を見付けた。  アリシアはそれを支援するために奔走するが、上手くいかず、とうとう冤罪を掛けられた。 「嗚呼、可哀そうに……」  彼女の最後の呟きは、誰に向けてのものだったのか。  その呟きは、誰に聞かれる事も無く、断頭台の露へと消えた。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?

よどら文鳥
恋愛
 デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。  予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。 「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」 「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」  シェリルは何も事情を聞かされていなかった。 「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」  どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。 「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」 「はーい」  同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。  シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。  だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。

愛を語れない関係【完結】

迷い人
恋愛
 婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。  そして、時が戻った。  だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

処理中です...